『半分、青い。』とユーミンと 
『半分、青い。』とユーミンと 
みなさんはNHK連続テレビ小説『半分、青い。』はご覧になっているでしょうか。主人公達が青春時代をおくるのが80年代ということもあり、劇中には、当時の音楽がたくさん流れています。なかでも重要なのがユーミンで、様々な場面に登 […]

みなさんはNHK連続テレビ小説『半分、青い。』はご覧になっているでしょうか。主人公達が青春時代をおくるのが80年代ということもあり、劇中には、当時の音楽がたくさん流れています。なかでも重要なのがユーミンで、様々な場面に登場します。

わたしは初回から録画しておりますが、まず4月16日放送の13話。ラジカセから流れる「リフレインが叫んでる」が、そのシーンにおけるキメ台詞の代わりを果たしていました。4月18日の15話では、「守ってあげたい」が世間に浸透し、折あらば生活の中で口をついて出てくるものだということが、よく分かる演出でした。5月23日の45話では、「ANNIVERSARY」も登場。ただ、ちょっとギャグっぽい使われ方にも思えたので、ぷっと吹きだしてしまい、しかしこれは名曲。若干、良心の呵責に苛まれたものです(もちろん関係各位、了解済みなんでしょうけど)。

さらにさらに5月28日の49話にいたっては、主人公・楡野鈴愛が働くマンガ・スタジオのアシスタント仲間である藤堂誠(通称・ボクテ)が、「十四番目の月」を熱唱するシーンもあった! 実はこの歌、我々の生活に、多大な影響を与えたのでした。「うぁ〜、見て! 満月だぁ」「え? でも、“十四番目…”くらいじゃないの?」…。まぁるい月をみると、アバウトに満月と言っていたのが、この歌以降、このように変わったのです。

さて、今回は1975年頃のユーミンなのですが、世間一般に言われる“ブレイクを果たした年”です。同じレコード会社の縁もあり、また、ともに松任谷正隆さんが音作りを担っていたこともあって、ハイ・ファイ・セットに「卒業写真」を提供し、また、自身の歌う「ルージュの伝言」がスマッシュ・ヒットします。

この歌は、さまざまに解釈するヒトがいるようです。もともとポップなロックンロ−ルなので、感覚的に捉えればいいんだと思うのですが、歌詞がある以上、“解釈”も生まれるわけです。

なぜ主人公は家を飛び出したのか…。男性の聴き手はル−ジュ=口紅に、自分自身もやましい想い出があるからなのか、相手の浮気の決定的な証拠をつかんで飛び出した、みたいな、ドロドロ系の連想もするようです。いっぽう、主人公の純真さが、相手の[浮気な恋](といっても些細なこと)をオオゴトにしちゃって、このような行動に出た、という、比較的ライトな解釈も存在します。ちょっとダーリンはマザコンぎみ。その弱点を攻めるため、彼のママを味方につける作戦に出た、的な…。

筆者がこの歌で一番印象深いのは、歌詞でいえば[もう気づくころよ]です。この歌が映画なら、左右が二画面になってて、列車で移動する主人公と、帰宅して“ルージュの伝言”を発見するダーリンとが、同時進行で映されます。帰宅してすぐ目につくダイニング・テーブルに置き手紙だと、列車に乗る前に相手が追いかけてくる可能性がある。しかバスルームなら、時間が稼げます。

時間が稼げて、しかし確実に目につく場所がそこだったわけです。おそらくユーミンは、作家として、二画面&時間差という、この手法を試してみたかったのではないでしょうか。

「卒業写真」にしろ、バンバンに提供し、同じ時期にヒットした「いちご白書をもう一度」にしろ、アーティストとしてだけじゃなく、作曲家としてもブレイクできたことは、大きな手応えだったのではないでしょうか。ちなみに「いちご白書〜」は、本来なら、革命だーとか歌っていた70年代前後に勢いあった問題意識ぶりぶりのシンガー・ソング・ライター達こそが“落とし前”として書くべき世界観の歌とも言えました。でも、みんな書かなかったので、代わりにユーミンが“書いてあげた”歌にも思えるのです。

