高速道路のトンネル内を走行していると、天井に吊るされた大きな送風機を目にすることがあるでしょう。飛行機のエンジンのようなそれは「ジェットファン」と呼ばれるものです。

最大で風速約30m/sという、台風にも匹敵する風を発生させることができるジェットファン。トンネル内においてどのような役割を担っているのでしょうか?

主な目的は換気。トンネル内火災などの非常時にも重要な役目が

©︎dejank1/stock.adobe.com

ジェットファンは、大きさ、トンネル内の交通量、勾配などによって設置数が決まりますが、設置される主な目的は「換気」です。

NEXCO東日本広報課に換気する理由について聞いてみたところ、「トンネルを利用される方の安全で快適な通行を確保することや、トンネル内の保守作業のための環境を確保すること、火災時に避難環境等を確保することにあります。」と話しています。

トンネル内では車の排出ガスに含まれる有害物質の濃度が高くならないよう、ジェットファンによって風の流れを作り、外部からの空気を取り込んでいるのです。

ジェットファンがなければ車から放出されたガスが滞留してしまい、場合によっては運転者の視界が悪くなることも。外気導入で走行している場合は濃度の高い排出ガスが車内に入り込み、健康に被害を及ぼすかもしれません。

また、トンネル内では保守作業が行われることもありますが、排出ガスが充満した状態では作業員にも悪影響を与えます。有害物質の濃度を悪影響がない程度にすることや視界を確保することに寄与しており、トンネル内の空気汚染を防いでいるのです。

さらに、トンネル内火災などの非常時にも役立ちます。

仮に交通事故などによって火災が発生した場合、一酸化炭素などの有害物質が発生しますが、煙が充満したままであれば、健康被害が出ることも考えられるでしょう。

ジェットファンによって空気の流れを作り、煙を外へ押し流すことによって、二次被害を軽減し、避難環境を確保することにつながります。

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空気の流れをコントロールし、トンネル内の環境を安全に保つ

大阪市の正蓮寺川トンネルのジェットファン

画像提供元:阪神高速道路株式会社

大阪市の正蓮寺川トンネルでは、ジェットファン34台をインバータで制御する技術を採用しました。

阪神高速道路株式会社によると、車の走行によって発生する空気の流れとは逆の方向に風を送ることで、排気ガスを出口付近の換気所へと送り込み、空気を清浄化してから屋外に排出しているとのことです。

画像提供元:阪神高速道路株式会社

また、渋滞時に火災が発生した際には、「風速零化制御」によって避難環境を一定時間確保することを可能にしました。ジェットファンの風速・風向を細かく制御して火元付近の風速をゼロに近づけ、煙の拡散を抑制する方法です。

風速ゼロの環境では、煙は熱によっていったん上方へ留まるため、その間に非常口から避難するという仕組みとのことです。火元の前後どちらにいても避難できるよう工夫されています。

余談にはなりますが、ジェットファンは天井から吊り下げているため、落下などの危険性も気になるところ。

2012年に発生した笹子トンネルの天井板崩落事故以降、アンカーボルトを増やしたり、落下防止用のロープの追加、振動計の設置、定期点検など、さまざまな面で安全対策が強化されているようです。

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