「そのときは、彼が高校時代から通ってるラーメン屋に行ったり、地元の友人とドンチャンやったり。仕事で行っているのに、旧友と旅をしている感覚にさせてくれたよ」(崔監督)
大杉さんの父親は中学校の校長を務めていた。18歳で家を出て、アルバイトと芝居に明け暮れていた大杉さんの演劇を、一度だけ観に来たことがある。
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終演後、楽屋に来たのは母親だけ。ロビーでタバコを吸っていた父親は「俺にはさっぱりわからんな」とだけつぶやいた。後に大杉さんはスポーツ紙の取材に、「『頑張れ』とも言われなかった。それが親父の愛情だと受け取った」と話している。
昔気質の父親の存在が、バイプレイヤー・大杉さんを育てた。
「人に毒をまき散らすことはしない。気がつくとひょろっといる。主役の俳優が年下でも、きちんと立てる。主役を気持ちよく演じさせる立ち居振舞いが、自然にできる。それでいて、主役を食うところは食いに行く。愛される人だった」(崔監督)
いつも鞄は、進行中の台本が10冊以上入ってパンパンだったという。名バイプレイヤーは、みんなの心の中では主役だった。
(週刊FLASH 2018年3月13日号)