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ヤマネコがいつ、どのように人間の飼い猫になったのか?飼い猫のルーツを探る研究(ポーランド)

カラパイア

いつからヤマネコは飼い猫になった?
いつからヤマネコは飼い猫になった?/iStock

 猫の生態が謎めいているように、猫の起源も謎に満ち溢れている。猫は現在、世界的に最も人気のあるペットの1種となったが、どのようにして飼い猫になったのかは完全に解明されていない。

 というか、今に至っても猫は完全に人間に飼いならされているわけではないという事実が、さらに状況を複雑にしている。

 新たな研究では、新石器時代の人間と猫の関係を調べ、猫がいつ飼い猫になったのかを調べた。その結果、現在の飼い猫の祖先は、農耕を始めた人間たちにくっついて近東からヨーロッパへ渡ったリビアヤマネコである可能性が高いことがわかった。

 だがすっかり人間のペットになっていたのかというと、そうではないという。

人間にエサをもらっていたわけではなかった


 農耕を始めた人間たちにくっついて大陸に渡ったヤマネコだが、完全に人間のペットになったわけではなかったという。

 約6000年前のポーランドの新石器時代の洞窟から見つかった6匹の猫の骨に含まれていた窒素同位体の割合を調べたところ、この猫たちは人間の作った穀物を荒らしていたげっ歯類をエサにしていて、人間や飼われていた犬と同じものは食べていなかったことがわかった。

 つまり、当時の猫たちは、人間からエサをもらっていたわけではなく、現代のコヨーテと似たようなライフスタイルを送っていたということだ。

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洞窟から発見された古代のヤマネコの骨


猫は人間の近くにいたが、飼われてはいなかった


 現代のすべての猫の祖先は「リビアヤマネコ」だということになっている。だが、DNAベースで飼い慣らされた猫と、少し体が大きいが、それ以外は現代のイエネコとほとんど変わらないリビアヤマネコを識別するのは、少し注意しなくてはならない。

 紀元前5300年ごろ、野生のヤマネコが、人間の住まいに備蓄されている作物にネズミなど齧歯類が群がっていることに気がついた。猫たちは、わらわらと無数にいて簡単に獲ることができるネズミに忍び寄った。

 紀元前4200年から2300年の間、中央アジアで農耕を始めた人たちがヨーロッパへ移住し、すでにヨーロッパに住んでいた狩猟採集民族と交流し始めた。それについていったヤマネコもいたことだろう。

 南ポーランドの洞窟から、約6000年前のリビアヤマネコの骨が見つかったわけだが、研究チームのポーランド、ニコラウス・コペルニクス大学の動物考古学者、マグダレーナ・クライツァールズによると、ヤマネコたちは人間と一緒にヨーロッパにやってきたわけではなく、ただ獲物を追ってきただけだと言う。

 ポーランドで見つかった6匹のリビアヤマネコの骨の化学組成を調べてみた。食物の栄養素は食物連鎖を経るにつれて、窒素15がほかの安定窒素同位体(窒素14)よりも多くなる傾向があるため、食うものと食われるものの間の比率はその動物がなにを食べていたかをおしえてくれる。

 人間が作った作物は肥料が使われていて窒素15が豊富なので、それを食べていた齧歯類の肉も窒素濃度が高いことになる。

 リビアヤマネコの窒素15濃度もかなり高かった。これは人間がストックしていた穀物をエサにしていた齧歯類のそれと近かった。これは、分子レベルでの決定的証拠で、ヤマネコのエサの75%から95%が人間の穀物を食べていた齧歯類だったことを示している。

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iStock

家畜というよりは共生


 ヤマネコの骨を、古代の人々や飼われていた犬のものと比較してみたところ、人や犬のほうが窒素15の割合が高かった。これは、人間がおもに農作物を食べていて、それを飼い犬にも分け与えていたことを示す。

 猫はといえば、人間の住居の近くにいて、作物を食い荒らして丸々太ったネズミを食糧にしていて、人間の隣人としてのメリットを最大限に利用していた。

 ヤマネコの窒素15の割合は人間よりはわずかに低いが、それでも高いレベルを保っていたということは、彼らが作物を荒らす害獣を食べていたが、ほかの獲物も口にしていたことを示している。

 生態学者は、こうしたライフスタイルを人間との共生と呼ぶ。現代でも都市部に棲むキツネやコヨーテ、アライグマやカラスなどがそうだ。

 猫にとって共生は、家畜化への第一歩だったのかもしれない。3000年後のローマ時代、ポーランドにある人間の住居跡で、初期の猫の骨が見つかっていて、その窒素15の割合は、人間や犬にかなり近かったという。

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リビアヤマネコとヨーロッパヤマネコの違い


 リビアヤマネコが初めて人間に(というかネズミに)くっついてヨーロッパに向かったとき、すでにそこにヨーロッパヤマネコが生息していた。

 彼らの窒素15の割合は、リビアヤマネコと同じようなものだったが、その数値はもっとばらばらだった。つまり、リビアヤマネコがおもに作物の害獣ばかりを食べていたのに対して、ヨーロッパヤマネコは、地元にいる別の野生獲物もエサにプラスされていたからだろう。

 おそらくこれが、最終的にリビアヤマネコは人間に飼い慣らされたのに、ヨーロッパヤマネコはそうならなかった理由の一端かもしれない。

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iStock

いつどのように人間の飼い猫になったのか?まだわからないことだらけ


 クライツァールズらが調べた、リビアヤマネコの骨が見つかった洞窟は、人間が農耕を営む肥沃な低地を見渡すことができる丘の上にあった。

 人々はもともとこの洞窟で生活していて死んだのか、より大きな捕食者に襲われたかして、最終的にこの洞窟にたどり着いたのかもしれない。下の低地で農耕を営んでいた人たちよりは、小規模な集団だっただろう。しかし、彼らが飼っていた猫を埋葬したという証拠はなにもない。

 この洞窟は、近くの谷の広大な農耕集落からおよそ30キロから45キロ離れた場所にある。埋められていた6匹の猫には、ここにやってきたなんらかの事情がべつにあったのかもしれないが、わからないことが多すぎる。

 ポーランドのほかの新石器時代の住居跡からは、猫の骨は見つかっていない。猫たちが人間の近くに住んで、エサは自力で狩っていたのか、実際に人間に飼われてエサをもらい、生活を共にしていたのかどうかは、はっきり結論を出せる証拠はない。

 今も猫は謎めいた存在だ。真相解明にはまだまだ時間がかかるかもしれない。

この発見の詳細は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されている。
Ancestors of domestic cats in Neolithic Central Europe: Isotopic evidence of a synanthropic diet | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2020/07/09/1918884117
References:inverse / arstechnica/ written by konohazuku / edited by parumo

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