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「鳥獣戯画」の作者は複数いた!

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カラー版 鳥獣戯画の世界(宝島社)<amazonで購入>

 13日(2021年4月)から東京・上野の東京国立博物館で、特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」が始まった。全4巻の全場面を一挙に鑑賞できる、またとない機会だ。これに合わせるかのように刊行されたのが、本書『カラー版 鳥獣戯画の世界』(宝島社新書)だ。いつ描かれたのか、誰が描いたのかなど、多くの謎に包まれている「鳥獣戯画」の秘密に迫っている。

 監修者の上野憲示さんは、東京大学文学部美術史学科卒。文星芸術大学理事長・名誉学長で芸術理論専攻教授。「鳥獣戯画」甲巻の復原に関する論文のほか、『世界に誇る日本美術史』(徳間書店)などの著書がある。

 平安~鎌倉時代の国宝絵巻「鳥獣戯画」(京都・高山寺蔵)は、甲乙丙丁の4巻で構成され、合わせると44メートル超になる長大作品だ。動物たちが追いかけっこや相撲などをして戯れる場面で知られるが、いつ制作されたのか、誰が描いたのか、何のために制作されたのかが不明のままである。

 2009年から4年かけて、貼りつないだ料紙を解体しての大修理が行われた。修復後、お披露目の展覧会が京都、東京、福岡、大阪で開かれ、多くの来場者を集めた。

 本書は冒頭に、最も評価の高い甲巻の全23紙を掲載、一部を拡大しており、動物たちの表情にも間近に触れることが出来る。

いつ、誰が描いたのか不明の「鳥獣戯画」

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 その上で、これまでの研究成果や監修者の上野憲示さんの論文などを踏まえて、「鳥獣戯画」の謎、時代、作者、動物たちを説明する構成になっている。

 まず、いつ描かれたのかについて。白河上皇、後白河上皇らが活躍した院政期には、多くの絵巻が制作されたことが参考になる、としている。なかでも後白河上皇の命で制作された「年中行事絵巻」は、図柄が「鳥獣戯画」甲巻や乙巻と酷似する点が多く、制作年代は同時期と考えられるという。そこから、甲巻や乙巻は12世紀後半に制作されたと推定している。

 丙巻は甲巻へのオマージュが見られることから、時代が下がり、12世紀末期か鎌倉時代初期、丁巻は鎌倉時代の制作と見ている。

 誰が描いたのかという最大の謎に関しては、「年中行事絵巻」との絵柄の類似から作者を宮廷絵師とする説、もう一つは密教絵画における白描画の伝統や動物表現の酷似から絵仏師であるとする説が存在することを紹介。

 最も有名で評価の高い甲巻は、前半と後半で作者が異なり、しかも前半の筆致が後半に比べて劣ることから、前半はアマチュアの絵師、後半はプロの絵師(たとえば宮廷絵師)によるものと推測している。その上で、全体としては少なくとも5人の絵師が作者として浮上する、としている。

絵師の手遊びで描かれた?

 何のために描いたのかという疑問については、使用されている料紙が全体に未加工で、絵巻物制作には向かない紙に描かれている、という平成の大修理の知見から、「絵師の手遊びとして描かれた可能性が高い。練習用に描いた絵が思いのほかうまくできたので、最後まで完成させたといったところだろう」と推理している。

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