筆者が教習所の教官をやっていた時代に「普通車の免許を所持しているのに、普通車を運転できないらしい」そんな免許を所持した人が免許の更新にやってきました。

そんな免許あるのか?何かの間違いではないか?そう思って確認すると、免許には見たことのない条件が記載されていました。

かつて存在した「軽自動車運転免許」

撮影:室井大和

その免許の記載欄には「普通車は軽車(360)に限る」とありました。

調べてみるとそれは、1952年に新設された「軽自動車運転免許」で、車の排気量が360ccまでの軽自動車であれば運転ができるという免許でした。

この軽自動車運転免許はその後、免許制度の改正で廃止に。その際、軽自動車運転免許を所持している人は、審査を受けることで、360cc以上の車を運転できるようになったのです。

しかし、その審査を受けなかった人は普通自動車免許を所持していながら、360ccまでという制限がかかったままでした。こうした免許にかかっている制限を解除する審査のことを「限定解除審査」と言い、解除しなかった人は「軽自動車限定免許」を所持することとなったのです。

その後も免許の更新だけを繰り返していくと、普通自動車運転免許を所持していながら、運転できる車は360ccまでという制限は残って「軽自動車限定普通自動車運転免許」となるというわけです。

調べたところ、当時の審査内容は分かりませんでした。

しかし現在、軽自動車の限定を解除する審査はどのような内容なのか警視庁 鮫洲運転免試験場に問い合わせてみると「審査内容は、指定された試験車両を用いて、交差点やS字、クランクなどの狭路を含む指定されたコース内のルートを1,200mほど走っていただき、減点されずに70点以上をキープできれば合格となり、限定を解除できます。」との回答をいただきました。

現在、「軽自動車限定普通自動車運転免許」を所持している人は、原付バイクと360ccの軽自動車であれば運転できます。また、軽自動車限定免許の人が360cc以上の車を運転してしまうと「無免許運転」ではなく「運転免許条件違反」となります。

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持っている人はすでに免許を返納しているかも…

スバル360ヤングSS(1968年)

当時は、自宅の車が360ccであり、今後も車を新しくする予定がないという人が一定数いたと思われます。その場合、わざわざ審査を受けて乗れる車の制限を解除する必要は少なかったのかもしれません。

実際に、当時の自動車メーカー数社は、軽自動車限定免許所持者のために360ccの車を販売し続けていました。

当然ながら2021年時点では新車で360ccの車を購入することはできませんので、新たに車を購入するとなると中古で探すしかありません。程度のいい360ccの車を探すのは至難の業と言えるでしょう。

軽自動車限定免許を所持している人は、現在80歳以上になっている可能性が高いと思われます。審査を受けずにそのまま免許を更新し続けて、2021年に至っているという人はかなり少ないはずです。すでに免許の返納を検討しているかもしれません。

もし、免許を所持している両親や祖父母が80歳以上なら、免許を見せてもらってください。もしかすると「普通車は軽車(360)に限る」と書いてあるかもしれません。かなり希少な免許であることは間違いありません。

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