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名作で観る世界の宮殿と城 (2) 芸術を愛した王とヘリからダイブした女王【映画で仮想旅行】

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執筆:Avanti Plus

主となるための熾烈な戦いを勝ち抜き、覇者となった者の生き方。巨大建築の設計に注ぎ込まれた繊細かつ緻密な技術。城が登場する映画は、そんなありようを最大限に利用し、物語を代弁させたものが多い。今回も引き続き城が舞台の映画をご紹介しよう。

美と芸術への愛を象徴するノイシュバンシュタイン城

「ノイシュバンシュタイン城」(ドイツ)と言えば『眠れる森の美女』(1959)のモデルとして知られる城だが、どうやら実際は、フリードリヒ・ヴィルヘルム4世が再建したホーエンツォレルン城や、この城に魅せられてシャルル・ペローが執筆したと言われるユッセ城などがモデルのよう。また、シンデレラ城のモデルとも言われているが、似ているような、似ていないような……。

白鳥城と言われるノイシュバンシュタイン城(JFL Photography/stock.adobe.com)

では、ノイシュバンシュタイン城で実際にロケを行った映画はなにか? それは。この城を建造したルートヴィヒ2世を描いたルキノ・ヴィスコンティ監督『ルートヴィヒ』(1972)や、ワーグナー生誕200年を記念して製作された『ルートヴィヒ』(2012)だ。

ノイシュバンシュタイン城は、1869年にバイエルン国王ルートヴィヒ2世が建造した比較的新しい城。芸術と美に執着するルートヴィヒ2世が、中世への憧れを具現化した建築物の一つだ。城塞としては役にたたない鉄骨コンクリート製で、建築デザインに指名されたのは、宮廷劇場の舞台装置や美術を担当していた画家のクリスチャン・ヤンク。

ただし、家臣は、芸術に傾倒し、国の財政をひっ迫させたルートヴィヒ2世を放置しておくわけにはいかない。精神鑑定にかけ、統治不能として廃位。その翌日、ルートヴィヒ2世は謎の死を遂げたと伝えられている。よってこの城の建設は止まり、現在も未完成のまま。

ルートヴィヒ2世が最期を迎えたシュタルンベルク湖(Fotolyse/stock.adobe.com)

ただし、芸術をこよなく愛するルートヴィヒ2世がいなければ、ワーグナー、およびバイエルン王国時代の芸術はここまで花開かなかっただろう。生前のルートヴィヒ2世は、ワーグナーのオペラ「ローエングリン」に感銘を受け、彼を呼び寄せて厚遇。「トリスタンとイゾルデ」を上演させるなどした。

美のみが追求されたノイシュバンシュタイン城は、城本来の役目を果たせないものの、今に文化を伝えるという皮肉。歴史に正しい評価を下すのは、その時代を過ぎてみなければ難しい。ちなみにヴィスコンティ版でルートヴィヒ2世を演じたヘルムート・バーガーは、美しかったとされる王の肖像画にうりふたつ。エリザベートを演じたロミー・シュナイダーとの雪の中のシーンが絶品なのでお見逃しなく。

ノイシュバンシュタイン城は他の作品でも印象的だ。イアン・フレミング原作のミュージカル映画『チキ・チキ・バン・バン』(1968)では、当時珍しかった車チキ・チキ・バン・バン号を盗むボンバスト男爵の居城。『大脱走』(1963)ではヘンドリー(ジェームズ・ガーナー)とコリン(ドナルート・プレザンス)が練習機を拝借して逃げるシーン。

また、寄宿舎で暮らす少年と古城の城主との望まない結婚を控えた少女の恋を描いたジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『わが青春のマリアンヌ』(1955)では、寄宿舎が見えるシーンで登場している。

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