この年の2月にスタートした彼女のツアーは9月まで続き、ツアー中の6月に、アルバム『COBALT HOUR』をリリースします。でも今、ツアーと書きましたが、まだこの言葉はなくて、当時はコンサートを「リサイタル」と呼んでいたのですが…。そして10月には、チャートの1位を獲得する「あの日に帰りたい」が生まれ、彼女は“ブーム”のようになっていくのでした。

モノクロの『ミスリム』と極彩色の『COBALT HOUR』みたいなことは、今でもよく言われます。モノクロ好きな人達は、ユーミンが派手派手になっちゃったことに違和感を覚えたようで、そもそもデビュー当時、深夜放送がきっかけで盛り上がった支持層は、ここでいったん、彼女の元を離れていきます。ちなみに、当時の深夜放送のファンが、いかに初期のユーミンを愛していたかは、『1974年のサマ−クリスマス 林美雄とパックインミュ−ジックの時代』(柳澤健・著 集英社)という本を読むとわかります。

『COBALT HOUR』は、彼女自身にとって、どんな位置づけのアルバムだったのでしょうか。かつて僕が取材させて頂いた記事から、引用させていただきます。

このアルバムのタイトルを考えている時、“SURF
&SNOW”とか“HOLIDAY IN MUSIC”とかって
言葉は、すでに出てきてた。結局タイトルは『CO
 BALT HOUR』になったけど、実はリゾート・ア
ルバムの走りなんです、これが
(『月刊カドカワ』 1993年1月号)

つまり彼女自身が変わってしまったのではなく、アルバム作りのコンセプトを変えた、というだけのことだったのでしょう。もちろん、「じゃあ彼女の言ってる“リゾート”ってなんなのさー」という話にもなるのですが、これを書き始めると長くなりそうです。

ここでは、「自分のココロが何遍でも通いたくなる場所」、みたいなことにしておきます。この解釈なら、「花紀行」や「アフリカへ行きたい」のみならず、「卒業写真」や「雨のステイション」も、リッパな“リゾート・ミュ−ジック”としてカテゴライズできます(ぜんぜん関係ないけど、星野リゾートが大塚に開業したことも説明つくかもしれません)。 

当初は作曲家志望で、歌手としての意識は希薄だったというユーミンですが、プロとしての意識も芽生えていったのがこの時期です。ステキなエピソ−ドを伺ったことがあるので、最後に紹介させてください。

ある日、友達と遊園地で乗り物の列に並んでいたら、近くの列のヒトから、サインを求められたそうなのです。その時、「自分が書いたり歌ったりしたものは、手元を離れるんだなぁって、不思議な感じがした」といいます(発言の引用元は、さきほどと同じ)。

この話、何年経っても覚えているのです。遊園地で乗り物の列に並んでいたら、という、このシチュエーションが好きなのです。

文 / 小貫信昭 写真提供 / EMI Records

リリース情報

荒井由実
『COBALT HOUR』

TOCT-10713 ¥2,571 (税込)
ユニバーサルミュージック合同会社

01.COBALT HOUR
02.卒業写真
03.花紀行
04.何もきかないで
05.ルージュの伝言
06.航海日誌
07.CHINESE SOUP
08.少しだけ片想い
09.雨のステイション
10.アフリカへ行きたい
*オリジナル発売日:1975年6月20日

UNIVERSAL MUSIC STORE
https://store.universal-music.co.jp/product/toct10713/

オフィシャルサイト
https://yuming.co.jp

その他の(荒井由実)松任谷由実の作品はこちらへ

『半分、青い。』とユーミンと は、【es】エンタメステーションへ。

(更新日:2018年6月10日)

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