南部オスロ近郊はガソリンよりも電気代のほうが高い

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さらに悲惨なのが電気代の高さです。ノルウェーでは生活電力を水力発電でまかなっているとはいえ、発電設備が集中している北部から南部へは送電することができず、ノルウェー南部ではおもに電気を海外から購入しています。

2022年は、ウクライナ危機や水力発電の要となる雨量不足などの影響により電気代が高騰しており、いまや電気代はガソリン価格以上にもなっています。しかも、ノルウェーのガソリン価格は元々EUのなかでもトップレベルの高さです。

現在ノルウェー南部の首都オスロ近郊では1kWhあたり電気代は1ユーロを超え、BEVを満充電するのに100ユーロ(約1万4,000)もかかるようになっています。

電力需要が高まった2022年の冬の一般家庭の電気代は、日本円換算で1ヵ月あたり12〜13万円にものぼったそうです。一定額以上は政府が負担してくれるものの、この電気代の異常高騰にオスロ周辺に住む市民は悲鳴を上げています。

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ノルウェーが急速にEVシフトできた理由

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寒い地域ではバッテリーの効率が低下するため、BEVは本来ノルウェーで普及しにくいはずです。にもかかわらず、ノルウェーでここまでBEVが普及したのは、前述した水力発電による安価な電力と、高価な燃料価格に加えて、政府の政策が大きく影響しています。

政府は内燃機関車に重税を課すかわりにBEVを優遇する政策を推進。BEV購入にあたっての免税措置に加え、フェリーや有料道路、駐車場利用の割引や法人向けの税制優遇が実施されたことで現在に至ります。

なんか矛盾してない?

ノルウェーがBEVにとって至れり尽くせりなこれらの優遇ができるのは、北海油田から取れる石油・天然ガスによる潤沢な収益があるためです。

つまりノルウェーでは、石油を売った代金によって国内のEV導入が進められています。その石油は海外で使われるため、ノルウェーでのCO2排出量は少なく済みますが、地球全体のCO2排出量削減には何も貢献していません。

むしろ過度なBEV需要の高まりによってCO2の排出量が増えていることにもなります。BEVが増えすぎたせいによる充電渋滞に加え、不安定な電力供給による移動コストの異常高騰。これが、BEV普及率世界第1位を独走するノルウェーの現状です。

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