前回は天候別、海中の変化をとらえ、アプローチ方法や釣り方について解説しました。さて今回は、「風の有無による釣り方」の違いについて解説していきます。

自然の中で遊ぶ釣りに「風」はつきものです。風がない方が釣りをしやすいため、無風であるに越したことはないですが、なかなかそんな日は現実にありません…。もちろん風が強すぎると、釣りはおろか人命にかかわることもあるので、そもそも釣りをすることができない場合もあります。
そんな風の有無を意識し、風が「ある日」「ない日」に応じて釣り分けることができれば、より釣果アップにつながるかもしれません。

1.エギングに風は大敵!
風が「ある」場合の釣り方


出典:写真AC

風が強い日は、かんたんに言うと釣りには不向きです。
まず風の強さにもよりますが、風が強すぎると海辺に立つことすら難しい状況があります。あくまで人命優先、安全第一ですので、そのような状況で釣りをするのは避けましょう!!

そして、釣りはできるけど風が強い…という場合。陸上で風が強ければ、当然、海上も同様です。遮蔽物のない海上では水面を風が吹き抜けるので、PEラインを使用するエギングは釣りがかなり難しくなります。魚を釣るときのように竿先でアタリを取る釣りではなく、ラインの変化でアタリを取るエギングにおいて風のある日はひじょうに難しいのです。



エギングで多く使用されているPEラインは比重が軽く、水中に沈みにくい糸(ライン)です。そのため、風が強い状況で使用すると、キャスト後になかなか海面へラインが着水しなかったり、着水したあとも水面で風に引っ張られ、エギが海中へスムーズに沈んでくれません…。
これらのことから、風の強い日はエギングに不向きといえます。

 

(1)風向きによっては何とかなる…かも?

しかし、風の強さによっては釣りができる場合があります。その場合はまず、風向きを調べましょう。



向かい風は…基本 ×
風向きが自分の釣りをする方向(≒キャストしたい方向)に対して正面から吹いている場合は、エギをキャストしても距離が出ずに、ねらうポイントまで届きません。向かい風が強ければ、ほぼ釣りにならないでしょう。
ただし、強風ではなく、ねらいのポイントが足下や至近距離であれば釣りは可能かもしれません。エギが押されて手前に手前に戻ってきてしまいますが、ラインが横に引っ張られないので、比較的エギの姿勢は安定します。



横風は △
横風(釣りをする方向に対して左右からの風)の場合は、真っすぐにキャストすることができずキャストしたエギが風に流されてしまいます。着水後も(潮の向きにもよりますが)さらに風に押され風下方向に流されやすく、気が付けば岸のラインと平行、真横方向にエギが流れていることも…。
しかし、その風向きや強さによっては遠くへエギを運ぶことができたり、エギを通してくるコースにバリエーションを持たせることも可能です。あえて風上側にキャストする、あえて風と直角にキャストするなど、(糸フケの処理やラインテンションでのエギ姿勢のコントロールが必要ですが)戦略的に利用しやすい風です。

追い風は ○
風の向きでいえば、追い風(釣りをする方向に対して後ろからの風)が条件としては一番よいでしょう。かんたんに言えば、風を味方につけることができます!
エギの重さは3.5号で約20g程度ですが、無風状態でキャストするよりは当然飛距離が出ます。普段探ることのできない場所にエギを送り込むことができれば、それだけイカと出会う可能性も上がるのです。陸っぱりの釣りにおいて「飛距離は最大の武器」だと感じる私にとって、誰もキャストしたことのない場所へエギを送り込むことができたときのワクワク、ドキドキ感はたまりません。



(2)風が吹いたら釣り方にひと工夫
風向きや強さを意識しよう!

風が吹いていれば、通常のエギでは飛距離が出ない、操作しづらい、沈まないなどといった問題が発生します。そういったときは、エギにシンカーを付けてウェイトを重くしたり、ディープタイプのエギを選択するなどの工夫を凝らすことで、風に対応することもできます。
また、同じ釣り場内でも釣りをする向きや場所を変えることで、風を味方にできる場合があります。常に風向きを意識し、周囲の状況に気を配るクセを身につけるようにしましょう。



 

