「男の手料理」が大雑把だとか、逆に凝りすぎてお金も時間もかかって大変というのは昔の話。手間も時間もかけず、ごくごく庶民的な食材で、プロの料理人も唸るほど味も香りも極上の一品ができあがる。そんな調理テクニックがあると聞いたら、料理好きな男ならずとも思わず膝を乗り出すのではないか。

なんの変哲もないごく日常的な食材が驚くほど旨くなる、魔法のような調理法。それは「燻煙」である。今回の記事では自分でも簡単にできる燻製=スモークの方法や、一口たべれば思わずうなる、燻製におすすめの食材について解説していく。

意外な食品が燻製に合う! 自分で作る燻製の魅力

風味豊かな燻製つまみはアルコールの和洋を問わず、紹興酒やアブサンなどクセのある酒にも意外にハマる。

ベーコンやチーズという定番だけでなく、冷蔵庫の余りものも燻煙すれば、たちまち味と香りに深みが増す。多種多様なアルコールとの組み合わせを探ったり、意外な食材をいぶしてみたり、自分だけのオリジナルが見つけられるのは自宅で燻製を手作りする醍醐味といえるだろう。

燻製については以下の記事でもくわしく紹介しているので参考にしてほしい。
「男の豪快キャンプ料理。燻製のやり方と燻製つまみの作り方」
「〈燻製入門〉温度と時間、燻製方法の違いで変わる奥深さにハマる」

短時間でジューシーに「熱燻」

ジューシーな食感の燻製を食べたいのなら、80℃から140℃ほどの高温で一気にいぶす「熱燻」がいいだろう。

燻製方法はいたって簡単。スモークチップ(細かく砕いた燻製用の木片)を鍋やフライパンに入れてコンロで熱し食材をいぶす。所要時間は数十分から長くても1時間程度と見ていいだろう。熱燻する食材は、すでに火の通っているチキン、ベーコン、ナッツ、刺身など、そのままでも食せるものをいぶすと手軽だ。ただし保存がきかないので、その日のうちに味わい尽くしたい。

時間をかけてゆっくりいぶすので保存性が高まる「温燻」

「スモークウッド」というブロック型の木材を入れた燻製器を用い、30℃から60℃くらいの低温でじっくりと時間をかけて燻煙するのが「温燻」だ。

食材の水分がしっかり抜けていくから、保存食づくりにも向いている。塩漬けした豚バラ肉をスモークしてベーコンに仕上げるのも、この温燻が適している。またチーズや半熟卵など、高温でいぶすと溶けてしまったり硬くなったりする心配のある食材も、燻製するなら断然温燻がいい。

深みあるスモークの風味! 時間をかけていぶす「冷燻」

長期保存のきく食品づくりにもっとも適しているのが冷燻だ。数日間から、長ければ数週間もいぶしつづけるが、一切加熱しないので深みあるスモークの香りと味をしっかりまとわせられる。スモークサーモンや生ハムなどが、この冷燻の方法で作られている。

熱燻、温燻は燻製ビギナーにも比較的トライしやすいが、温燻よりさらに低い15℃~30度でいぶす「冷燻」は温度管理が非常に難しく、専用の大型燻製器なども必要となるため、プロの料理人か燻製上級者に任せたい。

(広告の後にも続きます)

自宅で気軽にトライできる燻製の基本的な作り方

燻製には、熱燻、温燻、冷燻という3種類の方法があることを伝えた。次は、実際に燻製を手作りする際の基本的な方法についてレクチャーしていきたい。

燻製に生の食材を用いるときには「味付け」が欠かせない

すでに味のついている塩蔵品や加工品を燻煙するときは、香ばしいスモークの香りをまとわせるだけで十分美味となるため、余計な味付けは一切不要だ。しかし、生の食材を用いるときには調味が燻煙のための重要な工程となる。

燻煙に欠かせない調味料はなんといっても「塩」。燻製の下処理として塩味をつけるのには次の二通りの方法がある。「振り塩」と「湿塩漬け」だ。

振り塩は、文字通り食材に塩を振る。ベーコンづくりの達人によれば、砂糖少々を混ぜた塩を豚バラ肉にすり込み、よく揉みこむことで肉本来の旨みを引き出せるのだという。

湿塩漬けは、食材を塩水に漬け込むやり方だ。塩と水を混ぜただけのシンプルな「ソミュール液」のほか、塩水にハーブやスパイス、ウォッカなどアルコール度数の高い酒などを加えた上で一度沸騰させ、冷ましてから使う「ピックル液」とがある。

ベーコンづくりのための豚バラ肉なら振り塩して一週間、ハムづくりのための豚もも肉、ロース肉なら10日間~2週間ピックル液に漬け込んで冷蔵庫でじっくり熟成させる。

しっかり塩分をしみこませ、塩抜き後乾燥する一手間で燻製は旨くな

燻煙の下処理としての振り塩の塩分濃度は食材の重量の1.5~3%、湿塩漬けの場合は5~20%とされる。

減塩はいかにもカラダによさそうなイメージではあるが、実は食材の旨みを引き出すには不十分だ。さらに極端に塩を少なくすると、肉などが傷みやすくなるということも覚えておきたい。

旨みを引き出すためだけでなく食材の腐敗を避けるためにも、多いかなと感じるくらいの塩でまずはしっかりと濃い味をつける。冷蔵庫に入れて1週間から2週間、じっくりと熟成させたあと、表面の塩をさっと水で洗い塩抜きしてから自然の風にあて乾燥させる。これを「風乾」と呼ぶ。この一手間で燻製はより旨みを増していく。

燻製はスモークウッドやスモークチップの種類で色や香りが変化する

食材を十分乾燥させたら、いよいよメイン工程の燻煙に入る。木片を細かく砕いたスモークチップや、ブロック形のスモークウッドに火をつけて燃やし、煙を立ちのぼらせ、その上で食材を存分にいぶすのだ。

スモーク材として代表的なものを3つ紹介する。それぞれの特性を知り、好みや食材によって使い分けよう。

「サクラ」
香りにパンチがあるので、ややクセの強い食材にもよく合う。魚介や羊肉にもおすすめ。

「リンゴ」
まろやかで甘い香りが特徴。鶏肉や白身魚など淡泊な食材に使いたい。

「ナラ」
ウイスキー樽にも使われる「オーク材」のこと。魚介類ととくに相性よし。燻製特有の「美しい飴色」をつけたいなら、ナラがイチオシだ。