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長友佑都はフランス人にウケる選手。新天地デビュー戦、「考えられない」と酒井宏樹が舌を巻いた理由は?

フットボールチャンネル

長友佑都はフランス人にウケる選手。新天地デビュー戦、「考えられない」と酒井宏樹が舌を巻いた理由は?

長友のプレーに現地記者も期待

 リーグ・アン第4節リール戦で、今夏マルセイユに加入した長友佑都がデビューした。失点に関与し、60分にピッチを退くなど見せ場は少なかったが、チームメイトの酒井宏樹やアンドレ・ビラス・ボアス監督はベテランSBに称賛の言葉を贈った。その理由とは?(取材・文:小川由紀子【フランス】)

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 9月20日のリーグ・アン第4節リール戦で、この夏マルセイユに入団した長友佑都がデビューした。

 1週前のパリ・サンジェルマン(PSG)戦でもベンチ入りしたが、プレーするにはまだコンディションが十分上がりきっていないと、アンドレ・ビラス・ボアス監督は話していた。しかし、左サイドバックのジョルダン・アマビが、そのPSG戦で乱闘騒ぎに加わって3試合の出場停止処分になったため、予想よりも早く出番が回ってきたのだった。

 試合開始50分前、先発メンバーが発表されたときは、「フランスリーグで日本人選手が同時にピッチに立つのは史上初だ!」と、現地の記者たちは軽い興奮状態だった。

 かつてグルノーブルに日本人選手が同時に在籍(松井大輔、伊藤翔)していたことがあったが、公式戦で同時にピッチに立ったことはない。なにより、彼らは長友がどんなプレーをしてくれるのかを見たくてうずうずしていた。

 しかも相手は、リーグ・アンの中でもとりわけ攻撃陣が元気なリール。俊足ウィンガーのジョナタン・バンバに、この日はベンチスタートだったが、フランス代表入りしているジョナタン・イコネ、さらに今夏カナダ代表のジョナサン・デイビッドも加わった『ジョナタン・トリオ』はなかなかのインパクトがある。

「このビッグマッチでどんなパフォーマンスを見せるか。これは彼にとって格好のテストになるぞ」と、彼らは背番号25のプレーに注目する気満々だった。

 連日1万人以上の新型コロナ感染者を出しているフランスの中でも、マルセイユは特に感染者が多いエリアであるため、5000人まで認められている集客イベントが、この地域では1000人に制限されている。この中には両クラブのスタッフやメディア、警備など全関係者が含まれるため、観客は数百人ほどしか入れない。長友の名前を呼ぶアナウンスは、ほとんど空っぽのヴェロドロームに響いた。

 それでも、グラウンドに飛び出してきた長友は元気はつらつ。酒井宏樹と組んでパス練習をしたり、チームメイトたちと言葉を交わしながら、ウォームアップからインテンシティはMAXといった様子だった。

デビュー戦のパフォーマンスは…

 しかして、酒井が右、長友が左と、日本代表の2人が両サイドバックに陣取ったこの一戦は、リールに先制されたが終盤なんとか同点に追いついて、1?1のドローに終わった。長友は機を見て前線まで飛び出すなど積極的に動いたが、記録としては、21分に初イエローカードをゲットし、47分の失点に絡んで、60分にピッチを退いた。

 試合後ビラス・ボアス監督は、長友の初戦について、「良い試合をした。実戦から遠ざかっていたことを考えても良いプレーだった。失点シーンについては私にも落ち度がある。上がれ、と指示していたからね」と、よくピッチサイドでやるような、両手を横に動かすジェスチャーとともに話した。

 この失点シーン、起点はマルセイユ側のゴールキックだった。

 これがぴったりと相手選手の頭上をとらえてしまい、彼が落としたボールをバンバが颯爽とさらって右サイドのアラウージョにアシストした。相手がヘッドで落としたボールが、ちょうどマルセイユの中盤の2人、ブバカール・カマラとヴァランタン・ロンジエの間に落ちたのも痛かったと指揮官は悔やんだ。

 長友のプレーについて、この失点シーンよりむしろビラス・ボラス監督や現地記者が憂慮していたのは、直後のロストボールだ。

 長友のバックパスをアラウージョにさらわれ、バンバにつながれて相手FWブラク・ユルマズにシュートを打たれた。左ポストを直撃して失点を免れたが、これを決められていたら勝ち点を失う致命的なエラーとなっていた。

