三浦知良、中村俊輔、松井大輔の同時起用
明治安田生命J1リーグ第18節、川崎フロンターレ対横浜FCが23日に行われ、3-2で川崎Fが勝利した。横浜FCはこの試合に、三浦知良、中村俊輔、松井大輔の3人の大ベテランを同時起用。圧倒的な強さを見せる川崎Fを相手に奇策にも見えるこの采配には、どのような意図があったのだろうか。(文:西部謙司)
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どこまでが意図したものだったのだろう。今季、別格の強さで首位を走る川崎フロンターレに対して、横浜FCは奇策で応じていた。
三浦知良(53歳)の先発だけでなく、中村俊輔、松井大輔も起用。3人合わせて134歳が話題になったが、エキジビションでもあるまいし、まして川崎Fを相手にこのメンバーは「ひょっとして試合を捨てたのか?」とさえ思った。
試合が始まると、横浜FCは不思議な戦い方をしていた。
ボールはとにかく保持。GK六反勇治へ躊躇なくバックパスしまくる。数えたわけではないが、前半のバックパスの数はJリーグ最多ではないかと思えたほど。安易に前線へロングパスを蹴りだすことはなく、徹底保持の姿勢は明確だった。
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下平隆宏監督が率いる横浜FCは、昇格チームと思えないほど大胆にパスをつなぐ。そのためのポジショニングが整理されていて、チームを成長させていこうという意思がうかがえるスタイルだ。
とはいえ、川崎F戦の組み立てはビルドアップよりもビルドダウンと呼ぶほうがふさわしかった。ボールを前に運びかけても、川崎Fのプレッシャーを受けるとすぐに下げる。GKまで下げる。そこからロングボールは蹴らず、もう一度ビルドアップを試みるが、結局また下げるという展開。
何回かは川崎Fを前のめりに食いつかせ、その隙間をついてボールを前進させることにも成功していた。そのときは一気に前方が開けてくる。自陣で失うリスクもあるが、プレスを外せばチャンスは広がる。おそらくそこに賭けたのだろう。
速攻を捨てるためのカズ起用
中村俊輔と松井大輔は、ボール保持ならば同時起用する理由はあった。テクニックなら若い選手に勝るものがある。問題はカズだ。彼が前線では速攻ができない。
だが、ひたすら後方でパスをつなぎ続けるのを見ているうちに、ひょっとしたらそのためのカズなのかと思い始めた。速攻にならないFWを起用したのは、速攻をしないと決めていたからではないかということだ。
カズはもともと足が速い選手ではない。全盛期はとても敏捷だったが、当時も長い距離を疾走して速いFWではなかった。もともとカウンター向きでもなく、53歳で足が速くなっているはずもない。