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ドルトムントが証明した基本の大切さ。好調ヘルタを撃破した3バック対4バックのお手本戦術

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ドルトムントが証明した基本の大切さ。好調ヘルタを撃破した3バック対4バックのお手本戦術

キーマンが不在でも…

 ボルシア・ドルトムントは6日、ブンデスリーガ第30節でヘルタ・ベルリンを撃破した。リーグ再開から無敗と好調だった相手をいかに封じ込めたのか。ドルトムントが見せたのは3バックで戦うチームのお手本とも言うべき戦い方だった。(文:舩木渉)

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 時には基本に立ち返ることが勝利への近道になりうる。

 6日に行われたブンデスリーガ第30節で、ボルシア・ドルトムントはヘルタ・ベルリンに1-0の勝利を収めた。前節パーダーボルン戦に続く2連勝だ。

 リーグ優勝争いの様相はほとんど変わらない。首位バイエルン・ミュンヘンはレバークーゼンに4-2で勝利したため、2位ドルトムントとの勝ち点差は7ポイントのまま。逆転優勝の可能性は低くなっていくばかりだ。

 一方でチャンピオンズリーグ出場権を確保し、2位でシーズンを終えるという目標には近づくことができた。4位ボルシアMGと5位レバークーゼンがともに敗れ、3位のRBライプツィヒも引き分け。それによりドルトムントとライプツィヒの勝ち点差は4ポイントまで広がっている。

 ブンデスリーガ再開から3勝1分と無敗を続けていた好調のヘルタ・ベルリンに勝利したことは、単なる1勝以上の意味を持つだろう。しかも最終ラインの要だったマッツ・フンメルスを出場停止で欠き、前線の得点源アーリング・ブラウト・ハーランドも負傷中という状況ならなおさらだ。

 2人のキーマンが不在の試合で、ドルトムントを率いるルシアン・ファブレ監督はいかに勝ち筋を見出したか。システムやメンバーに手を入れて、奇抜なことにトライしたわけではない。好調な相手の攻撃を受けきってのカウンターを狙ったわけでもない。

 ファブレ監督は「あえて何もしなかった」と表現するのが正しいかもしれない。3-4-3のシステムを採用するドルトムントは、ヘルタの4-2-3-1に対して「3バックのチームが4バックの相手にはこうしましょう」という基本的な戦い方を徹底的に突き詰めていたようだった。

 鍵になったのはアクラフ・ハキミとラファエウ・ゲレイロの両ウィングバックだ。この2人のポジショニングとプレー選択が、攻守にわたって他の選手たちの判断基準になっていく。

 自軍ボールポゼッション時、ハキミとゲレイロは基本的に相手のサイドバックと同サイドのウィングの間にポジションをとる。中央はヘルタが人数を合わせて厳しくプレスをかけてくるため、狙うのはサイドバックの背後にできるスペースだった。

 3バックやセントラルMFからウィングバックにパスが渡った時、相手のサイドバックは必ずプレスをかけるためにボールホルダーに寄ってくる。ヘルタのセンターバック2人は、目の前のドルトムントのアタッカーたちを見ているため、積極的にサポートに出ることはできない。

 するとボールホルダーに寄せたサイドバックとセンターバックの高さが揃わず、間隔が空いて、サイドバックの背後には大きなギャップスペースが発生する。ドルトムントは、そこの攻略に重点を置いていた。

サイド攻略に重点を置いた崩しのパターン

 崩しのパターンはいくつか考えられる。例えば右ウィングバックのハキミがボールを持った場合を見てみよう。

 1つはハキミが対面のサイドバックに1対1を仕掛けて抜き去る方法だ。2つ目は、中央のアタッカー、ヘルタ戦の場合はジェイドン・サンチョやユリアン・ブラント、トルガン・アザールを斜めに走らせて、サイドバックの背後のスペースにパスを送る方法がある。

