3連休襲う台風「かつてないほど危険」 国が警戒するこれだけの理由 トラック横転の可能性 車も避難を

3連休中に日本列島を縦断しそうな台風14号に、国が最大級の警戒を呼び掛けています。その規模は、本州においては統計史上類を見ないというもの。「晴れているから大丈夫」「台風すぎたから大丈夫」といった考えも禁物だといいます。

特別警報の基準上回る“猛烈な台風”

 気象庁は2022年9月17日(土)、国土交通省と合同の会見を開催。3連休を襲う台風14号は18日明け方から夜にかけて九州に上陸、21日にかけて本州を縦断する可能性が強まったとして、「経験したことのないような暴風、高波、高潮、記録的な大雨のおそれ」と警告しました。政府は岸田首相の指示で早急な「避難」を働き掛ける対策本部を設置しました。

 気象庁によると、台風14号は18日明け方に鹿児島県で暴風域に入り始め、同日夜にかけて接近、上陸する見込みです。中心気圧910hPa、最大風速55m/s、最大瞬間風速75m/sという猛烈な勢力です。

「この風速55m/sの風というのは、台風統計を取り始めてからという範囲で見ても、本州では類似する台風はない、というほど危険。最大級の警戒をお願いしたい」(気象庁 大気海洋部・黒良龍太予報部長)

 警報の発表基準をはるかに超える気象状況が予想され、災害級の警戒が必要な場合にはさらに一段警戒が必要な「特別警報」が発表されます。その基準の1つが中心気圧930hPa、風速50m/sですが、台風14号はそれを軽く超える猛烈な台風です。

九州上陸後の19日朝9時頃には、九州北部で中心気圧930hPa、最大風速45m/sと、やや勢力を下げると見込まれます(17日9時発表)。それでも非常に強い台風です。

 今後、大きく進路が変わらない限り、18日九州北部・南部地方では最大風速50m/s、最大瞬間風速70m/sを予想します。19日でも九州北部では40~50m/sと非常に強い風が予想され、さらに近畿、東海、関東への影響を強めます。

トラック横転の暴風を超える

 暴風は陸上輸送に大きな影響を与えそうです。走行中のトラックは平均風速30~35m/sで横転するとされます。感覚的には約140km/hに相当し、およその瞬間風速では50m/s。建物の外装材がはがれ、飛ばされる状況です。

 2019年9月9日に千葉県へ上陸した房総半島台風は最大風速(※最も強い風の平均値)35.9m/s、最大瞬間風速57.5m/sを観測しました。このときは住家全壊391棟、半壊4204棟、鉄塔2基、電柱1996本の倒壊などの被害が発生しています。

「2018年9月の台風21号が四国、近畿に上陸しましたが、大阪では住居の屋根がはがれたり、クルマの横転や、大型タンカーの関空連絡橋への衝突などが起きたりしています。あれより強いクラスの台風が九州に接近することになります。影響は広範囲、長期間にわたると考えます。備えが必要です」(黒良予報部長)

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連休中のレジャー、晴れている場所でも注意

 台風14号の影響は九州だけに限定されるものではなく、北日本、東日本、西日本でも21日にかけて警戒が必要です。

「暴風が吹き始めると避難ができなくなります。今回のような台風では逃げられないことも考えられます。暴風が吹き始める時間をチェックし、避難をいつまでに完了させなければならないか確認していただきたい」(黒良予報部長)

 運行の中止や、安全な場所への車両の避難を考える必要があります。

 国土交通省水管理・国土保全局も台風による警戒を呼び掛けています。特に台風接近前の注意です。

「洪水を受け止めるためのダム容量を増やすため、ダムの水位を下げる事前放流を行う場合があります。雨が降っていないのに、河川の水位が上昇したり、流量が増加する場合があります」(豊口佳之河川環境課長)

 9月17日朝8時時点での事前放流は、九州、四国、関西地方を中心とした61ダムと広範囲に及んでいます。台風の北上と共に実施ダムも増える可能性があります。

「この夏も中州に取り残される水難事故が多発しました。晴れているから大丈夫ではなく、今の段階から情報に留意していただければと思います」(前同)

 この事前放流は大雨の被害が予想される地域で実施します。連休中は水辺のレジャーも増えます。まだ台風は遠いと思っていても、キャンプなどの設営場所、車両の乗り入れなどには注意が必要です。

 事前放流は各ダム管理者がウェブ上で公開していることはありますが、国土交通省が運営するポータルサイト「重ねるハザードマップ」では確認できません。放流の警報を知らせるサイレン、ダム管理者の広報車の呼びかけに気を付けて下さい。

 また、高波、高潮などの影響を受ける沿岸部のほかにも、台風で川より海の水位が高くなることで川の水が押し戻されるバックウォーター現象が起き、沿岸から離れた河川の氾濫が起きる可能性があります。低地や地下の駐車では、自らと同時にクルマの避難も考えるべきかもしれません。