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豊ノ島の引退で考える「関脇」問題。初昇進から1年の成績が未来を占う?

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豊ノ島というと、2010年の優勝決定戦で白鵬に敗れた一番の印象が強い。周囲の拍手が彼の奮闘を物語っている。 (photograph by Kyodo News)

 少し前の話になるが、豊ノ島が引退した。

 角界でも屈指の人気者であり、バラエティ番組などでも目にする機会の多かった力士だ。最近では白鵬と遠藤、強いて言えば炎鵬くらいしか一般知名度のありそうな力士がいないことが相撲ファンとしては寂しい限りだが、豊ノ島については知っているという人が意外なほど多い。これは彼の土俵外での存在感の大きさを物語っている。

 豊ノ島の凄さは、メディア出演と成績が反比例しない点にある。

 本業への影響を懸念してテレビ出演を断る力士もいる中で、豊ノ島は休場中はメディアに出ていても、本場所になればしっかり結果を残す。上位で戦いながら大相撲の広報役まで果たすのだから、これほど貴重な力士はそういない。

 そんな豊ノ島のキャリアで有名なのは、2010年九州場所の白鵬との優勝決定戦と、2016年初場所で琴奨菊に勝った一番だろう。

 最高位が関脇の力士であれば、格上力士に番狂わせを起こした取組が記憶に残りそうなものだが、豊ノ島は複数回優勝争いに絡んでおり、その場所の印象が強い。

豊ノ島の爆発力は平均の4倍。

 豊ノ島の成績で興味深いのは、11勝以上の場所、つまり大勝ちの比率が非常に多いことだ。関脇以下の力士全体の成績では、11勝以上する比率は全場所の5%程度である。関脇以下で1場所あたり2名程度と考えると想像しやすいと思う。

 しかし豊ノ島は、この数値がなんと20%を超えているのである。

 一般的な関脇以下の力士と比べて大勝ちの比率は約4倍。言い換えると、1年に1度以上は印象的な活躍をすることになる。豊ノ島の爆発力が突出していることがわかる。

関脇での勝ち越しが一度もない理由は?

 しかし意外なことに、豊ノ島は関脇で5場所を戦いながら勝ち越しは一度もない。

 小結では8場所を戦っており、そのうち3場所勝ち越しているので決して上位で勝てない力士というわけではなく、巡り合わせもあった。

 豊ノ島が関脇で迎えた場所が多い2008年から2012年は、日馬富士や把瑠都、琴奨菊に稀勢の里、そして鶴竜と大関昇進が相次いでいる。最終的に6大関となったうえに、その下には豪栄道や栃煌山といった実力者もひしめいていた。

 その力士たちを相手に1場所勝ち越すだけでも立派だが、関脇として結果を残し続けるのはさらに難しい、ということだろう。

 番付が上位になればなるほど、昇進するには実力だけでなく巡り合わせも重要になる。小結で勝ち越しても関脇が落ちてこなければ上がれないこともあるし、上位が揃って負け越して前頭5枚目がいきなり関脇に昇進ということもある。地位を守ることが難しいのが関脇という地位なのである。

関脇で勝てない力士は実はとても多い

 関脇の成績の特徴は、以下の4つのタイプに分類できる。

1.関脇で勝ち越し経験が無い力士
2.関脇で勝ち越し経験はあるが二桁勝利経験が無い力士
3.関脇で二桁勝利経験はあるが大関に昇進していない力士
4.大関に昇進した経験のある力士

 昭和33年以降の入幕で関脇に昇進した経験がある力士は136人いるが、内訳としては1が38名、2が22名、3が16名、4は60名である。

 1には、豊ノ島に加えて先代の栃東や「ホラ吹き金剛」という愛称で親しまれた金剛、優勝経験者で言えば、琴富士や旭天鵬もこれに該当する。

 2のリストを見ていくと、オールドファンには懐かしい明武谷や若秩父、昨年亡くなった逆鉾、現在は親方の栃乃和歌や水戸泉、嘉風もこれに該当している。

 関脇が通過点という力士であればともかく、多くの力士にとって関脇は生き残ることも難しい地位なのである。

最初の1年の成績がその後を決めがち。

 上を見れば平均勝率7割を優に超える横綱がいて、大関の平均勝率も6割ほどはある。

 現在で言えば横綱が2人、大関が2人、ほぼ同格の三役力士が3人いる。その中で勝ち越したり二桁勝利を手にする難しさは想像以上なのだ。

 そして、関脇経験者の成績推移を見て興味深いことに気がついた。

 関脇に昇進して最初の1年ほどの成績が、その力士のカテゴリを決めるケースが多いということだ。つまり昇進から1年間勝ち越せなかった場合、その壁を破るのが難しいのだ。

 大関に昇進した力士は、初めての関脇昇進から1年以内に二桁勝利を挙げるケースが多く、その割合は実に81%に上る。関脇で勝ち越しを経験した力士の68%が、昇進した最初の場所で勝ち越しを決めている。

 もちろん例外も存在する。清國、豪栄道のように関脇昇進から初めて勝ち越すまでに3年前後かかっても後に大関に昇進した力士もで初めての勝ち越しを決める力士もいる。しかし、後に飛躍する力士の多くが関脇に昇進してから早く結果を残す傾向があることは覚えておきたい。

鶴竜と栃ノ心は遅咲きタイプ。

 では、現役力士たちはどうだろうか。

 大関経験者のうち高安、照ノ富士、朝乃山、貴景勝は関脇昇進直後の場所で二桁勝利を挙げた。白鵬も初の関脇昇進から1年以内に二桁勝利を経験している。鶴竜と栃ノ心は初めての勝ち越し・二桁勝利まで2年近くかかった少数派だ。

 今後の活躍が期待される力士たちを見ると、御嶽海が初の関脇から1年で二桁勝利を決め、上位で二桁勝てないという評価はもはや当たらない。気が付けば関脇在位も11場所と長いが、ここから更なる飛躍をしてもおかしくない成績を残している。

逸ノ城は苦戦中、楽しみな正代。

 一方で逸ノ城は、関脇での二桁勝利経験が実はまだ無い。上位総当たりの地位で成績を出せるかが、現在の壁になっているのかもしれない。

 興味深いのは正代だ。

 関脇昇進までは壁らしい壁を経験すること無く昇進してきたものの、上位総当たりでは力及ばず番付を落としてしまう「エレベーター」的な力士だった。しかし今年の大阪場所で、関脇として初めての勝ち越しを決めた。初の関脇昇進から3年半の歳月を経て、確かな実力が身に付いてきたと言える。

関脇の最年少が27歳?

 全体の傾向として気になるのは、若手で関脇経験のある力士が少ないことだ。

 現時点で関脇経験がある力士の最年少は23歳の貴景勝、それに26歳の朝乃山と現大関が続き、次は27歳の逸ノ城である。本稿では関脇が厳しい地位だというデータを紹介してきたが、それ以前に関脇に昇進する若手力士自体が少ないのだ。

 貴景勝と同世代の阿武咲が小結まで昇進しているが、阿炎のように4場所連続で小結に在位しながらも上位の関脇陣が勝ち越して昇進できなかったケースもある。また大栄翔は上位総当たりの番付が7月には8場所連続となり、そのうち4場所で勝ち越したにもかかわらず関脇には昇進できていない。

 関脇になるのが難しく、関脇に踏みとどまるのも難しいのが令和2年の現実だ。だが、世代交代を果たすにはその壁を誰かが越えなければならない。

text by 西尾克洋
「大相撲PRESS」

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