 さらに3つ目として、サポートのために寄ってきたブラントやサンチョらと局所的に数的優位を作り、短いワンツーパスで裏のスペースに抜け出すことも可能だろう。細かく見ていけば様々なパターンがあるが、どれも3バックと4バックのシステムの噛み合わせを利用した基本的な攻撃のメカニズムとして語られてきたもの。

 だが、「基本」として定着しているということは、同時に最もシンプルかつ効果的だと認められているということでもある。もちろんヘルタに対しても、サイドのミスマッチを活用した攻撃は有効だった。

 ヘルタは中断期間中に監督交代があり、ブルーノ・ラッバディア新監督の指導によって一気に順位を上げてきていた。再開後の4試合で3勝し、11得点2失点。3つの勝利は全てクリーンシートで手にしたものという好調ぶり。その一方で、チームを熟成させるだけの時間はなく、指揮官の特徴を考えても奇抜なことはしてこない。

 ドルトムントが「サイドがダメなら中央から」と攻め手を変えても、対応は基本的な連係動作が徹底されていたので、読みやすかっただろう。例えば最終ラインから前線のアタッカーまで一気に速い縦パスをつけると、ヘルタの4バックはゴール前を固めてスペースを消すためペナルティエリアの幅まで絞ってくる。

 サイドバックが中央に寄れば、同時にアウトサイドにスペースができる。ドルトムントは縦パスを受けた選手からサイドでフリーになったハキミやゲレイロを経由してチャンスを作ることも実践していた。

 そして、両ウィングバックだけでなくフンメルスの代役として不慣れな3バックの中央で起用されたエムレ・ジャンも称えなければならないだろう。的確にディフェンスラインを統率しながら、勢いよく前に出てくる相手の攻撃を粘り強く跳ね返し続け、セントラルMFが本職の選手らしくビルドアップでも起点になった。

 機を見た攻撃参加でも存在感を示し、57分には決勝点となるゴールまで奪っている。コーナーキックの流れでゴール前に残っていたエムレ・ジャンは、落ち着き払ったコントロールショットでルネ・ヤルスタインが守るゴールを射抜いた。

指揮官も「うまくいった」と誇る勝利

 このゴールシーンでもサイドバックとセンターバックのポジション取りのギャップを見事に突いた。左サイドでサンチョたボールをキープし、その間にブラントが中央から斜め左に走って右サイドバックの背後を取ると、背番号7のイングランド代表が放った浮き球のパスを頭で右に逸らした。

 その絶妙な落としの先には、エムレ・ジャンが走り込んでいた。ヘルタの右サイドバック、ペテル・ペカリークがコーナーキックを蹴った後もサイドに残っていたアザールを気にして背後にスペースを空けてしまった瞬間を逃さなかった。

 ファブレ監督は試合後のバーチャル記者会見で「我々は本当のセンターFWがいなくてもチャンスを作った。それは我々にとっても、私にとっても最も重要なことだ」とヘルタ戦の勝利を誇った。クラブ公式サイトに掲載されたコメントを見ても、起用可能な人材をやりくりしながら勝ち続けられていることの重要性を度々語っている。

「我々はディフェンスラインから常に自分たちのやり方で戦おうとしていた。GKだけでなく、エムレ・ジャンやマヌエル・アカンジ、ウカシュ・ピシュチェクからもね。忍耐強く、賢く、時にリスクを冒して。全体的にとてもうまくいったと思う」

 ハーランドだけでなくマルコ・ロイスやダン=アクセル・ザガドゥ、マフムード・ダフードといった怪我人を抱え、フンメルスのように出場停止者も出てくる。加えて過密日程も考慮してメンバーを試合ごとに入れ替えながら戦うには、チームのベースとなる戦術や基本的な判断基準が共通意識として全員に浸透している必要がある。

 昨今は緻密に練り上げられた戦術や、独特な変則戦術がもてはやされることも多い。しかし、ヘルタ戦のドルトムントはチーム戦術の基礎がいかに大切か、そして個人でも組織でも基本に忠実であることがいかに有効かという普遍的な事実を勝利によって思い出させてくれた。

(文:舩木渉)

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