海上自衛隊の新艦種「哨戒艦」いよいよ建造へ そもそも何する艦? 大量整備で造船業にも光

外国艦船でいうとどの程度?

 海上自衛隊が計画する哨戒艦と同様の役割を持つ外国艦船としては、フランス海軍のフロレアル級フリゲート(基準排水量2600トン)や、イギリス海軍のリバー型哨戒艦バッチ2(満載排水量2000トン)が挙げられます。

 前者は、太平洋やインド洋に点在するフランス海外県や同海外領土の警備に用いられており、後者は国境警備や海外領土の防衛、漁業資源の保護といった多様な任務に投入されています。

 防衛省は哨戒艦の建造にあたって、もがみ型護衛艦と同じように、企業から技術的に優れた提案を募る、企画提案方式を用いていました。防衛装備庁はその理由について「艦艇勤務隊員の人員の確保が課題になっていることも踏まえ、自動運航技術・省人化技術など、国内造船所に培われた高い技術力を用いて設計・建造する必要があるとともに、艦艇の設計・建造基盤を維持しつつ、将来の技術及び価格的競争性を確保することが必要なため」と回答しています。

 そのやり方で、高度な艦艇設計・建造、搭載装備品などに係る関連企業の管理能力、設計から維持整備までの一元管理能力、この3つの観点から総合的に評価した結果、いずれもJMUが高い得点を得たとしています。

 このため、JMUが哨戒艦の設計や建造の主契約者(随意契約)となり、次点となった三菱重工は、提案を採用された者の下請負者として、設計に参画するとともに一定隻数の建造を担うことになりました。

 建造ヤードはJMU横浜事業所の磯子工場、三菱重工長崎造船所、そして三菱重工マリタイムシステムズ玉野本社工場(旧三井E&S造船玉野艦船工場)の3か所が考えられます。

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哨戒艦建造で造船所の維持にも光明が…

 1990(平成2)年には計6社あった海自の水上艦建造ヤードも、今やJMUと三菱重工グループの2社のみ。JMUは艦艇の新造を横浜事業所に集約しており、磯子工場では空母化が決まった海自最大の艦艇、いずも型護衛艦(基準排水量1万9500トン)や、いわゆるイージス艦と呼ばれるまや型護衛艦(基準排水量8200トン)などを、鶴見工場では船体材料にFRP(繊維強化プラスチック)複合材料を採用した、あわじ型掃海艦(基準排水量690トン)などの建造を担ってきました。

 一方で日本の造船業自体が、中国・韓国との競争や資機材価格の高騰などで苦境に立たされており、JMUも艦艇ヤードである横浜事業所の操業を維持し続けるには、艤装の密度が高く工数も多い艦艇の手持ち工事を複数隻、確保することが求められていました。

 JMUが哨戒艦の開発・建造を手掛けることで、同社としても横浜事業所の維持に光明を見出すことができるようになったともいえるでしょう。また、これで自動化・省人化がさらに進んだ次世代の自衛隊艦艇の実現にも筋道を立てられるようになるため、将来艦船の設計・建造にもつながっていくのではないでしょうか。