ガラス張りの店内に、思わず見とれてしまうような車両が並ぶ高級車ディーラーは、街中でもひときわ存在感を放っています。その佇まいに、「選ばれた人しか入れない」といった空気を感じてしまう方も多いことでしょう。

高級車ディーラーの魅力のひとつとして、豪勢な納車式や、くつろぎの空間を提供する専用ラウンジなど、行き届いた「おもてなし」が挙げられます。車そのものの質だけではなく、このような「体験価値」がオーナーにとって選ぶポイントとなっているようです。

しかし一方で、SNSなどでは「ジャージで行ったら雑に扱われた」「自転車で行ったら相手にされなかった」と、十分なサービスが受けられなかったという声も寄せられています。気軽に立ち寄れない印象もあってか、巷では「やっぱり高級車ディーラーって客を選んでいるのかな?」というイメージがついているようです。

実際のところ、高級車ディーラーによる「顧客の選定」は行われているのでしょうか。複数のディーラースタッフのほか、「雑な扱いを受けた」というユーザーに話を聞きました。

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「乗っている車」や「服装」で対応は変わるのか

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欧州製の高級車への乗り換えを考え、当のディーラーに初めて足を運んだAさんは、「経験したことのないくらいの塩対応をされた」と言います。

Aさんはセカンドカーの軽自動車でディーラーに向かいましたが、到着時の誘導や出迎えもなく、仕方なく自分で車を止め、店内に入りました。やってきたスタッフは、Aさんが来店予約をしていないことを知ると、「予約がないと十分な案内ができない」という旨を告げ、それがAさんには突き放すように聞こえたと言います。

実際に、周囲で商談中のお客さんは優雅なティータイムのように過ごしているのに、Aさんには飲み物だけの提供で、「早く帰ってほしい気持ちがありありと伝わってきた」と振り返ります。

結局、Aさんは満足に説明を聞くことができず、その日はパンフレットだけ渡されて帰宅しました。その後、系列の別店舗に国産高級車で訪れた際には「丁重にもてなされた」らしく、「車で客層を判断しているのでは」との推測に至ったそうです。

スタッフによる対応の印象は、受け取る側の心情によっても異なります。とはいえ「服装」や「乗っている車」などのわかりやすい理由があると、やはりそれが「適当な対応の原因」だと考えてしまうのも当然なのかもしれません。

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「見た目で判断しない」がディーラースタッフの常識

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一方、輸入車ディーラーに勤務するスタッフ数名に、顧客への対応の違いについて話を聞いたところ、統一的な見解として「服装や持ち物で顧客を判断することはない」という旨の答えが返ってきました。

その理由として、現在では動画配信者などの個人事業主や、個人投資家など、普段の身なりにあまり気を遣わない富裕層が増えていることが挙げられています。「購入意欲の有無は見かけからは判断できない」というのは、もはやスタッフ間の常識であるようです。

購入段階に応じて対応が変わることも

ただ、スタッフのなかには「顧客によって対応が変わるのは事実」と回答する方も。そのスタッフによれば、「人と人とのコミュニケーションですので、たとえば常連のお客様と、初めていらっしゃるお客様とでは、無意識に距離の測り方は変わってくると思います」とのことです。

新規のお客さんであれば、さまざまな情報を前提として共有しなくてはいけません。現在の車両から買い換えるのか、新たに買い増しをするのか。予算感はどれくらいで、いつごろの納車を希望しているか。そのような話を聞いたうえで、それぞれのお客さんに合わせて対応していくことが求められます。

さらに先のスタッフは、「お話を伺うなかで、今すぐ購入されるご意向なのか、あるいはしばらく先の予定なのか、というところが見えてきます。それをふまえて、より具体的な商談に向けて動くか、大枠の案内を行うか、見当をつけています」と言います。

つまり、具体的な購入段階に入るのがまだ先だと思われるお客さんには、無理に商談まで進めるのではなく、検討段階に合わせた案内を行う、ということです。

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