『ヴァレリアン』原作翻訳者・原正人「リュック・ベッソン監督の気負い過ぎた感が魅力増し」
『ヴァレリアン』原作翻訳者・原正人「リュック・ベッソン監督の気負い過ぎた感が魅力増し」
『レオン』で知られるヒットメーカー、リュック・ベッソン監督が名作SFコミックを映画化した『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』。28世紀の宇宙を舞台に、あらゆる種族が共存する宇宙ステーションの危機を救おうとするエージェント、ヴァレリアンの活躍を描いている。原作は、1967年に出版され、全23巻におよぶフランスの人気コミック。そこで今回は、2018年2月に発刊された日本語版で翻訳を担当した、原正人さんに『ヴァレリアン』の魅力について話を訊いた。
『レオン』で知られるヒットメーカー、リュック・ベッソン監督が名作SFコミックを映画化した『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』。28世紀の宇宙を舞台に、あらゆる種族が共存する宇宙ステーションの危機を救おうとするエージェント、ヴァレリアンの活躍を描いている。

原作は、1967年に出版され、全23巻におよぶフランスの人気コミック。そこで今回は、2018年2月に発刊された日本語版で翻訳を担当した、原正人さんに『ヴァレリアン』の魅力について話を訊いた。

原さんが、フランス語圏の漫画のことを指す「バンド・デシネ」に興味を持ったのは2005年頃。以降、数々のバンド・デシネの翻訳をつとめるなか、2010年、『ヴァレリアン』の作者であるピエール・クリスタン、ジャン=クロード・メジエールの来日イベントで司会をすることになり、同作と出合った。

「古典として評価も高く、読んでみたらとてもおもしろかった。そこでどうにか日本語訳を出せないかと、出版社に熱心に持ち込みをしていましたが、結局、当時は出せなかった。しかし京都国際マンガミュージアムで展覧会が開かれ、そのときにカタログ代わりに小冊子を作っていただくことになりました。そこで、シリーズの第3巻に当たる『星のない国』という作品を自分で勝手に翻訳し、海外漫画のファン、漫画研究者などに読んでもらったんです。販売しないとはいえ、かなりグレーなことをやりましたね(笑)。そのような個人的な経緯がある作品なので、ついに翻訳出版されてすごく嬉しいです」

同コミックは長いあいだに渡りSFファンから熱烈に支持され続け、「『スター・ウォーズ』シリーズにも影響を与えた」と推測もされている。

「たしかに、影響を与えたのではないかと思われる細部は、いろいろあります。ただ、『スター・ウォーズ』に限らずあらゆる作品は、既存のいろんなものを参照にして作られているはず。だから決して、『ヴァレリアン』だけが特権的な作品ではないと思います。一方でそれだけ多くの人をひきつける設定を初期の『ヴァレリアン』は持っていました。主人公のヴァレリアン、ローレリーヌの驚異の冒険を、毎巻ごとに手を変え、品を変えて語っていくところは、当時の読者としては、『バンド・デシネで、SFをこんな風に描けるんだ』という驚きがあった。特におもしろいのが、白黒はっきりした形で物語に決着をつけない点。バンド・デシネの作者たちは、『殺傷沙汰がほとんど起きず、ヴァレリアン、ローレリーヌは暴力ではなく交渉を通じてさまざまな問題を解決していく』と誇らしげに言っていました。この点はさすがに、今回の映画では完全には踏襲されませんでしたね(笑)」

また、原さんが「今読んでもアクチュアル(現実的)だ」と語るのは、種の多様性を描かれているところ。映画でも、冒頭から人類はいろんな種族と出会っていく。さまざまなトラブルが発生するものの、しかし異なる種族との交流は本来とても豊かなことであると感じさせる。

「今回の映画の原作のストーリー『影の大使』には、セントラル・ポイントという場所が登場します。多様な種が集まる場なのですが、それぞれの種の居住空間は画然と分かれており、お互いに没交渉で、多様性という感じではありません。現在の日本の社会と照らし合わせるとなると、個人的には、この設定にとてもアクチュアリティ(現在性:編集注)を感じます。原作では、それぞれの種の大使たちが持ち回りで安全保障議会の議長を務めていく。物語の主筋は、そのようなセントラル・ポイントの状態につけ込んで、地球の代表者が権力を握ろうとしますが、かつての権力者にいさめられ、そうこうするうちに、弱小種族がクーデターを起こすという皮肉な話。映画はそれらの内容を整理し、新たな要素をつけ加え、わかりやすい動機付けをして、エンタテインメントとして楽しめるようにしています。映画の『ヴァレリアン』の世界は、すでにある程度の多様性が確立されていて、ある意味、理想的な世界のような印象がありました。人種のるつぼという点においては、フランスは日本よりも一日の長があり、日本とは比較にならないほどタフな状況を生きてきている。国際的なスタッフで、国際的な作品を作っているリュック・ベッソンの個人的な資質が反映されている気がしました」

原さんにとって思い入れの深いコミックとあって、映画化に際して「観る前はどうなることやら、とドキドキしていた」そうだが、「とてもおもしろくて、チャーミングな作品」と気に入った様子。特に、ヒロインのローレリーヌを演じたカーラ・デルヴィーニュに惚れ込んだ。

「原作でも、ローレリーヌという女性キャラが重要なんです。今回の原作『影の大使』では、ヴァレリアンは役立たずで、ローレリーヌが主人公じゃないかと思ったりする。映画でも、カーラ・デルヴィーニュが、ローレリーヌにふさわしい存在感を発揮しています。あの眉毛、あの笑い方、そしてあのグーパンチ。とても魅力的でした。そのほかにも、この映画は情報量がすごく多い。リュック・ベッソン監督の、『少年の日に大好きだったバンド・デシネを最高の映画にしてやるんだ』という気負い過ぎた感じが出ていて、そこがむしろこの映画の魅力を増しています」

映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は全国公開中。
(更新日:2018年4月11日)

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