新型クラウン パトカーになったら「現場は嫌がる?」 現行型でも課題 不安ポイントとは

エンジン出力だけじゃない、運転特性に影響与える数値も

 トヨタが発表したばかりの16代目クラウンのパワートレインは、足回りについては4WD一択、エンジンに関しては2500ccハイブリッド(直列4気筒ガソリン)と2400ccハイブリッドターボ(デュアルブーストハイブリッド、直列4気筒ガソリン)の2種類です。気になる出力は前者がシステム最高出力172kW(234PS)。一方、後者はシステム最高出力257kW(349PS)、最大トルクが360N・m(38.4kgf・m)です。

 交通取締用としては後者の方でしょうが、ハイブリッドターボというものが、どこまでスムーズな加速や乗務員の繊細なアクセルフィーリングに適合しているのか。220系クラウンに不満を抱く現場警察官からすると不安が残るのも無理はないでしょう。

 また前出のカメラマンのハナシでは、現状「クロスオーバー」しかラインナップにないため何ともいえないものの、最小回転半径の大きさもひっかかるといいます。これは「クロスオーバー」が4WDであるがゆえともいえますが、後輪操舵システムDRS(ダイナミックリアステアリング)が搭載されているとはいえ、新型クラウンの最小回転半径は5.4m。対して220系クラウンの2WDは5.3m、210系クラウンの2WDはさらに小さい5.2mでした。

 こういう点もパトカーとして運用するとき、無視できない数値のようです。

 もしかすると、今後に予定されている“セダン”タイプでは、足回りこそFR駆動をラインナップするかもしれないものの、パワーユニットに関しては、現在のトヨタの開発方針からすると、ハイブリッドではない大排気量の自然吸気エンジンを市販車の設定で出すのは難しいのではないかといいます。

 パトカー仕様として設定するのであればエンジンを載せ替えることもあり得なくはないものの、年間を通して生産台数が限られるパトカー仕様のためだけにそこまでするかは不明だということでした。

 ほかにも新型クラウンは車幅も1840mmと、従来の210系や220系の幅1800mmよりも大きくなっています。40mm、すなわち4cmですが、この4cmは意外と大きいのだそう。というのも自動車警ら隊の隊員などは、安全かつ迅速に職務を遂行できるよう、徹底的にパトカーの車体サイズを自らの身体に覚え込ませるといいます。そのため、4cm車幅が変わるだけでその運転感覚は変わってしまうのだとか。

 今年度と来年度の国費調達分のパトカーは、間違いなく220系クラウンがベースになるそうです。なお、再来年度、すなわち2024年度以降はどうなるかわからないものの、国費による大量調達の場合、選択肢としては現状、クラウン以外ほぼない状態だそう。

 現場ではすでに210系クラウンの交通取締用も初期配備車の廃車が出始めています。選択肢がクラウンしかない状況が続くのならば、今後登場予定の“セダン”がどのような構造で登場するのか、興味は尽きないと言えるでしょう。