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最年少タイトルの藤井聡太棋聖「名勝負10番」に人間ドラマ

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2020年7月16日の棋聖戦(写真・代表撮影)

 

「まだ、天井が見えない」 
 藤井聡太棋聖(18)の強さについて、渡辺明二冠(36)は、こう表現する。史上最年少でのタイトル獲得を果たし、最年少での二冠獲得すら視野に入った藤井棋聖の進化は、いったいどこまで続くのか。 

 

 将棋界の師弟関係を追ったノンフィクション『師弟』(光文社刊)の著者であるカメラマン・野澤亘伸氏は、その過程が三段階に分かれると話す。

 

 

「デビューからの連勝劇、初黒星までが『黎明期』。トップ棋士たちとの対戦が増えた『成長期』と続きます。そして今年、異次元の『第三形態期』に入ったといえます」 

 

 7月19日に18歳になったばかりの藤井棋聖の成長ぶりは、“天才だらけ” といわれる棋界の人間の常識をも超える域に達しつつあるという。

 

「中学生のころの藤井棋聖は、序盤や中盤で経験値の差が出ることがありましたが、終盤で取り返すという展開が多かった。しかし、現在はどの局面をとってもとてつもなく強い。渡辺三冠をして、『天井が見えない』と言わしめたのは、空恐ろしさすら感じます」

 

 名人位を史上最年少の21歳で獲得した谷川浩司九段(58)も、かつて本誌の取材に、こう答えている。

 

「藤井棋聖はこの半年ほどで、急な勝負の流れを緩やかに戻す “ギアチェンジ” を身につけた。これは、羽生(善治九段)さんが10代後半のころでも、持っていなかった力です。

 

 いまの将棋界は、渡辺二冠、豊島将之竜王・名人(30)、永瀬二冠の “三強時代” です。そこに藤井棋聖が、どう割って入るのか。将棋の内容を見ていると、楽しみですね」 

 

 以下では、ここで紹介するのは、野澤氏が選んだ「名勝負10番」だ。最年少での二冠獲得となれば、“藤井一強” 時代の到来が近づく。

●新人王戦(2017年3月10日)VS.大橋貴洸四段
 観戦記者たちの多くは、大橋貴洸六段(27)に負け、“藤井初黒星” を予想したという。

 

「対局は、藤井棋聖が大橋六段のミスを誘い、大逆転。“絶対に諦めない” という、藤井棋聖の持ち味が表われた一局でした」(野澤氏・以下同)

 

写真・朝日新聞

 

●上州YAMADAチャレンジ杯2回戦(2017年6月7日)VS.阪口悟五段
 終盤、藤井棋聖は激しく膝を叩いた。

 

「ミスをして、勝勢から一気に敗勢になったんです。しかし、土壇場で阪口悟六段(41)が痛恨の敗着。それを藤井棋聖は逃さず、勝利しました。対局後、2人ともぐったりしていましたね」

 

 

●竜王戦決勝トーナメント1回戦(2017年6月26日)VS.増田康宏四段
“東の天才” と呼ばれる増田康宏六段(22)に勝利し、藤井棋聖は、公式戦29連勝の新記録を樹立。

 

「のちに増田六段に話を聞くと、『(報道陣に囲まれて)正直、うざかった。でも、自分が唯一食らいついていかなければならない相手です』と、藤井棋聖に闘志を燃やしていました」

 

 

●竜王戦決勝トーナメント2回戦(2017年7月2日)VS.佐々木勇気五段
 端整な顔立ちで女性人気が高い、佐々木勇気七段(25)。だがこの日の顔は、殺気に満ちていた。

 

「対局前、藤井棋聖は神経質な表情をしていて、雰囲気が違っていました」。藤井棋聖は敗北し、連勝記録は29でストップした。

 

 

 

●朝日杯準決勝(2018年2月17日)VS.羽生善治竜王
 棋界のレジェンド、羽生善治九段(49)との公式戦初対局だったが、落ち着き払っていたという藤井棋聖。

 

「対局は、藤井棋聖の勝利。終局後の大盤解説で、羽生九段は負けた棋士とは思えない淡々とした口調で話していました。しかし、最後まで藤井棋聖の強さを口にすることはありませんでした」。羽生九段の闘志にも火をつけた。

 

 

●竜王戦決勝トーナメント3回戦(2019年7月5日)VS.久保利明九段
 華麗な駒捌きで知られる久保利明九段(44)だが……。

 

「別名は、“粘りのアーティスト”。藤井棋聖は、久保九段の追い上げを振り切り、深夜に及ぶ激戦を制した。ある棋士は、『これぞ人間の将棋!』という称賛の声を上げていました」

 

 

●王将戦挑戦者決定戦(2019年11月19日)VS.広瀬章人竜王
 終盤まで藤井棋聖が優勢、王将位挑戦者まであと一歩だった一局。

 

「控室が、『あれ!?』とどよめいたそうです。持ち時間を使い切り、1分将棋となっていた藤井棋聖が、まさかの悪手を指したのです。“棋界一空気を読まない男” 広瀬八段(33)は、チャンスを逃しませんでした」

 

 天才も、時には誤る。

 

●王位戦挑戦者決定戦(2020年6月23日)VS.永瀬拓矢二冠
 永瀬拓矢二冠(27)は、6月4日の棋聖戦挑戦者決定戦でも、藤井棋聖に敗れている。

 

「永瀬二冠は対局後の会見で、『力負け。追いつけるように勉強したい』と言いました。タイトル保持者が、年下で段位も低い棋士に、こう言えるのはすごいことです。永瀬二冠の謙虚さですね」

 

●棋聖戦第2局(2020年6月28日)VS.渡辺明棋聖
“現役最強” の一角、渡辺明二冠との一戦。「その渡辺二冠が、藤井棋聖に連敗するとは思いませんでした。藤井棋聖の58手め3一銀は、AIが6億手以上を計算して最善手としたのに、23分で指した。最後、渡辺二冠が負けを悟り、敵陣に角を打って投了の形を作りました。トップ棋士をここまで追い込む強さに脱帽しました」

 

 

●王位戦第1局(2020年7月1日、2日) VS.木村一基王位
 強靱な受け、勝負を捨てない棋風から、“千駄ヶ谷の受け師” の異名を取る木村一基王位(47)との一戦。

 

「藤井棋聖の鋭い攻めを、プロたちが唸る妙手でかわし続けていました。藤井棋聖が対局を制しましたが、少しでもミスをすれば、勝敗は入れ替わっていたでしょう」。七番勝負の行方やいかに。

 

※対戦相手の段位・肩書は、対局当時(渡辺二冠を除く)

 

写真・野沢亘伸

 

(増刊FLASH DIAMOND 2020年8月20日号)

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