パ3割打者2人は史上最少……。かつての首位打者が語る好打のヒケツ
パ3割打者2人は史上最少……。かつての首位打者が語る好打のヒケツ
華麗な流し打ちを見せていた現役時代の篠塚氏(左)と同じ練習法を行っているソフトバンク・上林(右)。外

華麗な流し打ちを見せていた現役時代の篠塚氏(左)と同じ練習法を行っているソフトバンク・上林(右)。外角球を打つシルエットは、瓜二つだ

 今季も多くの記録が生まれた中で史上初の出来事が1つ。それが、パ・リーグでの3割打者の人数だ。今季、打率3割を記録したのは、首位打者を獲得した西武・秋山翔吾(.322)とソフトバンク・柳田悠岐(.310)の2人のみ。これまでの3人(1966、92年)を下回る最少人数だった。

「今の選手はキレイに打とうとし過ぎるよね。体勢が崩れることをイヤがる。理想の形でボールをとらえての会心の当たりなんて、そうはない。投手だって打たせないように投げているんだから。それなのに……」

 そう語るのは、84、87年にセ・リーグの首位打者に輝いた篠塚和典氏だ。類まれなバットコントロールで外角球を華麗に流し打つ。その芸術的な打撃で安打を量産したヒットメーカーがポツリと嘆いた。それを聞き、オリックス・小谷野栄一が話していた「たとえ、体勢が崩されたとしても、それを想定してバットを振っていたら、崩されたことにはならない」という理論をぶつけてみると、篠塚氏の考えも同じだった。

「そうなんだよ。もちろんキレイな形、理想の形を体に覚えさせるのは大事なこと。そこから、どう幅を広げていくかが率を上げることにつながる。だから、体勢が崩れた状態で打てるように練習しておく必要があるんだよね」

 球種を告げて投じる打撃投手のボールを打ち返してスタンドに放り込む。ティー打撃で打ちやすいコースにトスを上げられたボールに向けてバットを振る。これらを繰り返しても、打撃の幅が広がることはないと断言する。

「大事なのはどんなボールが来るか分からない状態で常に練習すること」と話し、例に自らも行っていた「どう弾むか分からないワンバウンドを打つ練習」を挙げた。ヤクルト・山田哲人が行う11種類のティー打撃の1つでもあり、今季134試合に出場し、108本の安打を放ってブレークの兆しを見せたソフトバンク・上林誠知もワンバウンドのボールを打つ練習をしている1人。彼もまた、優れたバットコントロールを持つ選手で、逆方向に流し打つシルエットは篠塚氏と瓜二つだ。

 崩されても打てるように――。その考えの根底には、絶対的な自信を持つコースと球種を持つことも大事だという。そもそも篠塚氏は現役時代『内角のストレート』を待って打席に入っていた。

「あんまり言ったことはないんだけど、俺が一番得意だったのは内角なんだよ。それも真っすぐ。そこに来たら絶対に打てる自信があったし、狙っていた。だから、その意識で打ちに行く。でも、外角に変化球が来るだろ? そしたらやっぱり体勢は崩れるんだよな。それをどう打つかを考え、意識しながら練習していたんだよ」

『内角の直球』という確たる“幹”を作り、そこから伸びる“枝・葉”が、『外角球を華麗に流し打つ』あの芸術的な打撃だった。

「広島の達川さん(光男・現ソフトバンクコーチ)にはバレていたんだよ(笑)。『篠塚に内角を投げたら絶対に打つ』と言われたから」

 そう笑う、かつての首位打者が続ける。

「でも、その自信が大事。だって自信があると余裕が生まれるだろ? すると変な力が入らない。だから体勢が崩れても焦らない。それに、崩れても打つ練習をしているから自信だってある。その好循環を練習から自分で作らないといけないんだよね。だから、俺はコーチ時代、選手の練習での意識を見ていたし、その意識を持つように指導していた。やっぱり練習でできないことを試合でやるのは難しいから」
 
 オフシーズンに入り、年が明ければ自主トレが始まり、2月からはキャンプがスタートする。これから実戦を見る機会はなくなるが、その間、選手の練習に目を向ければ『試合でのプレー』から違う側面が見えてくるはず。わずか2人だった今季のパの3割打者だが、果たして来季は――。次のブレーク候補を探すのは、シーズンインまでの、この期間だ。

文=鶴田成秀 写真=BBM
(更新日:2017年12月5日)

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