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番組出演者に「卒業」を伝える時 影山貴彦のウエストサイドTV【23】

テレビドガッチ


長らく放送されてきた番組が終わったり、新番組が始まったり、リニューアルに伴い、出演者の入れ替えが発表される時期になりました。業界用語で「改編」と呼ばれますが、番組が大きく変わるのが、春と秋。テレビ各局も、今一番バタバタと忙しくしている時でもあります。
 
新番組をスタートさせたり、新たにタレントさんを起用する仕事は、大変ですが、基本的に「嬉しい」場合がほとんどですから、演者さんのみならず、お願いする作り手のみなさんの心も弾むものです。一方、番組プロデューサーにとって、その逆は辛いものです。すなわち、番組の終了やリニューアルに伴い、出演者のみなさんに「卒業」を伝えなければならない仕事です。

ボク自身、放送局で働いていた頃、先輩からこう教えられました。「プロデューサーとしての力が問われるのは、キャスティングの時やない。番組を辞めてもらう際、どう伝えるかや。そこでプロデューサーの力が伸びるんやで。逃げるなよ!」

当時20代の駆け出しのディレクターでしたが、ボクは先輩の言葉をずっと心にとどめていました。やがて、ある帯番組のプロデューサーとなり、出演者の全てを総替えしなければならない時がやってきました。30代半ばだった頃です。

可能な限り、出演者ひとりひとりと会って「卒業」を伝えました。放送局の会議室で話した人、喫茶店で待ち合わせた人、お酒を飲みながら、というケースもありましたが、番組のスタッフを伴わず、ボクひとりで会うように心掛けました。こちらが複数で対峙するのは、どことなくズルいような気がしたのです。

関西という土壌もきっとあるのでしょう。情のこもった、人と人の直接のコミュニケーションをとびきり大事にする文化は、放送の世界でも当てはまると思います。

幸い、みんな笑顔で納得してくれました。もちろん内心怒り心頭だった人もいたはずです。また、今は令和の時代、ましてやコロナ社会の真っただ中です。かつてのボクのようなスタイルで「卒業」の知らせをしている作り手は、もはや少数派かもしれません。

ただ、時代がどう変化しても大切にしなければならないこともあるはずです。還暦カウントダウンを迎えた、出来の悪かった元プロデューサーの戯言ではありますが、作り手のみなさんにおかれましては、そんな「情」も意識して欲しいと願っているところです。了

執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など

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