高射機関砲復活の目はあるか 独「ゲパルト」ウクライナへの供与でにわかにざわめく

ドイツがウクライナ支援として提供を決めた「ゲパルト」自走対空砲は、文字通り冷戦時代の遺産です。実はドイツでは退役して10年以上になるのですが、それでもこうして白羽の矢が立ったのには、それなりの理由があるはずです。

ドイツの自走対空砲「ゲパルト」がウクライナへ

 ロシアの侵攻を受けるウクライナへ、各国からの支援が行われています。そうしたなかドイツが2022年4月26日、「ゲパルト」自走対空砲50両をウクライナに提供すると発表しました。

 ドイツがウクライナに初めて提供する重装備ということで注目されたこの「ゲパルト」は、1973(昭和48)年に配備が始まったという、どちらかといえば旧式兵器になります。旧式ではあるものの、2020年にカタールが「FIFAワールドカップ2022」の警備用として15両、購入することを決めています。ワールドカップの警備に自走対空砲を持ちだそうというのは穏やかではありませんが、旧式ともいえる自走対空砲のニーズがいまでもあるのには理由があります。

「ゲパルト」自走対空砲は、西ドイツで1965(昭和40)年に開発が始まり、上述のように1973年から配備が始まりました。車体にレオパルト1戦車を流用し、砲塔には左右に1門ずつ35mm高射機関砲を備えます。砲塔前面には目標追尾レーダー、後部には捜索レーダーを装備、砲塔内に射撃管制装置を収めています。捜索と射撃管制を同時並行で処理でき、1両でシステムとして自己完結しており、戦車部隊に随伴して対空戦闘できる能力を持ちます。

 この「ゲパルト」のレイアウトは、いわゆる「戦車部隊に随伴できる自走対空砲(対空戦車)」の基本形となりました。陸上自衛隊の87式自走高射機関砲もよく似たレイアウトになっていますが、「ゲパルト」の特許の関係で、レーダー配置などは異なっています。

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冷戦期生まれの兵器高射機関砲が通用する場面はあるのか?

 運用開始からのち、時代が進むにつれて「ゲパルト」の射撃管制装置やレーダーはバージョンアップされたものの、攻撃ヘリコプターが搭載する対戦車ミサイルの射程が伸びて、35mm高射機関砲の有効射程5.5kmより遠くからアウトレンジされるようになり、またレオパルド1の車体では現代の戦車に随伴する機動力が不足しているなどの理由により、ドイツ陸軍では2010(平成22)年以降、第一線を引いて予備保管扱いとなりました。そのように余剰となった戦車や装甲車をドイツは積極的に輸出しており、「ゲパルト」もブラジル、ヨルダン、ルーマニアへ輸出され、まだ現役にあります。

 今回、ウクライナ支援として送られることになった「ゲパルト」ですが、ロシア空軍を相手に冷戦時代生まれの対空砲が通用するのでしょうか。

 空軍力は圧倒的にロシアが有利のはずですが、その行動は侵攻開始からこのかた、ずいぶんと抑止されています。その要因は、周辺を監視飛行するNATOの早期警戒管制機がロシア空軍をモニターし、その情報をウクライナ軍がうまく活用して中・長射程対空ミサイルを運用しているから、という見方があります。ロシア空軍は、離陸すればすぐ対空ミサイル網に捕えられることがわかっており、飛ぶに飛べないというわけです。その意味でウクライナ軍の対空システムは現状、有効に機能しているといえます。

 それでも民間サイトによると、ウクライナ軍は43基前後の対空ミサイル発射機を失っています。保有数は開戦前で450基前後とされており、少なくない損害で徐々に減衰していることは間違いありません。

 そこで「ゲパルト」の出番、といいたいところですが、しかし「ゲパルト」では、その穴埋めはできません。