トヨタの一般向け最高級セダンとして、1955年初代発売以来の長い歴史を誇るクラウン。その中でバンやワゴンを除く、一風変わった派生車が存在していた時期もありました。

今回は「ちょっと変わったクラウン派生車」、中でもアリストのように車名を変えず、キッチリとクラウンの名を冠したモデルを紹介します。

クラウン エイト(1964年)

クラウンエイト

まだアメ車が幅を効かせた官公庁や大企業向けショーファー・ドリブン(運転手付きの高級車)へ国産車を売り込んでいた1960年代はじめ。同時期発売の日産 セドリックスペシャルやプリンス グランドグロリアの対抗馬となった、トヨタ初の高級セダン。

2代目クラウン(1962年)と共通したデザインでクラウンの名を冠しつつほぼ別物。拡大されたボディへ2.6リッターV8エンジンを搭載し、全長やホイールベース延長にとどまったライバルに差をつけます。

しかし、翌1965年に4リッターV8エンジン大型ボディの初代日産 プレジデントが登場するとユーザーを奪われ、1967年には本格的なセンチュリーで対抗。そのためクラウンエイトは短命でした。

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クラウン ピックアップ(1967年)

クラウンピックアップ シングルシート仕様

初代クラウン失敗時の保険として開発された業務用車マスターには、ライトバンやピックアップトラック仕様の「マスターライン」が存在しました。

クラウンの成功でマスターは短命に終わり、マスターラインのみ外観をクラウン的に改め3代目まで存続しました。しかし、1967年にクラウン一族へ組み込まれ、クラウン史上唯一のピックアップトラックが登場。

1列3人乗りのシングルシート車と、2列6人乗りのダブルシート車が存在。後者は一見普通のクラウンに見えて2ドアで、トランクの代わりに後方一方開きの荷台がありました。

この種のトラック需要がなくなったのでこの代限りとなり、歴代クラウン史上最大の珍車となりました。