 60分にブナ・サールと交代したのは、監督いわく想定内。長期間実戦から遠ざかっていた長友のコンディションはまだ十分ではなく、同じく新型コロナに感染していたサールも、自主隔離を終えたあと、回復に時間がかかっていた。

 前節のサンテティエンヌ戦でようやく復帰し、新入りのレオナルド・バレルディに代わって後半戦から出場。そしてこのリール戦でも、攻撃を押し上げたい終盤で投入するというのは、あらかじめ描いていたプランだった。

「やはり経験ってすごいなと思いました」(酒井宏樹)

 長友が今後フランスリーグでより順応するための課題については、「彼にはすでに十分な経験があるから、あえて習得してもらう必要があることは何もない。左右どちらのポジションにおいても、何をすべきか彼自身がすでに知っている。

 挙げるとすれば、フィジカルレベルを上げていくこと。実戦から遠ざかっていた期間が長かったからね。そうすればゲームの質を上げていけるだろう」と信頼している様子だった。

 この日のマルセイユは、過密スケジュールによる疲労もあり、攻撃陣も足が動いておらず、全体的に流れの悪い難しい試合ではあった。個人的には、長友は初戦からずいぶん思い切りよく前線まで上がっていくなと感じたが、これは現地記者たちには高評価。

 フランスでは、積極的に(ときに無鉄砲に)上がるサイドバックが評価されるし、ファンにも人気がある(無茶な攻め上がりはしない主義の酒井はそれで悩むこともあるようだが、彼の場合は「酒井はリスクは犯さない慎重さが良い」と評価を得るに至っている)。

 そしてこの日も左右両サイドで奮闘した酒井宏樹は、試合後、長友との共闘について、「佑都君がここで9ヶ月ぶりの試合だと言っていたので、しかもこのビックマッチにいきなり、何もその前に練習試合も出ないで、それでも普通にやっていたんで、やはり経験ってすごいなと思いました。自分からしたら考えられないです。9ヶ月試合に出ていないのに、いきなりビッグマッチというのは…。やはりすごいキャリアを歩んできた証拠だなと思います」と感想を語った。

 ちなみにマルセイユにとって値千金の同点打は、彼がサールへ送ったクロスがCKにつながって生まれたものだ。

 酒井が言うように、実戦は9ヶ月ぶり、しかもまったく未経験のリーグで、このメンバーで初めて試合したぶっつけ本番にしては、長友のプレーは落ち着きもあり、連係も決して悪くなかった。フランスリーグのサイドバックには見られないような気の利いたカバーリングもたびたびあった。

リール戦で見せ場はなかったが…

 長友自身は試合後、「9ヶ月ぶりの公式戦でうれしかった。OMのユニフォームを着て、ホームでのピッチは格別でした」とヴェロドロームのピッチを踏んだ感想を語ってくれた。コロナ感染防止対策により、ミックスゾーンでの取材ができないため、マルセイユの広報担当者を介して答えてもらったコメントだ。

 先発すると知ったときの心境については、「9ヶ月ぶりだったので、強い意気込みと緊張感を感じて、戦場に戻ってきたなと嬉しくなったと同時に身が引き締まる思いだった」と。

「いろんな意味で久しぶりだったけれど、試合には冷静に入れた。9ヶ月ぶりの試合ということを考えると冷静さと落ち着きを持って戦えた。コンディションも悪くなかった」。

 フランスリーグでのプレーは初体験だが、やってみて難しかったことや課題については、「フランスは個人能力が高い選手ばかりで、サイドの対応は凄く難しい戦いになると思う。反応と身体のキレをしっかり戻していきたい」と話し、「宏樹との共演は嬉しかった。(酒井は)今日も安定した素晴らしいパフォーマンスだった。フランスリーグを知り尽くしている彼から学んでいきたい」と酒井に賛辞を贈った。

 期待が大きかっただけに、現場にいた記者たちは、「この試合では見せ場はなかった」と長友のデビュー戦にがっかりした様子だったが、同時に「でもまだ1試合プレーしたにすぎないのだから、判断するには時期尚早」というご意見。まあ、今後も厳しい評価はつきまとうだろう。マルセイユでやっていくにはそれは避けられないし、長友もきっと「望むところ」という気でいるはずだ。

 今では「何があっても彼の評価は揺らがない」というほど、マルセイユで絶対的な信頼を勝ち得ている酒井も、思い返せば入団当初の数試合ではまったく同じようなコメントが聞かれていた。

 シーズンは始まったばかり。監督がいう、「チームにとって必要な戦力である」ことを証明する機会は、まだまだこれからだ。

(取材・文:小川由紀子【フランス】)

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