ドラフトの卓上には2つのリストが。獲得候補と、もう1つは戦力外候補。
ドラフトの卓上には2つのリストが。獲得候補と、もう1つは戦力外候補。
ドラフト会議が終わって10日、各球団は指名選手への挨拶に東奔西走の毎日のようだ。 その間にも、アマチュア野球の公式戦は続いている。


若者たちが心を躍らせて指名の声を待つドラフト会議。その裏側では残酷な“選別”も実施されている。 (photograph by Kyodo News)

 ドラフト会議が終わって10日、各球団は指名選手への挨拶に東奔西走の毎日のようだ。

 その間にも、アマチュア野球の公式戦は続いている。大学野球なら、「明治神宮野球大会」の予選にあたる各地区の出場校決定戦が行なわれ、また京セラドーム大阪では、社会人野球の秋の全国大会である「日本選手権」が始まった。

 このドラフトで指名した選手ももちろん“最後のご奉公”として出場するし、来年以降の“候補選手”のプレーぶりも見ておかねばならない。

 スカウトたちは、入団交渉の合間に現場にも足を運んで、忙しい日々はドラフトの後も続いている。

 ドラフト会議の2日後、東北楽天から戦力外通告7選手の名前が公表された。歩調を合わせるように、各球団からも次々と戦力外が発表された。

選手リストを見て「じゃあこいつ、クビ……」。

 こうした動きは毎年のことだ。

 ペナントレースが終了した球団は、10月に入るとすぐ第一次の戦力外通告を発表する。そしてさらに、ドラフト会議が終わって、新戦力の大筋が見えたところで、2回目の戦力外通告が行なわれる。

 ドラフトを数日後に控えたある日、ある球団のスカウトの方から、こんな話を耳にした。

「ドラフト会議っていうのは、すごいんですよ。テーブルの上に“リスト”が2種類置いてあるんです。1つは指名候補者のリスト、もう1つはウチの球団に在籍している選手のリスト。つまり“選手名鑑”みたいなものですね。指名が始まるでしょ……1位で左ピッチャーが獲れた!ってなると、選手名鑑係の編成担当が『じゃあ、こいつ、クビやな……』って、ウチの左ピッチャーの名前の上に“×”付けるんです。2位でショートが獲れた! そうすると今度は、ウチのショートが1人クビになる。それが、こっち側にとってのドラフトっていうものなんですよ」

「自分も戦力外になっているから嫌なもんです」

 笑いをまぶして語ってくれたから、余計に残酷な現実があぶり出される。

「自分らスカウトも、一度は戦力外通告にあってる者がほとんどなわけですから、そりゃあ嫌なもんですよ、自分の時のこと思い出してね。でも、それがプロ野球の現実ですから、しょうがない。戦力外になった選手たちだって、何年か前には、ああして晴れやかな瞬間があったわけでしょ……」

 別の球団のスカウトの方は、こんな話で「今のドラフト」を表現してくれた。

「以前は高校生なら最低でも3年、ほとんどの球団が4年から5年は様子を見てくれたんですが、今は2年で戦力外になる場合もありますよね。見込みがなかったら、早い時期に一般社会に戻してあげたほうが再出発もしやすいだろう……っていう、ある意味“親ごころ”なんでしょうけど、ハタチちょっとの中途半端な年齢で就職するのは、なかなか厳しいのが現実です。

 入団の時に担当したスカウトが、第二の人生の手助けをしなきゃならない場合もあるんですよ。これは、われわれにとっても、なかなか厳しい。自分たちだって、そんなに“パイプ”持ってるわけじゃないですからね」

戦力外になっても、そこまで手を差し伸べない。

 今年のドラフトでは、支配下ドラフトで82名、育成ドラフトで32名の選手たちが指名された。

「今年の支配下、大学・社会人、多かったでしょ。大卒や社会経験持ってる選手に対しては、戦力外になっても、そこまで手を差し伸べることもないですからね。そのへんが数字に表れたともいえるんじゃないですかね」

 今年の支配下ドラフトでの指名数は、高校生30名、大学・社会人52名。

 例年に比べて、高校生に候補が少ないという前評判だったが、それにしても“大・社”の人数が2倍近くにものぼった。

高校生がいきなりプロに……はあまり勧めたくない。

「2、30年前に比べれば、高校野球のレベルも上がってますけど、プロのレベルはもっともっと上がってます。個人的な考えを言わせてもらえれば、よっぽど突き抜けた実力を持っていなければ、高校生がいきなりプロに……っていうのは、あまり勧めたくないですね。いろんな事情はあると思いますが、日本にはアマチュアに大学、社会人ってきちんとした“ステップ”が設けられている。こういう国は、世界で日本だけなんですね。日本ほど成熟した社会人野球なんて、世界のどこ探したってないですから。

 せっかくそういうステップがあるんですから、じっくりと確かな体力と技術を身につけてからでちょうどいいと思うんですよ。ボク自身、高校からプロに入ったんですけど、最初の1、2年は、ほんとに、あれもできない、これもできない……で、『オレ、どうしてこんなに未熟なのにプロに入ってしまったんだろう……』って、へこみっぱなしの毎日でしたから」

 ドラフトの10月。プロ入りの11月。

 一方で、荷物をまとめて去っていく人も。

 高校野球は全国で秋季大会が進んで、スカウトたちの活動は、すでに「2018ドラフト」に向けて開始されている。

text by 安倍昌彦
「マスクの窓から野球を見れば」

(更新日:2017年11月14日)

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