今回のドラマ「アンナチュラル」主題歌としてリリースされた「Lemon」も、そんなかつての恋人に思いを馳せた歌詞になっています。
米津玄師の「Lemon」
みなさんは、別れた相手のことを思い出すことがありますか?また、それはどんな思い出でしょう?
相手との楽しかったことしか思い出さないよ、という健全な人もいるとは思いますが、なかには、つらいことや思い出したくないことまで思い出してしまって、わーっと頭をかきむしりたくなる、そんな人もいるのではないでしょうか。
「夢ならばどれほどよかったでしょう」という歌詞が、いまだに受け入れられないような辛い過去があったことを示してます。
その過去は、何年も経った今でも、夢に見てしまうぐらい彼の記憶に鮮烈に残っているのです。
「あなたは私の光」
思い出したくもないのに、思い出してしまう過去。
でもそれは、それだけ自分が相手を愛していたという事実に他なりません。
ですが、「夢ならばどれほどよかった」かと思うような思い出も、もう夢でしか見ることができない、過去になってしまっているのです。
もう戻れない過去、思い出だけがいつまでもそこにあって、なくなることがないから始末が悪いんですよね。
辛いことがあったとき、過去を思い出して、思い出にすがってしまう。
そうして、「あなた」の存在に助けられている自分がいる。今でもなお、「あなたは私の光」なのです。
酸っぱくて苦い過去の思い出を表現
では、果たして自分は相手にも同じことを望んでいるのでしょうか。
自分のことを思い出して、泣いてほしいと。
思い出にすがるからこそ分かることは、こんな辛い思いは、相手にはしてほしくないということ。
そんな思いをしないでいいように、自分のことなど忘れてほしい。
自分は思い出にすがって散々泣いているのに、相手にはそうなってほしくない。
それほど、相手のことを大事に思っているのが伝わってくる歌詞ですね。
胸に残る、酸っぱくて苦いレモンの匂い。苦い過去を例えるのに、これほどぴったりなものはないでしょう。
ひとりの人を懸命に愛したからこそ残る、たくさんの思い出。
それらを抱えて生きるひとたちに寄り添った曲として、この「Lemon」があります。
TEXT:遠居ひとみ