デカすぎ! 海自向け「イージス・システム搭載艦」実現するか 戦艦&空母並みの大きさナゼ必要?

弾道ミサイルの脅威から日本を守るための切り札として調達が検討されている「イージス・システム搭載艦」。その概要について防衛省にハナシを聞きました。稼働率向上や荒天時でも影響を受けにくい耐洋性、拡張性などを鑑みた性能とは?

1隻当たりの建造コストは2500億円以上

 地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替案として導入が決まった「イージス・システム搭載艦」。その建造に向けた検討が進むにつれ、現在、海上自衛隊が保有する既存の艦艇とは一線を画したスペックを持つことが明らかになりました。

 防衛省に取材したところ、「イージス・システム搭載艦」の船体寸法は全長約210m以下、全幅約40m以下で、基準排水量は約2万トンと、戦闘艦としては極めて大型のサイズになる見込みです。なお、船型は通常の艦艇と同じ単胴船型です。

 船体にはロッキード・マーチンが開発した「SPY-7」レーダーを搭載。弾道弾迎撃ミサイル「SM-3ブロックIIA」に加え、対空ミサイル「SM-6」や「12式地対艦誘導弾能力向上型」などを装備するといいます。

 導入コストについては2隻で約4800億~5000億円以上(1隻当たり2400億~2500億円以上)との試算が2020年に出されていますが、最終的にどのくらいの規模になるかは不明です。

 防衛省は2027年度末に1隻目を、2028年度末に2隻目を就役させることを目標としているそうで、2023年度に設計作業と構成品などの取得に着手し、2024年度には船体の建造を始めることを検討しています。

 では、この「イージス・システム搭載艦」、従来の対空ミサイル護衛艦、いわゆるイージス艦とは何が違うのでしょうか。

 防衛省によると、こんごう型やあたご型といった従来のミサイル護衛艦(イージス艦)は、「艦隊防空、平素の警戒監視、海上交通の安全確保、BMD(弾道ミサイル防衛)などのさまざまな任務を担う」艦艇と位置付けているそう。そのため日本のミサイル防衛能力の強化を図るために整備し、基本的には洋上で長期にわたってBMD任務に就くことになる「イージス・システム搭載艦」は、従来のイージス艦とは異なる役割を持つ艦艇となるとのことです。

(広告の後にも続きます)

世界最大の駆逐艦ズムウォルト級をしのぐ大きさに

 計画されている「イージス・システム搭載艦」の基準排水量2万トンという船体規模は、海上自衛隊の艦艇で比較した場合、イージス艦の「まや」型護衛艦(基準排水量8200トン)より遥かに大きく、ステルス戦闘機「F-35B」の搭載能力を持つ「いずも」型護衛艦(基準排水量1万9950トン)と同等サイズになります。

 海外に目を向けても、これほどの大きさの戦闘艦艇は少なく、中国海軍の055級駆逐艦(基準排水量1万1000トン)やアメリカ海軍のズムウォルト級駆逐艦(満載排水量1万5995トン)を凌ぎ、ロシア海軍のキーロフ級原子力巡洋艦(基準排水量2万4300トン)に次ぐ規模となります。

「イージス・システム搭載艦」の建造が実現すれば、西側で最大の水上戦闘艦が日本で生まれることになるでしょう。

 船体が大型化した背景として防衛省は、「多様なミサイルの脅威に対し常時持続的に対応するため、稼働率の向上をはじめ、荒天時の気象・海象でも影響を受けにくい耐洋性、艦艇乗組員の居住環境などの改善、将来装備品を搭載できる拡張性などの要素を総合的に考慮した結果」と説明しています。

 船体寸法は全長の約210mに対して、全幅が約40mとされているため、ずんぐりとした印象を受けます。国内における同規模の船舶を見た場合、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する地球深部観測船「ちきゅう」(5万6752国際総トン)が上げられるでしょう。同船の大きさは全長210m、幅38mのため、近似しているといえます。