“残業代ゼロ法案”の罠…荻原博子指摘する「安倍政権」の改悪
“残業代ゼロ法案”の罠…荻原博子指摘する「安倍政権」の改悪
「働き方改革関連法案」が5月31日、衆議院で可決された。「労働者にとってたいへん危険な内容を含んだ法案ですから、もっとしっかり議論して、国民が納得してから採決してほしかった。腹立たしい思いでいっぱいです」と語るのは、経済
「働き方改革関連法案」が5月31日、衆議院で可決された。「労働者にとってたいへん危険な内容を含んだ法案ですから、もっとしっかり議論して、国民が納得してから採決してほしかった。腹立たしい思いでいっぱいです」と語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。荻原さんはほかにも、安倍内閣には異議を唱えたい施策がたくさんあるという。

そこで、私たちの生活に関りの深い施策について、荻原さんが問題点を指摘!

【働き方改革関連法案・高度プロフェッショナル制度】

働き方改革関連法案は、労働に関する法律を8本まとめて審議しています。

その中には、長時間労働をなくすために、罰則付きで残業時間を制限する「残業の上限規則」や、正社員と非正規社員の待遇の差をなくす、「同一労働同一賃金」など、労働者にメリットのありそうな法案もあります。

しかし、いっぽうで労働者にはデメリットの大きい「高度プロフェッショナル制度(以下・高プロ)」も含まれ、これが大問題なのです。

高プロは、時間ではなく成果で給料を決める制度です。そのため“1日8時間労働”などの労働時間の制約をはずします。休日は4週間のうち、わずか4日間でよく、残りの24日間は休憩もなく“24時間働かせ放題”が可能です。

これは過労死につながる危険な働き方として、野党が追及していますし、私も断固反対です。『朝日新聞』の世論調査でも、6割の方が「働き方改革関連法案を今国会で成立させる必要はない」と答えました(5月19・20日実施)。

また、労働時間の制約がないということは、どれだけ働いても残業にならないということ。当然、残業代は支払われず、「残業代ゼロ法案」とも呼ばれています。

高プロの対象は、年収1,075万円以上で、金融アナリストなどの専門職に限られます。「そんな高給取り限定なら、自分とは関係ない」と思う方もいるでしょう。そこに、この法案の“からくり”が隠されています。

まず、法案のどこにも「1,075万円以上」とは書かれていません。あるのは、「平均給与の3倍を相当程度上回る額」という記載だけ。

平均給与とは、厚生労働省が毎月調べる月給の平均値で、直近では26万3,976円でした(’18年3月)。この3倍は約79万2,000円。年収にすると約950万円です。1,075万円との125万円の差が「相当程度上回る額」に当たるようです。

また、この「相当程度上回る額」は厚生労働省が省令で定めるものですから、あるときから「1円に変える」ことも考えられます。そうなると、高プロの対象は年収950万円以上となるかもしれません。

問題は、省令の変更には国会の審議が要らないことです。私たちが知らない間に、対象を広げることもできるのです。

かつて経団連は、「年収400万円以上のホワイトカラーの労働者には、労働時間の制約をはずせ」と要請していました(’05年)。安倍首相は5月23日、過労死した労働者の遺族たちでつくる「全国過労死を考える家族の会」の面会希望は断っても、同じ日の夜に、経団連の御手洗冨士夫名誉会長らと会食するほど、経営者側と親密です。

法律がいったん成立すれば、あとはなし崩し的に、省令の変更や法改正を重ね、最終的には経団連の想定どおり、国民の平均年収422万円を下回る水準まで、高プロの対象を広げたいという思惑があるのかもしれないのです。

次に、対象となる職種も、省令で変更できますから、徐々に増えていくのではと心配しています。

これは、’86年に、通訳など13の専門職を対象として施行された「労働者派遣法」が、対象業種を省令の変更で徐々に増やし、法改正も経て、今や“誰でも派遣”となったことからも想像できます。高プロが派遣法の二の舞いになったら、労働者は朝から晩まで休みなく働かされ、社会全体が「ブラック」化する危機に直面するかもしれません。
(更新日:2018年6月12日)

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