top_line

【new】エンタメウィークをアプリで読もう

レジェンド級打者へ。弱冠20歳の村上宗隆がトップに セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2020年編~

ベースボールチャンネル

レジェンド級打者へ。弱冠20歳の村上宗隆がトップに セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2020年編~

 本企画はNPB過去年度の打撃ベスト10を眺め、往事の野球を今の視点から振り返り楽しんでもらおうというものだ。ただベスト10は従来の打率ではなく、セイバーメトリクスにおける総合打撃指標wRAA(※1)を採用する。これはリーグ平均レベルの打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標だ。この視点で振り返ることで、実は過小評価されていた打者がわかるということもあるかもしれない。
 

今シーズンのプロ野球はDAZNで!いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中!

 
 戦後シーズンから連載を続けてきた本企画であるが、今回ようやく2020年まで到達し、一区切りを迎える。
 

2020年のパ・リーグ

チーム    試合 勝率 得点 失点 得失点
ソフトバンク 120 .635 531 389  142
ロッテ    120 .513 461 479  -18
西武     120 .500 479 543  -64
楽天     120 .491 557 522  35
日本ハム   120 .461 493 528  -35
オリックス  120 .398 442 502  -60
 

 
 負傷から復活し、シーズンを通して出場した柳田悠岐(ソフトバンク)がまたしても圧倒的なwRAA58.5をマーク。5回目の首位となった。打撃三冠には縁がなかったため目立たないが、wRAAのほかにも1打席あたりの得点貢献を表すwOBA(※3).453、長打率.623でリーグをリードしている。過去、打撃3部門が無冠となった打者で最高の数値は2002年のペタジーニの61.2だが、この時の試合数は140試合であった。2020年が120試合制で行われたことを考慮すると、この年の柳田は史上最高の無冠の帝王と呼べるかもしれない。また柳田の最高長打率は5回目だが、これはパ・リーグでは中西太に並ぶ歴代最多となっている。
 
 ちなみに柳田のwRAAが最も良かったシーズン5年を合計すると、値は298.3となる。この合計値はNPB史上で王貞治・長嶋茂雄・落合博満・松井秀喜に次ぐ5番手の数字となっている。ちなみに落合・松井とは僅差であるため、この部門でONに次ぐ歴代3位の座が現実味を帯びてきた。2021年終了時点で3位となる可能性も十二分にありそうだ。
 
 2位には近年wRAAが高止まりしている浅村栄斗(楽天)がランクイン。32本で本塁打王を獲得した。かつてはどちらかというと出塁力に問題を抱えていたが、この年は自身初となる4割超えの出塁率も記録。打者としての弱みが消えた印象だ。前年ランキング首位の吉田正尚(オリックス)は、打率.350で首位打者を獲得して3位に入っている。
 
 4位と5位には近藤健介・西川遥輝の日本ハム勢がランクイン。このうち近藤は出塁率.465で最高出塁率を獲得している。2015年から4年間最高出塁率と最高長打率を独占した柳田が完調のシーズンだっただけに、近藤がこのタイトルを獲得した意義は深い。同じく日本ハムからは前半戦好調で108打点で打点王を獲得した中田翔が9位に。10位山川穂高は打率.205ながら、出塁率を.357まで伸ばしたことがランキング入りに効いた。この低打率でのランク入りは前例はあるものの、かなりのレアケースである。
 
 ベスト10圏外の注目選手には楽天の茂木栄五郎を挙げる。2020年の楽天はステフェン・ロメロも加入し優れた長打力を見せると予想していた。そんな中、茂木は出塁型の打撃成績でチームに貢献。楽天は長打率.401だけでなく、出塁率.341でもリーグ1位となり、NPBで最多の557得点を記録した。茂木は規定打席に不足していたものの、wRAAは16.7を記録。8位のコーリー・スパンジェンバーグ(西武)の14.3を上回っている。
 
 柳田がリーグ全体を圧倒する構図の中で、2021年以後にほかの打者に巻き返しがあるのか注目である。
 

2020年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
読売   120 .598 532 421  111
阪神   120 .531 494 460  34
中日   120 .522 429 489  -60
DeNA   120 .491 516 474  42
広島   120 .481 523 529  -6
ヤクルト 120 .373 468 589  -121
 

 
 前年にブレイクを果たした村上宗隆(ヤクルト)が初のリーグトップとなった。村上はwOBA.429、出塁率.427、長打率.585でリーグをリードし、高卒3年目のシーズンにして文句なしで最強打者の座に就いた。
 
 高卒3年目でwRAAリーグトップとなるのは、NPBの歴史レベルで見ても極めて珍しく、非常に難易度の高い記録である。高卒3年目のシーズンまでにwRAAリーグ1位を達成したのは、川上哲治・中西太・張本勲・イチローに続き村上が史上5人目。過去の達成者の実績を見れば歴史的な強打者の誕生かというところだ。将棋の世界では中学生でプロになれば、例外なく後年の大棋士になっていることが知られているが、村上はまさしくそのような存在である。ちなみにここで述べた4人は中西を除き初めて1位を獲得した翌年も1位。中西も翌年に本塁打王と最高長打率は獲得している。NPBのレジェンドとなれる器なのか、2021年シーズンは村上にとって分水嶺の1年になりそうだ。
 
 2位には鈴木誠也(広島)が出塁率と長打率を高レベルで両立させてのランクイン。これで4位以上のポジションが5年連続となり、完全に常連となった感がある。またベテランの青木宣親(ヤクルト)が好成績を収め、3位にランクイン。.424を記録した出塁率が高いのは例年通りだが、長打率.557は38歳のシーズンにして自己ベストとなった。打率.328で初の首位打者となった佐野恵太(DeNA)は5位に初ランクイン。31本97打点で二冠王となった岡本和真(読売)が7位に。こちらは3年連続でベスト10入りとなっている。
 
 この年のセ・リーグは、外国人枠選手のランクインがジェリー・サンズ(阪神)の1人のみ。これは過去10年のセ・リーグでは2度目のこととなっている。新型肺炎の影響がいまだ大きい中、各球団のフロントが2021年シーズンに必要な選手を確保できるのかが気がかりである。
 
 ベスト10圏外の注目選手はタイラー・オースティン(DeNA)。269打席で20本とタイトルを獲得した岡本を上回るペースで本塁打を量産したほか、長打率.605は村上の数字を上回っており、ボールをコンタクトできた時の破壊力は出色のものがある。MLBでは変化球に対処できず出場機会に恵まれなかったようだが、通算583打席で33本塁打を放っており、マイナー時代よりも本塁打率は良好だったという少々変わった打者である。
 
 オースティンのMLB時代の成績を見ると、ボールに当てる確率が極端に低いため、何か明確な弱点があるのではないかと予想している。日本野球にアジャストできるかどうかは、他球団がその弱点にどれだけ早い段階で気付けるか、そして実行できるかにかかっているではないだろうか。明確な弱点が露呈すれば結論はわりと早く出ると思われるだけに、結果に注目している。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
 
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 
年度別一覧に戻る

TOPICS

ランキング(スポーツ)

ジャンル