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メジャーにもない東映5者連続本塁打の裏。そして誰もいなくなった?/プロ野球20世紀・不屈の物語【1971年】

週刊ベースボールONLINE

歴史は勝者のものだという。それはプロ野球も同様かもしれない。ただ我々は、そこに敗者がいて、その敗者たちの姿もまた、雄々しかったことを知っている。

意地を見せたロッテ



闘志あふれるバットマンだった江藤。70、71、76年にロッテに在籍

 1971年5月3日のロッテ戦。かつて東京の下町で威容を誇った東京スタジアムで、東映(現在の日本ハム)の“暴れん坊”たちがメジャーにもない快挙を成し遂げたことは紹介したばかりだ。口火を切ったのは通算5本塁打の作道烝で、代打に立ってグランドスラム。そこから打順は一番に戻って、大下剛史、大橋穣、張本勲、そして大杉勝男が、立て続けに左翼席へとアーチを架けた。それまでは、大洋(現在のDeNA)の大沢清、藤井勇、平山菊二、門前真佐人が50年9月28日の阪神戦(日生)で残した4者連続が最多。5者連続もさることながら、1イニング5本塁打もプロ野球新記録だった。

 ちなみに、その後も4者連続は20世紀のうちに5度、達成されていて、うち2度は四死球を挟んだ4連発。71年の東映も、大杉に続いた五番のクリスチャンが四球となり、6連発の可能性がなくなったわけではなかったが、この日の東映で初打点となるソロを放っていた六番の萩原千秋が三振に倒れて、5連発にとどまった。とはいえ、5連発でも申し分ない快挙。9回表まで5点をリードし、勝利を目前にしながら同点にされ、さらにはプロ野球で初めての快挙を許したロッテは、まさに泣きっ面に蜂だっただろう。

 だが、プロ野球で初めての快挙は幕を下ろしたが、快挙は続いた。ロッテは結果的に延長10回表についた8点という大差を覆せず敗れるのだが、それでも2点を返している。前日まで9連敗という泥沼で、もう負けるわけにはいかなかった東映が、リリーフで好投した皆川康夫の打席で作道を代打に送ったことが5者連続本塁打につながったのだが、これも最も信頼できる右腕の金田留広が控えていたためだ。

 金田は国鉄、巨人でプロ野球記録の通算400勝を挙げた金田正一の弟。作道の代打は賭けであり、それに結果的には勝ったことになったが、そんな東映に意地を見せたのがロッテの打線、中でも主砲の江藤慎一だった。10回裏、東映は殊勲の作道を下げ、予定どおり金田を投入。一方のロッテは、先頭で二番の池辺巌が遊撃への内野安打で出塁する。ただ、三番は助っ人のロペスに代わって守備固めで入っていた西田孝之で、66年には規定打席に到達せず盗塁王になったこともある職人だが、あえなく右飛。続いたのが江藤だ。

 69年オフに首脳陣との確執から中日で引退に追い込まれながら、翌70年シーズン途中にロッテで“復帰”した闘志あふれるバットマン。“闘将”とも呼ばれた男は、この日も6回裏から2打席連続で本塁打を放つなど絶好調だった。そして10回裏、この日の第5打席でも左翼席へと2ラン本塁打を放つ。

待ち受けていた運命


 ただ、東映の5者連続というド派手な快挙の前に、江藤の3打席連続本塁打がかすんでしまったのも事実。だが、この江藤の本塁打こそ、この試合を記録ラッシュに押し上げた一発だった。両チーム1イニング6本塁打はプロ野球新記録。表と裏を合わせて10得点も延長戦におけるプロ野球新記録となった。

 快挙が続き、プロ野球の摩訶不思議が詰まったようなゲームではあった。これで快挙は終わったが、不思議なことは続く。この6発を放った6人すべてが、それぞれのチームから5年としないうちに姿を消すことになるのだ。チームひと筋で引退したのは作道のみ。ほかの5人は全員、移籍でチームから消えた。この71年オフに江藤が大洋、大橋が阪急(現在のオリックス)へ。江藤の移籍はプロ野球で初めて両リーグ首位打者を決めた日に通告を受けるという前代未聞のトレード劇だった。チームが日拓となった73年オフに作道が引退。翌74年は日本ハムとして生まれ変わったが、そのオフには大下が広島、大杉がヤクルトへ。翌75年オフには張本も巨人へ移籍していった。

 移籍した5人は、いずれも力が衰えたことによるトレードで、実質的な放出とは趣が異なる。ロッテの江藤は太平洋(現在の西武)で兼任監督として通算2000安打に到達しながら、やはり球団との行き違いで退団、ロッテに復帰して引退したが、大下は広島の初優勝、大橋は阪急の黄金時代、張本は巨人で長嶋茂雄監督の初優勝、そして大杉はヤクルトの初優勝と日本一に、それぞれ大きく貢献している。特に日本ハムは“東映カラー”の払拭を図ったとされ、後味の悪い移籍が続いたが、日本ハムとなって初優勝を飾る81年よりも前に、放出された“暴れん坊”たちが優勝を経験しているのだから皮肉だ。

文=犬企画マンホール 写真=BBM

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