「オレがいない方が強いんちゃうか」苦しんだ西武・森友哉、ついに復活。
「オレがいない方が強いんちゃうか」苦しんだ西武・森友哉、ついに復活。
「オレがいないほうが強いんちゃうか……」 二軍のグラウンドから恨めしそうにメットライフ(西武)ドームを見つめ、森友哉がため息をついた。埼玉西武ライオンズが59年ぶりとなる13連勝を続けている最中のことだ。


4年ぶりとなるクライマックスシリーズ進出を決めた西武にとって、森の復帰は非常に大きい。 (photograph by Kyodo News)

「オレがいないほうが強いんちゃうか……」

 二軍のグラウンドから恨めしそうにメットライフ(西武)ドームを見つめ、森友哉がため息をついた。埼玉西武ライオンズが59年ぶりとなる13連勝を続けている最中のことだ。

 3月5日のWBC強化試合・キューバ代表戦(京セラドーム大阪)で死球を受けて左ひじを骨折。その後二軍でリハビリと調整を続けてきた森は、思うように回復しない自分の左腕の状態に苛立っていた。

「一軍の試合? 見てはいましたけど、めちゃめちゃモヤモヤしてましたよ。なんせチームが強かったので、『オレ、いなくても平気やな』とか『戻ってもいる場所ないな』とか……。練習が終わったあとは、なるべく野球のことは考えないようにしてましたね。『無』です、『無』。そうすることでしかイライラを収められなかったですから」

 7月に室内練習場で打撃練習を始めても、不満は残ったままだった。

「バッティング練習を再開した直後も、思うようなバッティングが全然戻っていなかったです。自分のスイングができなかったいちばんの原因は、折れた左手の握力が落ちてしまったこと。そのためにバットも思い切り振れなくて、練習を再開しても全然ダメやって思ってました」

フルスイングできないことがストレスに。

 フルスイングを信条とする森にとって、思い切りバットを振れないこと自体がフラストレーションになった。

 二軍の試合にも帯同できず、西武第二球場に居残って汗を流す日々は続いた。

 残留組を担当する星孝典・育成コーチは振り返る。

「痛みもあったでしょうし、復帰までの道筋が、彼が思っていたより時間がかかったんでしょう。イライラしているのは見ていてわかりました。その様子を見て、僕が言ったことをただ強制的にやらせても、彼の身にはならないと思いましたね」

自暴自棄気味の森にコーチが与えた課題。

 自暴自棄気味になっている森に星コーチが与えたのは、練習メニューを自分で選ぶという課題だった。

「例えば3日間、残留組の練習があるときは、僕が“案”と大きく書いたメニューのプリントを渡しました。この中からやりたいことを選んで、と。『こういう練習がしたいんだけど、その方法がわからない』というときに、その方法を提案する形を取りました。森には自分の意思でやってほしかったからです」

 ある日、森から「下半身を強化する練習がしたい」という要望が出た。「もっと素早い動きができるようなトレーニングをしたい」という森の言葉に、星コーチは近距離ノックを勧めた。レガース一式をつけ、やわらかいボールで至近距離からノックを繰り返す。ピッチャーのワンバウンドのボールを捕球する訓練と同時に、それは体の切れを出すことにも役立った。同時に、個人練習ではゴムチューブを引っ張るトレーニングで左手の握力を強化した。森の最大の魅力であるフルスイングを取り戻すためだった。

 少しずつ、完全復帰に向けて前向きな気持ちがよみがえっていった。

岡田については「ライバルにもなれていないですよ」。

 森は振り返る。

「僕が一軍にいない間に、岡田さん(雅利)がたくさん試合に出ていました。もちろん、うれしいんですよ。同期入団で、高校の先輩。普段から仲もいいですから。でも同時に、悔しいという気持ちも大きかったですね」

 名前を挙げられた岡田は、森が故障離脱中、「森が戻ってきてからが本当の勝負だ」と話していた。そのことを森に告げるとこう苦笑した。

「ライバルにもなれていないですよ。シーズンの半分以上何もできなかった自分と、その間にたくさんの試合に出て、ピッチャーをリードして、いろいろな経験をしている。岡田さんはこの何カ月かの間にパワーアップしているから、今の僕では岡田さんの足元にも及ばないです」

初めて実戦を共にした辻監督も森の雰囲気を絶賛。

 森は8月15日に今シーズン初の一軍昇格を果たすと、その日の東北楽天イーグルス戦に7番DHで先発出場。3打数2安打3打点の活躍で勝利に貢献した。試合後、辻発彦監督は満面の笑みで森をこう評した。

「復帰戦で3打点とは、やっぱり持っている選手ですよ。公式戦では初めて一緒にベンチに入りましたが、雰囲気のある選手。完全復活となれば相手チームには恐怖でしょう」

 辻監督の予想通り、その後も2番からクリーンアップまでさまざまな打順で試合に出場し、3割3分7厘、打点10、3割を超える得点圏打率を残している(9月17日現在)。

「デッドボールの影響? うーん、でもやっぱり、内角にボールが来ると怖いですけど……。でも慣れていかないといけないですから、なるべく踏み込んでいくようには心掛けています。左ピッチャーからヒットが出れば、故障したときのことも忘れて、気持ちもラクになるかなって思っていますね。気持ち次第ですよ」

 ライオンズはリーグ優勝を逃したものの、9月17日には4年ぶりとなるクライマックスシリーズへの進出を決めた。開幕からチームをけん引してきた主力組に、疲労の色が見えてくるシーズン終盤。森が満を持して復活したのはチームにとっても極めて大きい。

「目標は1試合でも多く出ることです。そして1打席でも多く打席に立つこと。残り少ないシーズン、それでも一軍に上げてもらったので、その期待に応えられるよう、なんとかグラウンドに立ちたいなって思います」

 森にとっては試練の1年となった2017年シーズン。プレーオフでそのうっぷんを晴らすように、躍動してくれるに違いない。

text by 市川忍
「プロ野球PRESS」

(更新日:2017年9月22日)

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