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門田博光のエース“攻略法”。「見ている人には分かりっこないだろうが」/プロ野球20世紀・不屈の物語【1970~88年】

週刊ベースボールONLINE

歴史は勝者のものだという。それはプロ野球も同様かもしれない。ただ我々は、そこに敗者がいて、その敗者たちの姿もまた、雄々しかったことを知っている。

東尾との“真剣勝負”



本塁打を打つことにこだわり続けた門田

 1979年にアキレス腱を断裂、そこから本塁打に照準を絞って復活を遂げた南海(現在のソフトバンク)の門田博光については以前、詳しく紹介している。故障というアクシデントにより、もともと強いあこがれを抱いていた本塁打を追い求める環境が逆説的に整った門田は、身長170センチというプロ野球選手としては小柄な体格から本塁打を放つべく、自らの体を「トラックの上でミサイルを発射させる発射台」(門田)に見立て、下半身で角度を作り、頭の位置は変えずにバットを大きく引いて、軸足に重心を置きながら大きくステップ。これで打球にも角度をつけて、外野スタンドへ放り込んだ。

 そして81年、83年、さらに40歳となった88年にも本塁打王に。81年7月には月間16本塁打の新記録もあった。だが、南海は73年を最後に優勝から遠ざかり、どんなに本塁打を放とうと、門田も優勝とは無縁。80年代はセ・リーグ、特に巨人戦のテレビ中継が全盛期を迎えていたが、一方で、パ・リーグの人気は雲泥の差だった。後楽園球場の人工芝はナイターのカクテル光線を美しく反射して、江川卓や原辰徳と言った抜群のスター性を誇る巨人ナインを明るく際立させる。

 プロ野球が男と男の泥臭い真剣勝負から、より分かりやすいエンターテインメントに変貌していった時代だった。そんな“人気のセ”に対して、“実力のパ”。“先発三本柱”や“投手王国”という華やかな陣容ではなく、各チームには実力と悪の強さを兼ね備えたエースが君臨し、敵チームの主砲は、そんなエースの攻略に万策を講じた。個と個の対決。それがテレビでは見られないパ・リーグ野球の花形だったのだ。

 この当時を「エース投手との微妙な駆け引きが面白かった」と振り返る門田だが、「テレビを見ている人には分かりっこないだろうが」と言い切る。それ以前にパ・リーグの試合がテレビで中継されることも少ないのだが、球場で門田のプレーを見ていても、門田の「微妙な駆け引き」に気づくことが難しかったかもしれない。優勝とは無縁のチームだからこその部分もあるだろう。門田はチームの勝敗より、個と個の対決に勝利することに全力を傾注することがあった。

 そのエース“攻略法”でも、番外編ともいえるほどの極端なケースは、西鉄、太平洋、クラウン、そして西武と、ライオンズひと筋の東尾修との対決だ。打者の内角を執拗に攻める東尾の“ケンカ投法”は、内角球で打者をのけぞらせて、外角球で打ち取るのが真骨頂。そして、多くの死球を呼び込んだ。もちろん、門田も例外ではない。ただ、門田は死球を当てられて、バットを持ってマウンドに向かっていくような行為には否定的だ。「ワザにはワザで立ち向かっていく。ワザで相手を倒してこそ相手に認められる」というのが門田のスタイル。そこには、もはや本塁打に魅入られた門田の姿はない。

「これでおあいこや」、だが……



“ケンカ投法”で通算251勝をマークした東尾

 門田は言い切る。「(第1打席で死球を受けたら)残りの3打席は、もうヒットを打たなくていい。今日の野球は、もうどうでもいい。残りの打席は、当てられたことに対して、当て返すための打席だ」……つまり、ピッチャー返しで東尾に打球を当ててやろうというのだ。この日、実際に第3打席で東尾の太ももに強烈なピッチャー返し。ひたすらバットの角度を考えに考え抜いた結果だった。門田が「これでおあいこや」と言うと、東尾は「そうやね」と応えたという。

 チーム一丸となって優勝に向かって勝ち進んでいく姿に声援を送るのがプロ野球の一般的な、いや、あるべき姿なのかもしれない。この門田の考え方は、それとは一線を画している。ただ、優勝できる戦力がないチームがあるのも事実で、そんなチームでも、ファン、特に目の肥えたファンを魅了する野球をすることができるのではないか。いささか極端であり、優等生の考え方ではないのは確かだが、より奥の深いプロ野球の楽しみ方を示唆しているようにも思える。

 ちなみに、その後も東尾はほかの打者には“ケンカ投法”を続けたが、門田には危険な内角球を投げることはなくなったという。ただ、外角へ巧みに制球された独特な沈み込むボールで勝負してきて、それでほとんど門田は遊ゴロに打ち取られることに。門田は「ワザにワザで返してきた」と東尾を称賛している。門田とほかのエースとの対決は、またの機会に。
  
文=犬企画マンホール 写真=BBM

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