テクニック① 横風の場合…
横風が吹いている状況での釣り方の例として、まずは風上に(右から吹いている場合は右方向へ)キャストします。

※キャスト前に風上側に人がいないことを確認しましょう

キャストしたら竿先を海面近くに下げ、空中にたるんでいる糸フケを巻き取ります。この動作と同時に、キャストした場所と立ち位置が直線になる位置へと移動します。

※左右に人がいないことが前提です

移動せずに斜めに釣りをすることも可能ですが、シャクったあとの糸フケ回収が難しかったり、エギのアクションも横を向きやすかったりと安定しないので、できる限りよいポジションに移動するのがオススメです。
余分な糸フケを取ったらリールのベールを起こしてスプールに指を当てながら、沈んだ分のラインを少しずつ送り込んでいくイメージでフォールさせ、底取りをしましょう。

底取りのあとエギをシャクったら、竿先を海面近くに下げ糸フケを回収し、ラインテンションを張るようにしてください。フォール時に竿先でさびく方法もアタリが分かりやすいので、風が強い日には効果的です!!



 

テクニック② 追い風の場合…
追い風の場合は、できるだけ風を真後ろから受けられる場所を選びキャストしましょう。
飛距離が出る反面、キャスト後は後方からの風でラインが前方に煽られ(=舞い上がって)着水しにくいので、竿先を海面近くに下げ糸フケを素早く巻き取ってください。竿先からエギまでのラインを一直線に張ったのちフォールさせると、そのあとの操作がやりやすくなります。



 

テクニック③ 風が吹くとイカは…
一方、風向きとは関係がありませんが、風が強く吹き始めると水面近くは波立つことが多く、イカは底付近に集まることが多いように感じます。
水深が浅い場所(浅瀬)は底付近をテンポよく手早く探り、少し探ってみて反応がなければ違う場所へ移動するのがよいかもしれません。また、経験則ではありますが、風が強く吹くにつれてイカは浅瀬から水深が深い場所に移動する個体が多いように感じます。ですので、水深が深い場所(深場)では中層から底付近を中心に探るのがよいでしょう。



このように、風が吹いたら徐々に深場をねらうように釣りのポイントをシフトするわけですが、横風が強い場合、水面でラインが引っ張られ過ぎると、底方向へエギを送り込むことが難しくなります。エギ用の後付けシンカー(オモリ)を装着したりディープタイプのエギを使用するなど、風に負けない対策が必要です。また、アクションもスローテンポで行い、できるだけラインを水面へ浮かさないように意識しましょう。

(広告の後にも続きます)

2.風が弱い日はエギングに最適!
風が「ない」場合の釣り方



風の弱い日や無風の日は、釣りに適した最高の日といえます。
エギングはPEラインを使用した釣りのため、先述のように風の強い日はラインが引っ張られ、思うように釣りができません。風がないことによって、「キャスト → フォール → シャクリ」といった一連の動作が綺麗に成立します。この3つの要素の1つでも欠けるとエギングでは釣りが難しくなるので、戦術を考えなくてはなりません。

また、風がない日のメリットとして、水中の様子がよく見えることが挙げられます。
障害物や藻の位置、水深を目で確認することができるので、必然的に探る場所を絞りやすくなるのです。水中のイカの姿を目視しながら釣る「サイトフィッシング」にも適しています。



 

(1)海況や周囲の状況確認を忘れずに

しかしながら、風がない(弱い)ときはいいことばかりではなく、デメリットもあります。



釣り人の数が多い…
風がない日は釣り人にとって絶好の釣り日和。各釣り場には多くの釣り人が訪れます。釣り人が多く訪れるポイントは、人気釣場(有名ポイント)であることは間違いありませんが、逆に言うと高い釣りレベルを求められる場所でもあります。
イカはエギを見る回数が多くスレていることが考えられるうえ、釣り人が周囲に多いことで、釣り方やポイントに制限を強いられます。なので、釣り人が少ない場所を選ぶことも選択肢のひとつです。



イカの警戒心が上がる…
風が弱いと、水中の様子を確認できるほど穏やかなときがありますが、イカの警戒心は上がります。
陸上から水中がよく見えているということは、水中からもこちらが見えているわけです。不用意に海面をのぞき込んだり海辺に立てば、イカは警戒して離れて行ってしまったり、エギに反応してくれなくなります。注意しましょう。



潮の動きが分かりづらい…
また、あまりにも風がなく水面が鏡のような状況では、潮の動きが分かりづらくなります。
潮が動いている場所や潮と潮がぶつかった場所(潮目)は、少しでも風が吹き、水面の波の立ち方が異なっている方が発見しやすいものです。
風がやや吹いている状況において、水面がザワザワしている場所は潮の流れが緩い、または動いていない場所です。潮の流れ、動きのある場所は水面が少しツルツルしていることが多く、風が少しでも吹いていれば見分けがつきやすいでしょう。

