内房上総湊港・加平丸の山田隆船長は83歳だ。

背筋は伸び、声は通り、歩く姿は悠然としている。

かくしゃく、とは違う。

もっと自然体だ。

出船を準備する山田船長の姿は──人生の大先輩を形容するにはふさわしくないかもしれないが──、実にカッコいい。

「様になる」あるいは「板に付く」を地でいく。

すべての動きに淀みがなく、確信に満ち、調和している。

ちなみにオレは昭和44年生まれの51歳だから、山田船長の32歳年下で、まさに息子と言ってもおかしくない年齢差だ。

さらに蒼一郎は平成15年生まれの16歳。

言ってみれば、山田船長を父として、息子のオレ、孫の蒼一郎と三世代で東京湾に繰り出すようなものである。

初対面の山田船長に亡き父を重ねるのは勝手かつはなはだ迷惑な話だとは承知しているが、非常に感慨深いものがあった。

オヤジは昭和9年生まれだったから、山田船長にほど近い。

残念ながら孫である蒼一郎が生まれるより先に逝ってしまったが、大の釣り好きで、オレは何度も沖釣りに連れ出された。

蒼一郎には、間違いなくその血が流れている。

釣りを楽しみ、魚をさばく彼の姿を、オヤジに見せたかったとつくづく思う。

大の子ども好きで、結局のところ人生のほとんどすべてを3人の子ども──兄、オレ、そして弟──に捧げてくれたオヤジには、満足に感謝も伝えられないままだった。

オレにも3人の子どもがいるが、釣りをするのも、オヤジが顔を見ていないのも、末っ子の蒼一郎だけだ。

山田船長と蒼一郎の取り合わせは、「ああ、オヤジと蒼一郎が一緒に釣りをしたら、こんな感じだったのかなあ」と思わせてくれる。

朝イチに山田船長、オレ、そして蒼一郎の三世代がそろって加平丸に乗り込んだ時点で、もうお腹いっぱい胸いっぱいだった。

だが、そのようなオレの心の機微などお構いなしに、目を鋭く光らせている男がいた。

言うまでもなく、沖藤編集長である。

ニャン集長は意図せずとも指令メールに鼻息が荒くなるのだ。

今回の釣行に先立ち、沖藤編集長からは「一つテンヤ、タイラバ、そしてスーパーライトジギングの3種でマダイを釣るように」との厳命が下っていた。

人には厳しく自分にも厳しく愛猫・茶子と奥さんには甘い沖藤ニャン集長なのである。

うーむ、難題だ・・・。

東京湾のマダイに対しては、「釣れるときには釣れるけど、釣れないときには釣れない」という「それ当たり前じゃない?」的な勝手な思い込みがある。

数年前の春、京急大津のいなの丸からタイラバに挑んだときのことが忘れられない。

取材初日は朝から夕方まで巻き倒して、まったくもってスカスカだった。

海の中が砂漠のように感じられた。

日を改めて臨んだ2日目の午後2時からの小1時間だけ、マダイが炸裂した。

砂漠に威勢のいい花火が上がったのである。

「釣れるときには釣れるけど、釣れないときには釣れない」。

イチかバチかの釣りになるだろうところにきて、「一つテンヤ、タイラバ、SLJの3種でマダイを漁獲せよ」との沖藤ニャン集長の厳命──つまりオレと蒼一郎で少なくとも3枚のマダイを釣れ、と言うのである。

 

やったろうじゃねえか!

オレは燃えた。

人からやれと言われたことは徹頭徹尾やりたくないオレであるが、「ま、お前には無理だろうけどな・・・」と付け加えられると「んなことない! ぜってぇやる!」と鼻息が荒くなるのだ。

沖藤ニャン集長からのメールには「ま、タカハシ親子には無理だろうけどな」とは書いていなかったが、行間の端々から「厳しいだろうけどな」「難しいだろうけどな」という含みがある・・・ようにオレには感じられた。

たぶん沖藤ニャン集長にそんな意図はまったくなかっただろう。

だがいいのだ。

オレが奮い立ったのだから。

やったるで!・・・なにを?

釣行前に釣り人ができることなんて、タックルの準備ぐらいしかない。

オレは久びさにリールに巻いてあったPEを新品に変更もしくは逆巻きをした。

そして、今まではタイラバと言えば「波動だろう波動、波動がなきゃ魚に気付いてもらえないんだから!」と派手な添え物一辺倒だったが、今回ばかりは繊細そうなネクタイを買った。

もちろんジグも買った。

蒼一郎からも多数の一つテンヤ購入支援要請が寄せられたので、彼も彼なりに燃えていたのだろう。

 

10月3日、我われ親子はスバルサンバーに(一つテンヤ用+タイラバ用+SLJ用)×2名分の計6系統のタックルを積み、意気揚々と内房・上総湊に乗り込んだ・・・のであるが、山田船長の風格にすっかり毒気を抜かれてしまった。

釣れるか釣れないかは、分からない。

でも、釣る前からこんなことを言っては負けだが、山田船長と蒼一郎とオレで海に出られるなら、もう釣れなくてもいいやと思えた。

こんな調子だから、オレはいつまでも釣りが上達しないのである。

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