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未体験のハイブリッド・オンラインフェス『THE SOLAR BUDOKAN 2020』開催に寄せて

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未体験のハイブリッド・オンラインフェス『THE SOLAR BUDOKAN 2020』開催に寄せて

夏フェスの無い夏を過ごしている。フジロックもジャパンもライジングも、つい先日にはギリギリまで開催への道を模索していた『SUPER SONIC』も延期となった。それどころか、ライブ自体を今年はほとんど観ていない。帰省や旅行すら躊躇われる社会情勢を鑑みればやむを得ないことだが、やはり寂しいというか、当然のようにそこにあったものが突然ポッカリといなくなる喪失感を味わっている。

もちろん、フェスもライブも完全になくなったわけではなく、オンラインに場所を移すなどして開催されてはいる。それらが本来のフェスやライブの互換となるかといえば、残念ながら首を横に振らざるを得ないが、配信ならではの、配信だからこその面白い仕掛けやコンセプトなど、各アーティストごとに試行錯誤を続けているし、有料配信のプラットフォームもある程度整備・安定してきたことで、オンラインライブの文化は春以降、急速に根付いてきてはいる。ただし、その多くがワンマンライブだ。アーティスト単独のライブであれば、そのアーティストに合ったやり方を採れば良い上、「配信でもライブを観たい」「視聴することで力になりたい」と考える熱心なファン層も存在するのに対して、フェスはどうだろうか。

まずその土地に行って、そこにはフードがあって、ドリンクがあって、会場装飾がある。グッズを並んで買って、タイムテーブルを眺める。フェスの楽しさや魅力はそういう要素が重なり合って構成されているから、ただ連続してアーティストのライブを流していくだけの作りではなかなか成り立ちづらいだろう。オンラインの場合、どうやってそのフェスの色を出すのか。本来目指していたブッキングが実現できないケースも出てくる。観る側にしても、画面と向き合った状態で何時間くらいなら集中力が保てるのか。チケット代はいくらが妥当なのか。本当に何もかも手探りである。

そういう困難に、フェスを主催する側は今年ずっと向き合ってきた。正直、「やる」にせよ「やらない」にせよ、興行的には大打撃だろうし、どちらの決断にも異論は出る。正解は誰にもわからない。中止となったフェスに対して、いちロックファンとして「残念だな」とは感じるけれど、ただただ来年以降を心待ちにするほかない。で、本題は「やる」決断をしたフェスである。大規模なものでは春に延期となった『VIVA LA ROCK』がオンラインで開催されたのが記憶に新しいが、本稿では、オンラインをメインとした4Days開催に踏み切った、『THE SOLAR BUDOKAN』について書いていきたい。


『中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018』より



『THE SOLAR BUDOKAN』は、2012年の初回を日本武道館で開催し、その翌年から岐阜・中津川市で開催されてきた、初秋の野外フェスだ。ここ数年は毎回トータル3万人規模を動員するまでになり、2018年には徳島、2019年には福島・猪苗代でも同コンセプトのフェスを行なっている。特色は何と言っても、その名の通り、ステージ周りで使用する電気を太陽光発電でまかなうという点。そして、世代やジャンルを超越したラインナップが挙げられる。ライブハウスで売り出し中の若手から、各地の大型フェスのメインステージ級、さらにはCHABOや小坂忠といったレジェンドまでが一堂に会し、クリーンでサスティナブルな電力を用いて音を鳴らす場として愛され、東海・中部地方屈指のフェスに成長を遂げてきたのだ。

会場の雰囲気や、各年の様子について詳細に触れることはここではしないが、ステージ数などが現在の形となった過去4年については、筆者がレポートしているのでそちらを参照いただけると幸いだ(ライブのレポというより参加記ですが)。


■2016年
https://spice.eplus.jp/articles/77520

■2017年
https://spice.eplus.jp/articles/150221

■2018年
https://spice.eplus.jp/articles/211850

■2019年(猪苗代)
https://spice.eplus.jp/articles/246371

■2019年(中津川)
https://spice.eplus.jp/articles/257913


2020年の開催も、前年開催を終えた段階では当然、中津川にステージを組み、観客を入れた状態での開催を予定していた。だが年明け以降、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて再考を余儀なくされ、感染状況と睨み合い二転三転しながら、現地での開催自体が可能なのか、地元客だけでも観覧できないか、可能な場合の入場数は、配信環境の設備はどうなるか……などなど、絶えず話し合いが続けられてきたそうだ。ライブエンターテインメントに限らず、このコロナウィルスに関しては都市部と地方とで状況や認識が異なってくるから、地方型フェスの場合は現地の行政や住民とも向き合わなくてはならない。

結果として、今年はタイトルに「中津川」の文字は入れず、『THE SOLAR BUDOKAN』として開催することが発表された。とはいえ、このフェスを象徴する土地・中津川でライブが行なわれないわけではなく、無観客ながら、配信や収録の舞台として中津川からの演奏が届けられることになる。加えて、猪苗代湖畔の野外会場や、中野サンプラザ、ビルボード東京といったコンサート会場でもライブの収録や配信を行ない、生と収録、屋内と屋外、様々なシチュレーションからのライブを一挙に配信するという“ハイブリッド・フェス”としての開催へ舵を切ったのだ。

オンラインライブにおいて収録映像を流すというのは、厳密には“ライブ”ではないのでは、という意見もあるだろう。それはその通りなのだが、先にも触れた通り、画面を通して見ている時点で、本来のライブの魅力とは感動の種類が違う。ならば、映像としてのクオリティや特別感を優先するのも充分にアリだと思う。たとえば、先ごろ配信されたThe BONEZの復活ライブは、本編は事前収録で、アンコール前のトークとアンコール1曲分のみを生演奏するというものだった。事前収録を行なうことで、梅雨時にもかかわらず野外でのライブを実現させ、夕刻から夜へと向かう空や湖面など、自然そのものを演出に取り入れることに成功。大きな反響を呼んだのである。

そう考えると、1開催日あたり数時間の間に、各地で収録されたシチュエーションの異なる映像と生のライブが混在してくるというのは、とても面白いことになるのではないだろうか。加えて、中野サンプラザでのみ、キャパシティの1/4以下ではあるものの観客を入れた収録を行なうというから、長らく目にしていない「歓客のリアクションがあるライブ」の映像も観ることができる。ライブとオンラインライブが別物なのと同じように、フェスのあの空気を再現するのが不可能だとしても、根底の精神性やブッキングの色など肝心な部分さえ残せていれば、むしろ新しい配信コンテンツ、映像コンテンツとして魅力的なものは生み出せるはずだ。

また、中津川ソーラーは岐阜県と長野県との県境に近い立地で行われてきたため、関東圏や関西圏など人口の多い地域には、まだ『THE SOLAR BUDOKAN』シリーズに触れていないリスナーも多くいるはずである。あくまで今年は例外とはいえ、このフェスならではの幅広いラインナップと、おそらくは配信画面越しでも少なからず伝わってくるであろうこのフェス特有の空気に、より多くのロックファンが触れる機会としても前向きに捉えられると思う。あと、大きい声では言わないほうが良いかもしれないが、例年家族連れの参加者が多いこのフェス。配信ならば1家族1枚のチケットで観れてしまう……!

開催まで1ヶ月強。出演アーティストの顔ぶれや日割りなど、今後は続々と情報が出てくるはずだ。9月の終わりから10月初旬の4日間。“夏”というには少々引っ張りすぎかもしれないが、フェス無き夏の終わりに、いまだ誰も観たことのない形のフェスがやってくる。


文=風間“太陽”

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