パレード専用? ロシア最新鋭戦車「T-14」がウクライナ戦に出ないワケ 「切り札」の可能性

2022年5月9日、モスクワで対ドイツ戦勝記念パレードが行われました。プーチン大統領の演説に注目が集まるなか、ロシアが誇る最新戦車も登場。しかし同車はウクライナ侵攻には用いられていません。その理由を推察します。

ロシアが誇る最新MBTが実戦投入されない理由

 ウクライナで戦闘が続くなか、ロシアは2022年5月9日、首都モスクワにある「赤の広場」で、毎年行っている対ドイツ戦勝記念日の軍事パレードを例年通り挙行しました。参加した兵員と車両の数は去年に比べて1~2割減でしたが、その中に、わずか2両ながら、ロシアが誇る最新鋭戦車T-14の姿もありました。

 T-14は2015(平成27)年のモスクワにおける対ドイツ戦勝70周年を記念するパレードで初めて披露され、各国の軍関係者の注目を集めた戦車です。同車はロシアが独自開発した重装軌車両プラットフォーム「アルマータ」をベースに開発されており、従来のT-72やT-80、T-90などと同じく乗員は3名ながらも全員が車体部に乗車し、砲塔は無人化されているなどさまざまな新機軸が盛り込まれた、第3.5世代とも第4世代ともいわれる最新のMBT(主力戦車)です。

 ウクライナの戦いには、T-14よりひとつ前の世代のMBTであるT-90Mも投入されているようで、さっそく撃破された画像が公開されるなどしています。しかしT-14にかんしては、同地での戦闘に投入されているかどうかはいまだ不明で、もしかしたら、ウクライナへは送られていないのかもしれません。

 もしT-14がウクライナでの実戦に投入されていないとするなら、それにはいくつかの理由が考えられます。

 まず、最新であるがゆえにまだ機能上や性能上のプルーフィング(証明、お墨付き)が終わっておらず、実戦への投入には不安があるという可能性です。歴史上、戦時下ゆえに慌てて不完全な状態のまま最新兵器を実戦に投入し、その優れた性能を存分に発揮できずに撃破されてしまったケースは少なくありません。

 次に、生産が進んでおらず、実戦に投入するためのまとまった数が揃っていない可能性です。昨今のロシアの財政事情を鑑みた場合、これはあり得ることで、実際に生産と配備の遅延がアナウンスされています。

 もしかすると、どちらか一方の理由ではなく、両方の理由からT-14はウクライナに送られず、国内に留め置かれているのかもしれません。

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T-14を投入しても戦局挽回しなかったときは…

 しかし、まだ他にも考えられる理由があります。それは、T-14が温存されている可能性です。プルーフィングは終わっており、絶対数も多いわけではないものの相応の規模の戦闘単位を編成するだけの頭数は揃っている。しかし最新鋭の「虎の子」であるがゆえ、「ここ一番」という局面に投入すべく控え置かれているということも、あり得るのではないでしょうか。

 では、「ここ一番」とはなにか。それは、勝利を目前にした決定的な時期に投入して、かつてのT-34戦車のように、T-14を「勝利の戦車」と印象付けることが考えられます。そうすれば、副次的にはロシアにとっての重要な外貨獲得ビジネスのひとつである兵器輸出の一環として、同車の輸出にもはずみがつくことでしょう。

 ただ、それとは別に、負けが込んだロシアが戦局の挽回を迫られた際、「ひとつ前のカード」的に実戦へ投入される可能性も、決して考えられないことではありません。たとえば、優秀な戦車との交戦も想定されるアメリカやNATO(北大西洋条約機構)の介入という事態にでもなれば、T-14はぜひ欲しいところでしょう。

 そして万一、もしT-14の実戦投入がロシアにとって「ひとつ前のカード」であるとするなら、このカードが奏功しなかった場合、かねてよりプーチン大統領がちらつかせている、恐るべき「最後の切札」、すなわち核攻撃、戦術核兵器の使用を決断する可能性もなきにしもあらずかもしれません。

 ロシアが誇る最新鋭戦車T-14が戦場に姿を現す日が来るのか、その動向をこれからも注視していきたいと筆者(白石 光:戦史研究家)は考えています。