「沢尻エリカが持つ、どこかで爆発する野蛮な感じが欲しかった」犬童一心監督インタビュー
「沢尻エリカが持つ、どこかで爆発する野蛮な感じが欲しかった」犬童一心監督インタビュー
沢尻エリカ演じる地方のスーパーで働く元アイドルの沙織と、吉沢亮扮する自分を人と思い込んだロシアンブルーの猫・良男との不思議な交流を描いた映画『猫は抱くもの』。メガホンを取ったのは、『ジョゼと虎と魚たち』『グーグーだって猫である』など繊細な心の機微をスクリーンに映し出す名匠、犬童一心監督。「好きなことを抑えることなく自由につくった」という本作について話を訊いた。
「脚本が出来て、さぁどういう演出でやろうってなった時に、僕や一緒にやってきたスタッフたちの経験から、この映画を今までと同じ手法で撮るのは、なんとなくつまらないなっていうのがあって。猫を擬人化するっていうのは決まっていたので、虚構性をハッキリさせて映画自体のビジュアルに特徴がある方が、僕も撮っていて面白いし、観た人も飽きずに新鮮なんじゃないかと考えていました」

そんな時、監督の恩師でもある市川準の監督作『トニー滝谷』を観たことで、演出のヒントを得られたという。

「『トニー滝谷』で、横浜の風景が見える長い壁のセットをたてて、そこに少年時代をずっと見せていくんですよ。映画にマッチしているから、絵の虚構性がすごく高いのに、アヴァンギャルドな手法に見えずとても自然で。こういうやり方が出来ないか、劇場の中に美術セットを持ち込んで映画として撮影していくのはどうかなと思ったのがきっかけでした。でもそれを初めてプロデューサーに言ったら、それってどういう感じ?って理解されなくて(笑)」

人と猫それぞれの視点を加えて、舞台の書き割りのような場面展開や手書き風のアニメーションなど、様々な手法が織り混ざった今作。妄想好きの主人公・沙織の願望の世界なのか、はたまたリアルな出来事なのか。観るものを虚と実の間で心地よく揺さぶりながら幻想的な世界観で物語は展開していく。

「僕の中に不安はなかったのですが、俳優もスタッフも初めての経験なので、これは次どうなるんだろう?と想像がつかない。その状態がすごく重要というか。新鮮な気持ちで挑む以外方法がなくて、やり始めてみないと僕が何をやろうとしているのか全然理解出来ないという状態から始めるという。その不安さが映画には良く作用するんです」

そんな監督は、元アイドルの沙織を演じた沢尻エリカに対して、ある特別な思いがあったそう。

「初めて『へルタースケルター』を観た時、感動したんです。これは今まで誰にも言っていないんですが、(原作者の)岡崎京子さんとは昔からよく会っていた人で、彼女の作品の中で唯一映画にしたいと思っていたものが『へルタースケルター』だったんです。そして、主人公のりりこ役は、絶対沢尻エリカがいいって思っていたんですよ。そしたら、“今、沢尻エリカ主演で撮影してるよ”って聞いて。“ちくしょう!”って思いながら映画を観たのですが、本当に彼女が演じてよかったなって。その感動を日本アカデミー賞で一緒になった時に告げにいって、その時から何か機会があれば彼女に出演してもらおうと決めていました」

そんな熱い思いを受けた沢尻は、本作のオファーをすぐに快諾。がむしゃらに夢を追いかけるうち自分を見失い、過去を受け入れることで、未来への光を見いだしていく沙織を熱演している。

「沙織が元アイドルという設定は原作にはないのですが、主人公がスーパーの店員として登場した時点で、華やかなところから今は自分のいたくないところに仕方なくいる女性であることが自然に想像出来るので、その設定にしました。沢尻さんがやらなさそうな地味な役なんだけど、どんどん自分や時間から抜け出していって、どこかで爆発する野蛮な感じ。それが彼女だったら出来るなって思ったので。計算外のエネルギーみたいなテンション、それが映画を面白くしてくれるんです」

映画『猫は抱くもの』は全国順次公開。
(更新日:2018年7月4日)

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