「長距離走行で車を酷使すると、その分オイルやパーツなどが摩耗する…」というのは誰しも想像することです。反対に「走行距離が少なければ、オイルやパーツが傷みにくく、車が長持ちする」と思っている人もいるでしょう。

しかし実際にはそうではありません。短距離走行(俗にいう「ちょい乗り」)を繰り返すと、知らず知らずのうちに、車を傷めている可能性があります。

なぜ「ちょい乗り」は車に良くないのか

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車の使用状況には「シビアコンディション」というものが存在し、これは文字通り車にとって負担が大きくなる、”厳しい状況”を指します。

各自動車メーカーは、シビアコンディションの例として「悪路の走行(雪道や砂利道)」や「走行距離が多い(年間20,000km以上)」などを挙げていますが、なんと「短距離走行の繰り返し(1回の走行距離が8km以下)」も含まれているのです。

部品交換サイクルを確認してみると、シビアコンディションに該当する場合、通常の半分程度の走行距離でオイル交換が推奨されています。どうしてでしょうか?

車は非常にたくさんの部品で構成されていますが、その各部品には適切な温度があります。例えば、エンジンオイルであれば適温は90℃前後です。

ちょい乗りの場合、完全に暖まる前にエンジンを切ることになります。すると、エンジンオイルの温度が上がりきらないため、燃料の燃焼時に出る水分などが蒸発せず、オイル内に入り込んだままとなります。このような状況が続くと、エンジンオイルの劣化が進みやすくなるのです。

また、意外と知られていないちょい乗りの弊害はマフラーの劣化です。

エンジンが完全に暖まっていれば、マフラーも熱くなるので水分なども蒸発しますが、ちょい乗りでは水分がマフラー内に溜まり、腐食の原因になることも。特に、冬場は暖まるまで通常以上に時間を要するため、なおさら蒸発しにくくなります。

このように、ちょい乗りを繰り返すことは、車への負担となってしまうのです。

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「ちょい乗り」が多い場合の対策は?

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買い物や送迎などでちょい乗りが多くなってしまう人は、どうしたらよいのでしょうか?

筆者がお世話になっているディーラーの整備担当者は、次のように話しています。

「はっきり言ってしまうと、車を使う人はほとんどが街乗りメインになっているといえます。そのため『ちょい乗り』を回避するのは非常に難しいかもしれません。

現実的な対策としては、ある程度エンジンを回すことです。完全暖機するのが望ましいため、暇なときにロングドライブをしたり、時間があるときは高速道路を利用して、適度にエンジンに負荷を与えるのもアリかと思います。」

具体的には、1〜2週間に1回、10km以上車を走らせることがよいとのこと。やはり車も人間と同じで、適度な負荷をかけたほうが健康であるといえそうです。

現代の車は非常に優秀なので、短距離の運転などを繰り返していたとしても、それに見合ったメンテナンス(早期のオイル交換など)をしていれば、壊れるということはほぼありません。しかし、『ちょい乗り』が徐々に車へ負担を与えていくのは間違いないでしょう。

メンテナンスが伴っているのであれば、街乗りだけでも特段問題はないといえます。しかし、突然のトラブルに見舞われないためにも、頻繁にちょい乗りをしている人は、適度に車を「運動」させてみてはいかがでしょうか。

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