噂は本当? パトカーは「任意保険に入ってない?」 事故した場合どうなる? 警察車両の保険事情とは

かつて「パトカーは任意保険に加入していない」という話がありました。実際のところ、パトカーは任意保険に加入しているのでしょうか。

かつてパトカーは任意保険に加入してなかった? それはなぜ?

 クルマを購入した際に必ず加入しなければいけないのが「自賠責保険」。この自賠責保険の加入は「自動車損害賠償保障法」によって義務付けられています。
 
 もちろん、警察車両のパトカーも同様に自賠責保険には加入していますが「昔は任意保険には加入していなかった」という話があるそうです。本当にパトカーは任意保険に加入していなかったのでしょうか。

 自動車損害賠償保障法第3条では「自己のために自動車を運行のように供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と説明されています。

 同様に第5条には「自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任共済(責任共済)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない」と記載されています。

 そのため、公道で走行するクルマは基本的に自賠責保険に必ず加入する義務があります。

 しかし、警察車両であるパトカーは自賠責保険は加入しているものの「任意保険には加入していない」という話がありました。本当にパトカーは自動車の任意保険に加入していなかったのでしょうか。

 パトカーの任意保険について、警察庁の交通安全課担当者は「基本的に、パトカーや警察車両も一般のクルマ同様に、任意保険に加入しています」と話します。

 どのような任意保険に加入しているかは、各都道府県警によっても異なりますが、例えば、福岡県では任意保険の契約に関わる一般競争入札を実施した結果、あいおいニッセイ同和損保と契約しています。

 同様に、北は北海道から南は沖縄まで、ほとんどの都道府県警で任意保険の一般競争入札を実施しており、多くの都道府県で公用車(パトカーを含む)の任意保険に加入していることがわかります。

 では、なぜ「パトカーは任意保険に加入していない」という話が出ていたのでしょうか。

 実際に、前出の担当者は「今でこそパトカーは任意保険に加入していますが、数年前までは加入してなかったのが事実です」と話します。なぜ任意保険に加入していなかったのでしょうか。

 実は、パトカーなどの公用車が万が一事故を引き起こしてしまった場合、その賠償金や賠償責任は国や公共自治体が負担するという「国家賠償法」という法律が大きく関係しています。

 国家賠償法の第1条には「国または公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が、これを賠償する責に任ずる」と定められています。

 つまり、止むを得ない状況でパトカーが事故を起こしてしまった場合には、国や公共団体が賠償責任を負うということになります。

 しかし国家賠償法第1条の第2項には「前項の場合において、公務員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と説明されており、公務員側に明らかな過失があった場合には、国や公共団体が債務の返還を求めることができるとされています。

 実際に、2022年3月には岡山県で緊急走行中のパトカーが軽乗用車と衝突し、軽乗用車に乗車していた男性が負傷を負ったという事故が発生しています。

 この事故で岡山地裁は、パトカー側の過失を認め、県に1200万円の賠償金を命じました。

 このように、国家には賠償金を支払う責任を負うという、任意保険に代わる法律が存在するため、パトカーは任意保険に加入してこなかったという事情があるようです。

 また、前出の担当者は「警察が運転するパトカーは、当然安全運転を心がけ慎重に走行しているため、そもそも事故を起こす確率が低いという理由もあります」と話します。

 大量に保有しているパトカーや警察車両のすべてに任意保険を契約すると、その保険料が高額となってしまう一方で、実際に任意保険を利用するケースは少ないため、任意保険を契約しないほうが合理的という事情もあったようです。

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 その一方で、なぜ最近になって任意保険に加入するケースが増えたのかという点について、前出の担当者は「お答えすることは難しい」と話すものの、市民からの要望などをうけた結果と見られます。