終電がなくなったあとの帰宅手段としてタクシーを長距離利用するケースがあります。タクシーで移動できる距離に限度はあるのでしょうか?
タクシーは1日あたりの「最高乗務距離」が決まっている
タクシー運転手には法令で1日あたりの「最高乗務距離」が決まっています。
当時の運輸省(現・国土交通省)が制定した「旅客自動車運送事業運輸規則」の第22条には、「事業用自動車を運転する人が決められた最高乗務距離を超えてはならない」と記載されています。
この最高乗務距離は日本各地で異なります。
例えば、東京都心や横浜、川崎に営業所をもち活動しているタクシー会社なら、管轄する運輸局が定めた1日で365kmまで(隔日勤務、なお日勤勤務では最大で270km)の乗務移動が可能です。
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最高乗務距離を設定している理由には、「重労働を避ける」「交通事故・違反を防ぐ」の2点が挙げられます。
タクシー運転手は職業柄、長時間の勤務による過労や居眠り運転、無理な運転による事故・違反が多くなってしまいがち。そのような悪習を防ぐため、最高乗務距離を設定して無茶な勤務環境とならないようにしているということです。
ただし、「高速道路や有料自動車道路を使って乗務を行った距離は最高乗務距離に含めない」としている運輸局もあります。
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長距離移動を頼まれると簡単に断れない…という苦悩も

ところが、長距離の移動をお客様から頼まれる場面では、タクシー運転手は”板挟み”に遭うケースもあるようです。
筆者の知人であるタクシー運転手に、長距離移動を頼まれた際どうするのか尋ねると「目的地によっては会社に連絡して指示を仰がないといけない」とのこと。
多くのタクシー会社では一般企業と異なり「隔日勤務」と呼ばれるシフト体系を使って働いているのが特徴。朝から夜遅くまで丸一日勤務したのち、翌日は休養日となるハードな勤務シフトを取り入れているそうです。
それに伴い、業務に使っている車は2人以上の運転手が出勤ごとにシェアする方式が一般的です。
例えば、筆者の地元である神奈川某所から、大阪に急用があるから向かってもらいたいとタクシー運転手へ頼むとしましょう。もしこのまま大阪までの移動を請け負ってしまうと、タイミング次第では翌日出勤してくるドライバーが業務に使う車がない事態に陥ってしまうかもしれません。
また、上記のように一日で定められている最高乗務距離も、大阪まで行ってしまうと上限を超えてしまう恐れがあります。
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国が定めている「道路運送法」では、天災などやむを得ない理由で支障が生じるケースで、乗車を拒否できるとの法令があります。これに基づけば、長距離の移動を依頼してきた乗客を断れることになります。
しかし、「旅客自動車運送事業運輸規則」の第13条には”運送の引受け及び継続の拒絶”と、乗車を拒否できる条件が書かれていますが、長距離の移動に関する項目はありません。
タクシー運転手の知人いわく「会社は道路運送法に沿って指示を出しているのだと思いますが、距離を理由に乗車を丁重に断るケースがあります。
前に”名古屋へ行ってくれ”という乗客がいましたが、その日の私は朝から夜遅くまで勤務し、既に業務終了時刻が迫っていたため会社へ連絡し相談したところ、乗車拒否の指示がありました」と語ります。
ちなみに、乗車拒否に正当な理由がなければ、タクシー会社は道路運送法第98条に沿って100万円以下の罰金が課せられます。
サービス業では「お客様は神様」という考え方がありますが、タクシー運転手にとって無理のない労働環境のため、厳しいルールが作られているのも理解しなければならないでしょう。
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