JT(日本たばこ産業)のCMは、なぜ「たばこ」そのものを宣伝しないのだろう――?
愛煙家の筆者は、そんな素朴な疑問を常々感じていた。
たとえば、現在放映中のテレビCM「想うた」(おもうた)シリーズ。
ダンスロックバンド・DISH//のボーカル兼ギターの北村匠海さん演じる主人公と、その周りの人々にまつわる、ドラマ仕立ての映像だ。
同期入社のサラリーマンが切磋琢磨するシーンや夫婦の日常の暮らしが描かれている。しかし、そこには、たばこが1本も映っていない(電子タバコでさえも…)。

「想うた」シリーズ第6弾。描いたのは「夫婦」(提供:JT)
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かつては、たばこを吸う姿を映したCMがテレビで流れていたのに…。
一体、なぜなのか。
Jタウンネット編集部では、たばこ産業史を専門とする学芸員に、話を聞いてみた。
キーワードは「自主規制」
「昔は、成人男性の多くが喫煙者だった」
そう言われて、頷く人も多いことだろう。
1965年、JTの前身である日本専売公社が始めた「全国たばこ喫煙者率調査」によると、このころの成人男性の平均喫煙率は80パーセント台。10人中8人は習慣的にたばこを吸っていた。