トランプ政権に戦いを挑む黒人選手達。「俺たちは黙ってドリブルなんてしない」
トランプ政権に戦いを挑む黒人選手達。「俺たちは黙ってドリブルなんてしない」
“We won't shut up and dribble.(黙ってドリブルなんてしない)” ここ数週間、NBAの選手たちが頻繁に口にする言葉だ。


スーパースターとして、そして、1人のアフリカ系アメリカ国民として声を上げたレブロン。 (photograph by Getty Images)

“We won’t shut up and dribble.(黙ってドリブルなんてしない)”

 ここ数週間、NBAの選手たちが頻繁に口にする言葉だ。

 事の発端は、とある動画サイトでバスケットボール界のスター、レブロン・ジェームズがトランプ政権を批判したことだった。ジェームズは以前から現大統領の差別的な発言や考え方に対して批判的だったが、その番組でも歯に衣着せぬ発言をしてみせた。

「(トランプ氏は)アメリカのトップにいるのに、相手を理解しようとしない。俺たちが子供の時に憧れた3つの職業は大統領、スポーツ選手、そしてミュージシャンだった。自分はそうなれないと思っていても、かっこいいなと憧れた。でも今の大統領はそういう(憧れの)対象じゃない。彼のヤバイ発言にはもう驚かなくなった。彼は差別を助長していると思う」

 その発言に対して、右寄りの偏向報道で知られるFOXニュースの女性キャスターが噛みついた。

「あなたの発言を無知な子供や大人は信じるでしょう。でもあなたは高校も卒業せずにNBAに入ったのよね。大金を受け取っているのはバスケットのためで、誰もあなたに政治的な意見など求めてない。黙ってドリブルしてなさいよ」と発言。嘲るような、そして見下した物言いだった。

自宅の壁に黒人差別の言葉を描かれたことも。

 トランプ氏は大統領選挙戦中から差別的なコメントを発信し続け、白人至上主義者などを中心に絶大な信者を獲得した。

「メキシコ人はレイプ魔だ」「黒人はみんな怠け者だ」「イスラム教徒を入国させるな」など根拠のない発言をする一方で、白人至上主義者や活動家を「とてもいい人たちだ」などと擁護。その結果、ヘイトクライムが増加し、ジェームズも昨年5月にはロサンジェルスの自宅の門に、黒人差別の言葉を書かれる被害に遭っている。

「アメリカには日々、憎悪が渦巻いている。(トランプ氏の)当選が決まってから、どんなに結果を出しても『でもお前は黒人だから』のひと言で片づけられる」と悲しみに満ちた表情で話していた。

断固戦い続ける意思を示したジェームズ。

 今回の女性キャスターの差別発言にもジェームズは怒りを爆発させた。

 NBAのオールスター試合前に会見に応じ、「黙ってドリブルなんてしない。俺たちには恵まれない環境にいる子供達を救う役目がある。自分は社会にとって大きな存在意義があって、彼らを支えるプラットフォームにならないといけないんだ」と話し、「その女性(キャスター)がどこの誰か知らないけれど、オールスターという全世界が注目している場所で、こういう社会の不公平さや平等について話す機会を与えてくれたんだから感謝してるよ」と語った。

 子供達に、そしてマイノリティに影響力があるからこそ、誰に何を言われようと声を上げなければならない。

 戦い続ける――そんな強い意志が感じられた。

銃規制を訴える高校生を支援。

 現政権に対し、異なる形で声を上げているのが、マイアミ・ヒートのドウェイン・ウェイドだ。彼はジェームズのようにオピニオンリーダーだったわけではない。ある事件が彼の心を突き動かしたのだ。

 今から約1カ月前のバレンタインデーの日、フロリダ州にあるストーンマン・ダグラス高校で銃乱射事件が起こり、17人が命を落とす大事件が発生した。

 被害者の1人、ホアキン・オリバー君はウェイドの大ファンで、地元マイアミ・ヒートに復帰したことをとても喜んでいたという。

 彼の棺の中にウェイドのユニフォームが入れられたというニュースが流れると、ウェイドは即座に反応。

「ホアキン・オリバーは被害にあった17人のうちの1人だ。俺たちは黙ってドリブルなんてしない。バスケットよりも重要なことだ。俺たちは声なき者の声になるんだ。ホアキン、安らかに眠れよ。残りのシーズンを君に捧げてプレーする」とツイート。

 オリバー君の名前をバスケットシューズに書いて試合に出場し、勝利を決めるシュートを放っている。

「君たちの勇気ある行動に刺激を受けている」

 少年ファンの不幸な死が彼の感情に火をつけたのだろう。ウェイドの活動はこれに収まらず、その後、同校を突撃訪問し、銃規制を訴えて立ち上がった高校生たちに「君たちの勇気ある行動に刺激を受けている。俺も協力するから」と全面協力を約束。活動に対して20万ドル(約2100万円)を寄付することを発表した。

 オクラホマシティ・サンダーでプレーするカーメロ・アンソニーも「俺もウェイドと同じ考えだ。俺たちのホームタウンも暴力で溢れていたが、もう止めなきゃいけない。地元とボルチモアの学生を支援する。NBA選手団体はみんなの寄付に対して25万ドルをマッチする。さぁ、ボールを回そうぜ」と銃規制を訴える高校生たちの活動を支援している。

スポーツ選手も声を上げる時代だ!

 スポーツ選手は政治について話すべきではない、という意見は時代遅れだ。

 レブロン・ジェームズの「子供達に影響力があるからこそ、声を上げなきゃいけない」という言葉は力強い。

 叩かれても、差別されても戦い続ける選手たち、彼らと同じように政権に戦いを挑む高校生、それを支援する選手たち。

 彼らがアメリカに明るい光をもたらしてくれると信じたい。

text by 及川彩子
「Overseas Report」

(更新日:2018年4月13日)

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