もと会員制サロンの歴史が刻まれた、上質で優雅な空間

昭和23年(1948)創業の「にしむら珈琲」は、神戸~阪神間を中心に9店舗展開する、神戸を代表する老舗コーヒー店。自家焙煎の豆を、酒処・灘の名水「宮水(みやみず)」で淹れる一杯は、日常の中に豊かなひと時を演出してくれます。

なかでもこちらの北野坂店は“特別”。昭和49年(1974)の開店当初は、なんと日本初の会員制喫茶だったそうです。このころ中山手通の本店が繁盛しすぎて、ゆっくりコーヒーを楽しむ雰囲気でなくなっていたのを憂い、理想的なスタイルでコーヒーを提供できる場を、という思いでオープンされたそう。会員の中には、芸能人や政治家などの名前もあったそうです。各界の著名人・セレブリティが行き交い、コーヒーを片手に談笑する…そんな光景が20余年にわたって繰り広げられていました。

1995年の阪神・淡路大震災で本店が被災し、一時休業を余儀なくされたのを契機に、北野坂店も会員制を廃して一般客に開放、現在の喫茶店スタイルになったそうですが、優雅な雰囲気は当時のまま。邸宅風のしつらえに、重厚なアンティーク家具がゆったり配された空間には、くつろぎの中にも、思わず背筋が伸びるような心地よい緊張感が漂っています。

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灘の宮水で淹れる、口当たりまろやかなコーヒー

にしむら珈琲の豆は、各国の指定農家から仕入れて、毎日自家焙煎しています。定番のにしむらブレンドは、6種の豆をそれぞれ個別に焙煎し、時期に合わせて配合を調整。挽きたての香り高い豆を、一杯ずつていねいにネルドリップします。毎朝汲んでくるという西宮の宮水は、灘酒の仕込みにも使われるもの。六甲山系の伏流水で適度なミネラルを含み、コーヒーの味をまろやかに仕上げてくれます。ほら、奥行き深い香りが立ち上ってきましたよ!

口に含めば、快い苦みとほのかな酸味、豊かなコクが身体中に広がるよう。ふわりと鼻腔に抜ける香ばしさも、優雅な時間を盛り上げてくれます。コーヒーのおともには、直営パティスリー・セセシオンのスイーツを。この店のコーヒーに合うように独自に開発されたケーキは、常時数種類がスタンバイ。写真はフルーツの彩り鮮やかなパラチンケシュニッテン。しっとりした生地、クレープ、カスタードクリームが層になって、やさしいおいしさを織り成しています。

木彫りの装丁が風格たっぷりのメニュー表。表紙に刻まれた鍵は、かつて会員一人一人に渡されていたマイ鍵へのオマージュです。持ち手部分が、トレードマークのコーヒーミルの形になってる!

なお、にしむらブレンドは単品900円、ケーキセットで1300円。…ちょっと身構える額かもしれませんが、この唯一無二の空間、そこで紡ぎ出される特別なひと時のお代と思えば、決して高すぎる設定ではなさそうです。