舞台版の良さを生かしつつ、追求した映画ならではの表現
城定秀夫[監督]、小野莉奈、中村守里 インタビュー第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞に輝いた戯曲を、小誌星取評でもおなじみの城定秀夫監督が映画化した「アルプススタンドのはしの方」は、昨年公開されるやいなや幅広い年齢層から反響を呼び、第12回TAMA映画賞特別賞、第42回ヨコハマ映画祭監督賞など複数の映画賞も受賞。そんな、昨年最も愛された青春映画の一つである本作のBD発売を記念し、城定監督、小野莉奈さん、中村守里さんにお話を伺った。

映画として作品を残せるという歓び
城定 この作品、もともと高校演劇版を舞台(浅草演劇版)にする企画を進めていくうちに「映画もやってみようか?」というところから僕が相談を受けまして、お引き受けした頃には既にキャストは決まっていました。
小野 でも私たちは、舞台千秋楽のときに初めて映画化の話を聞かされたんですよ!?
中村 もう本当にびっくりでした! どうして話が通ってなかったんでしょうか?
城定 サプライズだったのかな?(笑)もっとも、僕もずっとキャストのみんなは知ってるとばかり思いこんでたんだけど。
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小野 でもそれまでずっと一緒にやってきたメンバーと、また別の形で作品を残せるという歓びがありました。舞台をやってるとき、私たちは作品自体は見られないわけなので、映画として作品を残せて、自分たちの演技を見直すこともできるのは良い機会だなとも。
中村 舞台と違って映画は本当の場所での撮影になるので、そこもすごく大事だと思いました。球場だと目の前でやってなくても試合の状況を想像しやすいし、その場に立ってみるといろいろ思い浮かべられるものなんだなと。また私が演じた宮下は、舞台版にはなかった吹奏楽部部員3名との直接の絡みのシーンなどもあったので、実際の方々がいらっしゃることで「あ、みんな私が思っていたよりも怖い!」とか(笑)、イメージがつきやすかったです。
小野 逆に私が演じたあすはは吹奏楽の子たちとの絡みが全くなかったので、舞台と映画とでさほどお芝居的な違いはなかったのですが、ただやはり空間は大きく影響したというか、球場の応援席にはエキストラの方々がいて、空は大きく広がって……などと、あすはたちが体感していることを私たちもじかに味わいながらお芝居することができましたね。
城定 彼女たちは舞台の稽古の頃からずっと役を演じてきていますので、僕はそれを映画の芝居にどう転換するかをメインに指導していきました。ただ、舞台芝居から映像芝居に代えたらどうなるかを一回稽古してみたら、ちょっと見ただけでこれは問題ないなと。
