昔ほどではありませんが、今でも高速道路で時おり見かける激速ライトバン。
商用車なのに、なんでそんなに速いの?!という勢いでカッ飛んでいきますが、もちろん特別なエンジンを積んだりフルチューンしているわけではありません(たぶん)。
なぜそんなに商用ライトバンは速いのでしょうか?
フル積載を前提とした実用性重視のセッティングがカギ?
低速トルク重視のエンジンと、ローギアードなミッションが高速巡航向き
ライトバンに限らず、最大積載量まで、あるいは過積載すらも考慮した荷物を運搬するための商用車。外観が乗用車と似ていても、停止状態から粘り強く車を動かし、加速させていけるよう、低回転トルク重視にセッティングされています。
エンジンは高回転域の最高出力を少し犠牲にしても、より低回転からトルクが盛り上がって最大トルクに達する特性に変更。ミッションも通常よりローギアードなギア比とされて、フル積載&乗車時でも発進や加速が容易になっているのです。
それゆえ、空荷で1名乗車の場合など加速性能にはかなり余裕があり、特にMT車は短い直線でもかなり高い速度へのせることができます。これにより、5速MTを採用する商用バンは高速巡航も得意、というわけです。
パワーバンドを外さぬシフトチェンジが「最高速」のコツ
昔、筆者が外回りの営業マンだった頃に乗ったのは、スターレット自然吸気仕様と同じ1.3リッターハイメカツインカム16バルブの4E-FEを積む、トヨタEE104VカローラバンDX・4MT。それも重ステというスパルタンな仕様でした。
カタログ車重は900kg台、スターレットよりデチューンした82馬力でも十分な動力性能。タコメーターがないので音とカンを頼りに3速でレブギリギリまで引っ張り、4速シフトアップ時パワーバンドへ入っているのが「最高速」のコツでした。
同じようなエンジンでも、普通の乗用車では同じように走れない
筆者の個人的感想では、同車種のライトバンでも大排気量車ほど加速より巡航性能重視。オートマ車も効率や乗りやすさ重視で、MTほどの加速性能はありません。
さらの面白い事には、同じエンジンでもスペック上の最高出力は高いはずの乗用車は、加速の差が予想以上のハンデなのか、最高速はあまり伸びませんでした。
車種ではカローラバンや後継のプロボックス/サクシードが日産 ADバンなどより加速の伸びに優れています。ステーションワゴンボディでルーフが長いライトバンは、高速でのダウンフォースなど空力特性にも優れ、高速安定性もよかったので安心して踏めたのだと思います。
こういう車に乗ると、「性能はカタログスペックじゃ決まらない」と思うようになります。
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硬めのリアサスで旋回性能も意外と高いが、油断は禁物
空荷時はスパッと回る硬いリヤサス
過積載すら考慮したサスペンション、特にリアサスは硬いのがライトバンの常識です。硬い板バネが何枚も入り、頑丈なリジッドサスで路面の多少の段差はもちろん悪路にも強く、フル積載だとステアリングが軽くフラつきやすくなるものの、乗り心地自体はむしろ良好。
これが空荷になると「硬めのスポーツサス」のようなセッティングで、荒れた路面でリアが流れすぎるのにさえ気をつければ、峠道なども軽快に走る事が可能でした。
その気になれば華麗なタックイン(ブレーキングからリアをズバッと振り出すFF車のテクニック)もできるため、ジムカーナに出場したカローラバンが意外な好タイムを出したのも見たことがあります。
注意!耐久性重視のブレーキやタイヤはネガティブ要素
ただし、走る曲がるはともかく、「止める」性能については過信は禁物。ブレーキ容量はそれなり、足もライトバン用の耐久性重視タイヤですから、絶対的なグリップ力はありません。
空荷状態で乾燥路面なら、それを利用した「弱ドリ」気味で軽快に走れるものの、ブレーキだけは本当に注意が必要。効き自体は悪くなくとも、スポーツタイヤではないため容易にロックしてしまいますし、ABSがない場合はポンピングブレーキなど人間ABS的テクも必要です。
これがフル積載時ともなれば、普通に走れば普通に止まりますよ、という程度になりますから、ちょっと調子に乗るとしても空荷が大前提でしょう。
高速道路を巡航するライトバンなどは、積み荷の重さを計算して走る必要がありそうです。