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「伝説の走塁」だけではない。伊原春樹が日本シリーズで演出した会心の走塁

週刊ベースボールONLINE


1986年の日本シリーズ第8戦、意表を突いた盗塁から勝ち越し点を挙げ、西武は広島を下して日本一に輝いた

 日本シリーズでも、過去にさまざまな名シーンが生まれているが、“走塁”に関して言えば1987年、西武対巨人の日本シリーズが思い浮かぶだろう。

 西武が3勝2敗と王手をかけて迎えた第6戦(西武球場)、二死から一走の辻発彦が秋山幸二のセンター前ヒットでクロマティの緩慢な返球のスキを突いて一気に本塁を突いた走塁だ。三塁コーチャーの伊原春樹と辻がまさに“人馬一体”となって、一塁から2つ先だけでなく、3つ先の塁を陥れ、貴重な追加点を奪って、西武は巨人を倒して連覇を成し遂げることができた。

 まさに“伝説の走塁”として語り継がれているプレーだが、伊原氏の中には大舞台でそれ以外にも会心だった走塁はいくつもあるという。その中の1つが86年、広島との日本シリーズで生まれた。

 史上初の第8戦で決着がついたシリーズだ。広島市民球場で行われた初戦が引き分けに終わると、西武はそこから3連敗。3敗1分けと、崖っぷちに立たされてしまった。しかし、第5戦(西武球場)、延長12回に投手の工藤公康(現ソフトバンク監督)がサヨナラ安打を打つと流れが変わる。広島に戻った第6、7戦を西武が連勝して五分に持ち込み、第8戦へとなだれ込んだ。

 雌雄を決する一戦。西武は3回に2点を先制されたが6回、秋山が同点2ランを放ち、宙返りでホームイン。そして同点のまま迎えた8回だ。先頭の清原和博が安打を放ち、続く大田卓司が意表を突く送りバント。しかし、投手の金石昭人が判断良く、清原を二封し一死一塁。秋山が三飛に倒れ、二死となった場面だった。

 このとき、伊原氏は一塁コーチャーだったが、大田に耳打ちしたという。

「俺が声を出したら、ダーッと行け」

 大田は「エッ、いいんですか」とびっくりたが、金石のクセを伊原氏は100パーセント把握していた。そして6球目。完ぺきにホームへ投げるというときに声を出した。大田も思い切り走り、結果はセーフ。これで二死二塁。打席にブコビッチが入ったが、それまで広島外野陣は後ろに下がっていた。しかし、ランナーが二塁へ行ったことで、前進守備を敷いてきた。ここで、ブコビッチがフォークのすっぽ抜けを叩いた打球は左中間へ。センターの長嶋清幸は必死に追いかけたが前進守備だった分、届かず。大田がホームにかえり、3対2。これが決勝点になり、西武が日本一となった。

 現在行われている日本シリーズでも第2戦(ヤフオクドーム)で決勝点をもぎ取ったソフトバンクの今宮健太のヘッドスライディングが話題となったが、それほど派手ではない、隠れた好走塁も覇権の行方を左右するかもしれない。

文=小林光男 写真=BBM

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