クルマに乗る上で重要となる”保険”。自賠責保険は強制保険と言われるとおり、全ての車(バイク含む)において加入することが義務付けられています。

一方で、自動車保険(任意保険)の加入は任意となっており、自動車保険に加入せずにクルマに乗っている人もいます。

自動車保険、特に対人賠償の加入率は、都道府県によって違いがあったりするのでしょうか?

自動車保険加入率の低い県は?

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まず損害保険料率算出機構の『自動車保険の概況(2021年)』から、自動車保険(対人賠償)の加入率が高い地域を見てみましょう。

1位 大阪府(82.8%)
2位 愛知県(82.3%)
3位 神奈川県(80.5%)
4位 京都府(80.4%)
5位 千葉県(79.7%)

逆に加入率の低い地域についても見てみます。

1位 沖縄県(54.1%)
2位 島根県(59.1%)
3位 高知県(61.2%)
4位 宮崎県(61.4%)
5位 秋田県(62.1%)

特に目を引くのは、加入率が6割を切る沖縄県と島根県でしょう。先日ネット上でも『沖縄と島根は任意保険加入率が6割を切っていてヤバい』というような投稿がありました。

自動車保険に加入することに関しては、法的な義務はありません。しかし、万が一事故を起こした場合、自賠責保険ではカバーしきれない部分もあることから、自動車保険に加入することが一般的です。そう考えると、たしかに加入率が低いことに対して不安になるかもしれません。

しかし、任意で加入するのは自動車保険だけではなく、「自動車共済」というものも存在します。

この「自動車共済への加入」も加味すると、実はそこまで加入率が低いわけではありません。そこで、保険・共済(対人賠償)を合わせた加入率を見てみます。

ベスト5 ワースト5
富山県(92.6%) 沖縄県(79.0%)
島根県・香川県(91.9%) 鹿児島県(82.8%)
石川県(91.6%) 茨城県・山梨県(84.6%)
愛知県・福井県(91.4%) 宮崎県(84.7%)
新潟県(91.3%) 東京都(85.2%)

損害保険料率算出機構『自動車保険の概況』より作成

島根県は自動車共済へ加入している人が多く、その加入率は32.8%となっており、全国1位。保険・共済計では、全国2位の91.9%の加入率となっています(保険・共済計の全国平均は88.4%)。

しかし、沖縄県は自動車保険の加入率が低いことで有名であり、加入率は数十年間ワースト1位。『沖縄は他県よりも地域的な繋がりが強いため、事故が起きても当事者間の話し合いで解決しているのではないか』といった見方などもありますが、保険・共済計の加入率が唯一の70%台となっており、約5台に1台は保険・共済未加入という状況です。

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自動車共済と自動車保険は何が違う?

ちなみに、自動車共済を扱っている団体は「JA共済」「こくみん共済」「教職員共済」などがあります。先述のように、自動車保険ではなく自動車共済に加入するケースもありますが、自動車共済と自動車保険は、「事故による損害の補償」という点では違いはありません。

しかし、自動車共済は「特定の地域や団体」に限定されており、組合員同士の助け合い精神のもと運営されています。利益を追求する必要がないため、自動車保険の保険料に該当する「掛け金」は民間保険会社の保険料よりも安く設定されていることが多いです。

民間保険会社と比べて販売経費を抑えており、掛け金がリーズナブルになります。また、利益が出た場合は「割戻金」として、加入者に還元するケースもあったりします。

なお、民間保険会社と比較すると事故対応能力が若干劣る面もあったりしますが、補償内容については、そこまで大きな違いはありません。

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10台に1台が保険・共済に未加入という事実は変わらない

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自動車共済への加入率は「地方>都市部」となる傾向があります。地方の場合、自動車保険の加入率が数字上では低く表れることが多いですが、自動車共済加入率も加味すれば、必ずしも「地方=保険未加入が多い」というわけではないことが分かります。

特に島根県は自動車保険の加入率は6割を切りますが、保険・共済計では加入率が全国2位です。地方は自動車保険加入率の低さから『事故ったらヤバい』などと言われたりすることがありますが、保険・共済計では各都道府県がおおむね「9割前後の加入率」となっている点をおさえておくとよいでしょう。

しかしながら、見方を変えれば1割のクルマ、つまり10台に1台が保険・共済に未加入ということです。事故が発生した際、相手が無保険という可能性も十分に考えられます。

自分が被害者になった場合、自賠責保険によって最低限の補償を受けることはできますが、それを上回る分については相手の”財力次第”になってしまい、損害賠償金や慰謝料などが支払われない可能性があります。

こういったケースで、最終的に自分を守ってくれるものは「自分の保険」です。クルマは「車両保険」、自分の身は「人身傷害保険」で守ることができます。

相手が自賠責保険しか加入していない場合、十分な補償を受けられない可能性があります。約90%は対人賠償(保険・共済)に加入していますが、「約10%は未加入」という現実も認識し、自分の保険で”備え”をしておくことも必要でしょう。