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異常気象が数か月でトカゲを急速に進化させた

カラパイア

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photo by Pixabay

 アメリカ南部に分布するあざやかな緑が特徴的なグリーンアノール(別名:アメリカカメレオン)は摂氏10度より寒いのは苦手だ。

 このことはメキシコ湾岸や南東部州の亜熱帯地域では特に問題ではなかった。しかし2013-2014年の冬の異常気象に直面したグリーンアノールは、あまりの寒さに自然淘汰が起こり、進化によって寒さに強くなったという。

 『Science』誌上でシェーン・キャンベル=ステイトン(Shane Campbell-Staton)博士らが発表した。

グリーンアノールの耐寒性を調査


 個々の異常気象による自然選択の影響を調べた研究は比較的少ない。そのアイデアは2013年のグリーンアノールの耐寒性に関する論文で偶然着想された。

 数百万年前、このトカゲの祖先は現在のキューバからアメリカに移住してきたが、今日その子孫たちは合衆国南部の比較的寒い地域と似たような気温の場所でも暮らしている。ここからキャンベル=ステイトン博士は「グリーンアノールが北上して、寒い冬でも生存できた生理学的・遺伝学的プロセスは何か?」と疑問を抱いた。

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image credit:File:Anolis carolinensis aggression.jpg – Wikipedia


 そんな中、彼はボストングローブに掲載されていたアラバマ州のグリーンアノールの写真(リンク先の22番)を目にした。そのトカゲは雪の中に横たわり死にかけていた。

 すぐさまあるイベントへの反応としての自然選択というアイデアがひらめいた。そこで、すでに収集済みだった昨年夏来のグリーンアノールのデータを、厳冬を生き残ったトカゲのサンプルと比較してみることにした。

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image credit:Anolis carolinensis V – Carolina anole – Wikipedia

 今回の研究では南北約1,300キロの範囲にあるテキサス州4ヶ所(ブラウンズビル、ビクトリア、オースティン、アーリントン)とオクラホマ州1ヶ所(ホッジェン)における冬の前後のデータを比較している。

 いずれの都市でも過去15年で最も低い最低気温が記録されていた。この場所でデータを集めることにしたのは、そこに生息するグリーンアノールが密接に関連しながらも、耐寒性の点で有意な差異が見られたからだった。

 すなわち生息域が北に行くほど、寒さに対する抵抗力も強い傾向があったからである。グリーンアノールの耐寒性を計測するにあたっては、標本を容器に入れ、1分ごとに1度ずつ温度を下げた。標本は仰向けに入れられ、鉗子で突いては腹ばいに戻るように促した。そうできなくなった温度を「そのトカゲが凍死する状況から退避できない温度」、すなわち最低生存可能温度の近似として用いた。

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image credit:File:Anolelick.JPG – Wikipedia


アメリカのグリーンアノールは寒い場所でも生きられるよう進化した


 その冬、テキサス州南端のブラウンズビルのトカゲはほとんどの日を最低生存可能温度を下回る中で暮らした。

 2014年4月および7月にグリーンアノールの標本を再度収集してみると、生き残ったトカゲは他の5都市でも最大の耐寒性向上を見せ、その冬以前よりも1.5度低い温度に耐えられるようになっていた。そこから420キロ北にあるビクトリアのグリーンアノールは1度寒さに強くなっていた。それ以外の都市では特に耐寒性の向上は観察されなかった。

 これはすでにある程度の耐寒性を身につけていたことが原因だと考えられる。つまりブラウンズビルとビクトリアの生き残りは、耐寒性の点で他の都市のトカゲに収束したということだ。

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image credit:File:Carolina Anole in Territorial Fight – Wikipedia

 こうした変化は表現型(外部から観察可能な行動)のみならず、遺伝子レベルでも裏付けられる。生き残ったトカゲの遺伝子発現とゲノム配列は冬の後に発散し、北部グループとの類似が増え、体内のゲノム内では分化が増えていた。

 キャンベル=ステイトン博士によると、冬の間の選択圧にさらされた遺伝子はいずれも神経系機能に関するものらしく、神経伝達物質の伝達と途絶に関連する遺伝子を含むゲノムの一部で最も大きな分化が起きていたという。

 キャンベル=ステイトン博士の直感は鋭敏かつ予見的だった。仮に異常気象がグリーンアノールの温度に対する弾力性を向上させたのなら、それはほぼ間違いなく代償をも伴うものだ。

 厳冬を生き残れなかった個体は、熱波や干ばつに強い遺伝的変異を持っていた可能性があるからだ。

 しかし、その血統は死に絶えてしまったかもしれない。今後、異常気象はさらに増え、かつ過酷なものになると予測される。それは比較的数が多いグリーンアノールよりも脆弱な種を危険にさらすことだろう。気候の変動が生物多様性に与える影響の理解はまだ始まったばかりだ。


via:harvardmagazine / iflscienceなど/ translated by hiroching / edited by parumo

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