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西岡良仁、マリーと4時間39分の大激戦。本人が冷徹に振り返る敗因を財産に。

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2セット連続で奪い、かつてのBIG4であるマリー戦勝利にあと一歩まで迫った西岡良仁。この結果で満足するような男ではない。 (photograph by Getty Images)

 アンディ・マリーとの対戦が決まると、西岡良仁はツイッターにこう書き込んだ。

「これでBIG4と呼ばれる方々と全員対戦出来た!」(原文ママ)

 2018年全米でロジャー・フェデラーと対戦。今季はATPカップでラファエル・ナダルと、また全豪の3回戦ではノバク・ジョコビッチと、ともに2度目の対戦を果たした。トップ選手との対戦が増えたのは、自身がトーナメントで勝ち進むことが増えたからだ。マリーとの初対戦を喜んだのは、挑戦者の血が騒いだのと、経験値の積み上げを期待したからだろう。

 これまでに5回あったBIG4との対戦では、勝つどころか、セットも奪えなかった。しかし、この日はマリーから立ち上がりの2セットを連取した。セットカウント2-1からの第4セットには、相手のサービスゲームではあったがマッチポイントも一度あった。

 逆転負けに終わったが、これは2セットダウンから死力を尽くして追い上げたマリーの手柄だ。手術した股関節を再び痛めたマリーは昨年11月にツアーを離脱、今年の全豪も欠場したが、その執念とガッツはさすが元世界ランキング1位と思わせた。

紙一重の試合に「消極的な部分」が?

「紙一重の試合だった。こんなテニスができるとは思っていなかった」

 試合後、西岡の表情に浮かんでいたのは、惜敗の悔しさよりも充実感だった。

 ただ、敗因となると、西岡は冷徹な視線で自身のプレーを分析した。マリーの気迫と粘り強さを認めた上で、試合終盤の自身のプレーに「消極的な部分」があったと明かした。

 そうだろうか。第三者には、あのプレーから、消極さはなかなか読み取れないのだが……。試合展開を振り返り、西岡の分析を聞いていこう。

「半年離れていた分、前のような」

 第4セットは5度ブレークポイントを握りながら、一度もブレークを果たせなかった。第5セットは第5ゲームで先にブレークしたが、次のゲームでブレークバックを許した。西岡はこの逸機を「ブレークチャンスが取れず、大事なところをことごとく逃しながらのプレーだった」と悔やむ。

 勝負どころで積極的に行けなかった理由は「試合勘」の問題だという。

「半年離れていた分、前のような勝負強さが欠けていた」

 新型コロナウイルスの感染拡大でツアーは約5カ月にわたって中断、全米は西岡にとって半年ぶりの公式戦だった。中断前の1月、西岡は今季開幕戦のATPカップでナダルに善戦、全豪では2回戦で世界ランキング32位のダニエル・エバンズに快勝するなど好調だった。その頃に比べ、「ここというときの思い切りが足りなかった」という。

マリーが実践した勝負師の極意。

 昨年11月のデビスカップ・ファイナルズでフランス代表のガエル・モンフィスに快勝した西岡は試合後、「思い切り」についてこう話している。

「しっかり組み立てて、粘り強くというのは自分の持ち味だが、チャンスと思ったポイントで自分から攻め、思い切ってプレーして、取れなければ仕方ないという割り切りの中でプレーするようになった」

 トップ選手との対戦を何度か経験して得た教訓である。昨年、トッププレーヤーを何人も破ったのは、この境地に足を踏み込めたからだろう。ある種の開き直りがダイナミックなプレーを生む。

 足の運びを軽く、ラケットの振りを滑らかにし、大胆な戦術選択を可能にする。大事な場面だからこそ、アドレナリンが出て、体と頭がオートマチックに動く「ゾーン」状態に入れる。しかし、マリーとの試合では試合勘を欠いた影響で、そこにたどり着けなかったか。

 逆に、その勝負師の極意をマリーが実践した。ミスが続き気力さえ失ったように見えた時間帯を経て、第3セット以降は一転、思い切りがよくなった。まさに「取れなければ仕方ない」という態度を前面に出してきた。

 一方、西岡は第3セット以降、プレーがおとなしくなったように見えた。「ずっと一定のペースでやっていた感じだった」と話したように、彼の試合運びに欠かせない大胆さ、ダイナミックさが消えていた。

マリーの呆れた表情が物語る激戦。

 本人の反省の弁から敗因を探ってみたが、客観的にはマリーの気迫と修正力が勝敗を分けた最大の要因だろう。

「最初の2セットは完全にバランスを間違えていた。自分から何もできず、彼にポイントを独占されてしまった。そのうち、積極的に行きすぎてミスが増えてしまった。最後にようやく、自分がやらなくてはならないことのバランスがとれてきた。ショットの当たりもよくなり、いいタイミングで前に入ることもできた。最高のプレーはできなかったが、乗り切ることができたのだから、この勝利は特別だ」

 マリーは試合後、全てを出し尽くしたというような姿でベンチに腰を下ろした。呆けたような表情がすべてを物語っていた。

 西岡は金星こそ逃したが、試合勘はすぐに戻るだろう。男子ツアーきっての試合巧者と5セットを戦ったことで経験値は大きく積み上げられたに違いない。BIG4の一角と互角に戦った4時間39分は必ず彼の財産となる。

text by 秋山英宏
「テニスPRESS」

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