「トヨタ センチュリー」「日産 プレジデント」「三菱 デボネア」…など、かつて”特別な高級セダン”は各メーカーが生産していました。しかし、ほとんどのメーカーは採算が取れないことなどを理由に撤退し、今やセンチュリーのみが生き残る形となっています。

センチュリーは2018年にモデルチェンジ(3代目)、2021年に一部改良が行われ価格はなんと2,008万円。非常に需要が限られる高級車ですが、なぜ今もなお生産され続けているのでしょうか?

モデルチェンジに伴い700万円以上値上げ

3代目 センチュリー

先代のセンチュリーは、国産車唯一のV型12気筒5リッターエンジンを搭載していましたが、モデルチェンジによってV型8気筒5リッターエンジン+モーターとなり、先代レクサスLS600hLをベースにして開発されています。

現行モデルは、ハイブリッドになったこともあり値上げされましたが、値上がり額はなんと700万円以上。ここまで価格が上がっているのは、「商品の価値が上がったから」というよりは、「そうせざるを得ない」と考えることができます。

というのも、先代のセンチュリーは発売時の月販目標が200台に設定されていましたが、現行モデルはたったの50台。センチュリーは基本的に国内向けであり、生産規模が非常に小さく量産効果も得られないため、価格を上げざるを得ないのです。

とはいえ、センチュリーは専用の製造ラインで作られており、職人による”手作り品”であることや、車の品質なども考慮すると、現行モデルの価格は決して高すぎるという訳ではないような気もします。むしろ先代モデルの約1,250万円という価格は、”破格の安さだった”ともいえるかもしれません。

センチュリーの「鳳凰エンブレム」。フロントグリル奥には「七宝文様」があしらわれている

”後席を第一”に設計され、圧倒的なくつろぎを生む空間

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”フラッグシップ”としての存在価値

©︎Rawpixel.com/stock.adobe.com

センチュリーは伝統と品格を守るフラッグシップカー。非常に手間をかけて作られており、まさに”日本のモノづくりの精神”の表れといえます。

通常のボディ塗装が4層のところ、メインカラーのエターナルブラック「神威」は水研ぎ3回を含む7層の超高品質塗装、ボディの仕上げは職人による手作業など細部まで徹底したこだわりが見られ、「日本の伝統美」を感じ取れます。

筆者がお世話になっているディーラー担当者は、「センチュリーのような特別な車は『何台売れた』『利益はいくら』といった部分ではなく、”存在することに意味がある”といえるかもしれません。」と話しており、商売として儲けることよりも”存在”が大切であるようでした。

つまり、フラッグシップであるセンチュリーは「単体で利益を出すための車」ではなく、「メーカーとしてのステータスを保つために存在する車」と言うことができるでしょう。

天皇陛下や皇族の方々が乗る車として、センチュリーが採用されていることは有名です。「天皇陛下が乗ってらっしゃる車」「あの車は凄い」という評価になれば、それがメーカーのステータスになります。

だからこそトヨタはいまだにセンチュリーを生産しており、それを行うことができるだけの余力があります。かつては日産 プレジデントもセンチュリーと双璧をなしていましたが、当時経営不振ということもあり、2010年に生産が終了しました。

ショーファードリブン(専属運転手がいるオーナー向けの車)は、政府の要人や企業の重役などのVIPを乗せる車であり、ニーズはそこまで大きくありません。そのため、ほとんどの国産車メーカーはこの市場から撤退してしまいました。

そうした状況においても、センチュリーは「匠の技」によって生産され続け、国産車の中でも別格のブランドとして生き残っています。クラウンマジェスタが廃止された今、センチュリーの存在価値が改めて重視されてゆくでしょう。

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