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プロの壁に立ち向かう清宮幸太郎。待ち遠しい才能開花の時【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#125】

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プロの壁に立ち向かう清宮幸太郎。待ち遠しい才能開花の時【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#125】

中田以外湿っている打線

 1時間ほど前、オリックス4回戦を見終えたばかりだ。Jスポーツ中継を消して、しばらくぼーっとしていた。立ち直るまでに時間を要した。有原航平はまた勝てなかった。7回を2安打無失点に抑えて、残りのイニングを実績のある宮西、秋吉にリレーする。が、この投手交代はオリックスに利したようだ。宮西は1失点、秋吉は(9回2死無走者まで行きながら)四球2つ出してロドリゲスにサヨナラ弾を喫する。
 
 この日、今シーズン初めて観客を入れた形でプロ野球が開催され、実に3球場でサヨナラホームランが飛び出した。ほっともっとフィールド神戸、甲子園の2球場は雨天中止と降雨コールドだったから、実質4分の3という高確率でサヨナラ弾が出たことになる。これはもう、観客がドラマをつくったとしか言いようがない。京セラの観客は拍手でバファローズを後押ししていた。僕はとても好ましい印象を受けた。プロ野球はやっぱりファンあってのものだ。一投一打に球場が呼吸しているようだった。
 
※但しワンシーンだけ、伏見寅威選手の打席で、プレーを邪魔するヤジがあった。球場が静かだからヤジ(とそれに反応した笑い声)が聞こえてしまうのだった。あれはテニスじゃないけど「クワイエットプリーズ!」だ。今は現場とファンが協力して「野球」を守っていく時期じゃないだろうか。
 
 といって「9回2死無走者」からサヨナラ被弾したチームのファンとしては、到底「観客がドラマをつくった」と綺麗ごとを言ってもいられない。もう、ドラマなんてつくらなくていいのだ。リードしたまま何ごともなく逃げ切ってほしかった。正直言ってオリックスの強さにたじたじである。ロッテ戦でいきなり「同一カード6連敗」してくれたから、先方が最下位になってくれてるが、勢いはファイターズより上だ。第一、打線がいい。ジョーンズ、ロドリゲスに当たりが出てきたし、何と言っても現在、リーグの首位打者・吉田正尚(.375 7月10日23時現在)がいる。
 
 一方、ファイターズは本当に打ててない。当たっている中田翔ですら3割に届かない。チーム打率は12球団ワースト。「近藤健介四球→中田翔長打」のところを回避されてしまうと、なかなか攻め手が見つからない。
 
 しかし、ちょっと珍しいくらい打線が湿っていると思う。「中田以外全員不調」(!)くらい言っていいんじゃないか。近藤健介ですら(四球を選び、出塁率こそ高いが)本来の安打製造機ぶりは発揮できてない。
 
1、西川遥輝(中)
2、大田泰示(右)
3、近藤健介(左)
4、中田翔(DH)
5、渡邉諒(二)
6、清宮幸太郎(一)
7、ビヤヌエバ(三)
8、石川亮(捕)
9、中島卓也(遊)
 
 これがオリックス4回戦(10日)のスタメンだ。この日の新味は石川亮が今季初スタメンというところ。この試合で明るい兆しが見えたのは2安打の西川遥輝くらい。但し、西川は肩痛の不安を抱えているようで、守備面からして本調子ではない。

大田と渡邉、清宮の置かれた状況の違い

 なかなか重症だなぁと思うのは2番大田と6番清宮だ。大田は「開いて迎えにいってしまう」悪いときの特徴が出ていて、併殺打を連発している。清宮は「間が取れず、後ろに重心が残る(かかと体重)」状態。長距離砲の持ち味が消え、手打ちになっている。
 
「近藤→中田」のストロングポイントを生かし、打線を「線」にしていくためには接合部分の2番大田、5番渡邉がすごく重要だ。下位や西川が出塁しチャンスをつくっても大田併殺でチャンスをフイにすると主軸にはまわらない。打線が切れる。渡邉はやっと京セラでヒットが出たけれど、ここが弱いと4番中田が勝負してもらえない。チームが上向くかどうかは接合部分にかかっている。栗山監督は今季「2番渡邉、5番大田」を構想し、結果が出ないと見るや今シリーズで「2番中島」を試してみたりしている。
 
 ファイターズ打線のウイークポイントは7、8、9の下位打線にある、というのが定評であった。今はまんべんなく弱いのでわかりにくいが、ビヤヌエバを獲得したのはそのピンポイント補強である。彼が期待されてるのは(最初の頃、レアードが担っていたような)「意外性の大砲」だ。オリックス4回戦ではその成果が出た。連続三振してたかと思うと、いきなり追加点の2ランを放り込んだ。まさに「意外性の大砲」。いくら三振しても、たまにホームランを打ってくれればいい。
 
 では、この打線の並びを見て、いちばん起爆力というか打線の印象そのものを変える潜在力があるバッターは誰かというと、僕は清宮幸太郎だと思う。清宮は打ちだしたら「意外性の大砲」ではおさまらない。打線の並びのなかでも左のスラッガーは絶対必要だ。中田の後ろを打つ5番打者の「最適解」は、本来は渡邉、大田のような右打者よりも「中田以上にホームランの怖さがある左」、つまり、本格化した清宮なのだと思う。
 
 僕は大田、渡邉の状態が上向くのは時間の問題だと思っている。大田は持ち味を殺したくないから併殺打をガンガン打ってもらうしかない(?)が、これまでのシーズン見てきたように必ず復調する。この2人は「復調」の範囲なのだ。
 
 清宮は違う。「成長」とか「本格化」という領域だ。まだ僕らは持ち前のポテンシャルを存分に開花させた清宮を見ていない。見ていないということは、逆に言えば伸びしろだ。「打線のつながり」や「意外性」ではなく、ファイターズ打線を根本から変えられるのは清宮ただ一人じゃないだろうか。
 
 ところで清宮といえば先日、面白いことがあった。僕が試合中、こんなツイートをしたのだ。「苦しんでるなぁ清宮。自分で見つけるしかないもんな。間が取れない。体重が後ろに残る。少年野球なら歩き打ちのトスで調整するところだなー」。
 
 そうしたら森本稀哲からリプが来た。「シーズン中に野手は必ずあの現象が起こります。これは自分で乗り越えなきゃなんないです」。
 
 思っていることは一緒だった。自分で見つける。乗り越える。これは打撃コーチがどうこうできるものじゃないし、また本人のためにどうこうしちゃいけないのだ。大器・清宮幸太郎は今、野球人生のなかで最大の壁に挑んでいるところだ。いつ変わるか、そこに注目していこうと思うのだ。

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