(2)足下から満遍なく!
丁寧な釣りを心がけよう

釣り日和で釣り人が多いと思われる日は、スマートフォンのアプリを活用し、その日の風の予報や潮位確認をしておくことでねらったポイントをあらかじめ調べておくのも効果的です。
早朝から(夜明けとともに)釣りを開始すれば、人気の釣り場でも人が少ないはずですし、自分だけのポイント、自分だけのタイミングでスムーズに釣行できるかもしれません。

また、風が強いときにはPEラインが風に煽られて難しかった足場の高いポイントも、風が弱いときにはねらえるポイントです。普段見逃していたポイントも入念に探りましょう!!
とはいえ、風が弱い日は先述した通りイカの警戒心が上がるのも事実。とくに透明度が高く水深の浅いポイントでは警戒心の強い個体が多いので、入念にとはいえ、やみくもに水面近くに近づいて覗き込んでみたり、大きな声で騒いだりしないようにしましょう。イカは意外に足下にも潜んでいることが多いのです。



 

テクニック① フリーフォールの釣り
風がない(弱い)場合は風でラインが引っ張られることもないのですが、キャスト後は風の強い場合と同じく、竿先をできるだけ海面近くに下げましょう。
PEラインは伸びが少ないため、竿を立てているとラインが引っ張られエギが手前方向にフォールしやすくなります。そうなると、ねらったポイントよりも手前を探ることになり兼ねません。陸っぱりにおいて大事な飛距離を無駄にしないように、竿先を下げ、できるだけねらったポイントの周辺を丁寧に探るようにしてください。



竿先を下げてラインテンションを張らない「フリーフォールの釣り」の場合、着底までカウントを取り、まずは水深を把握しましょう。とくに1投目はしっかりとカウントを取ることを意識します。2投目以降はカウントの数を減らし、底よりやや上のタナをねらうなどすれば、カウントの数に応じてイカのいるタナを探ることができるうえ、中層を釣るので根掛かりのリスクも減らせます。



また、フリーフォールの釣りではラインの動きにも注意してください。イカがエギに触れたり抱き着くと、ラインが止まったり、水中に引っ張られます。ラインに変化や違和感があれば、間違っていても構わないのでアワセを入れてみましょう。エギングにおいては、些細な違和感を感じ取れるかどうかが釣果アップの秘訣です。

 

テクニック② カーブフォールの釣り
一方、先ほどとは矛盾していますが、あえて竿を立てる釣り方もあります。竿を立てることでエギのフォール姿勢を水平にし、手前方向にゆっくりと沈める釣り方「カーブフォールの釣り」です。新子が多い秋イカの時期や、水深の浅いポイントで効果を発揮する釣り方です。
カーブフォールの釣りでは、ラインテンションをやや張るのでエギの重みを竿先に感じやすいのが特徴。エギの着底も竿先で取りやすくなります。同様に、イカのアタリも竿先に感じやすいので、「フリーフォールの釣り」では逃していたアタリもキャッチできるテクニックなのです。



 

風のない日はラインコントロールがしやすく、目で見てアタリを取りやすい好条件の日です。先述した2つの釣り方を使い分けることで、水深の浅いエリアから深いエリアまで対応しやすいでしょう。

今回の重要ワンポイント

●風の強さや風向きを意識しよう!●風が強くとも、風向きによっては釣り方を工夫すればどうにかなる●風が弱いときは釣り日和…ただしデメリットもある●風が弱いときは足下から丁寧に探ろう●フリーフォールとカーブフォールを使い分ける

 



12回目の今回は、釣り方、シチュエーション別(風の有無による釣り方)のアオリイカの釣り方について解説しました。
風の強さや向きによって釣り方や場所(立ち位置)を工夫すれば、風が強くともイカに出会える可能性はあります。また、風がない(弱い)好条件だからといって、必ずしも釣りをしやすいわけではありません。釣行前に事前に天候や風を確認しておけば、よりよい釣り場を選択できたり、時間のロスをなくすことができまので、上手く風を味方につけてくださいね。

次回も「シチュエーション別釣り方」についてお届け予定。ぜひ引き続き、「今から知りたい!エギング STEP UP」にお付き合いください!